2010年4月7日水曜日

医学部受験と医師国家試験



国試合格から、はや一週間
一方で、大学(医学部)の入学式も近づいて参りました

世間では医師不足で、民主党は医学部定員1.5倍を明言
既存医学部の定員増だけでなく、メディカルスクールや医学部新設というカードまで見せてきました

一方で、全国医学部長会議はこれを「百害あって一利なし」といい、現在の定員1.3倍で抑え、人口の自然減との調整を待つように提言しました

このギャップについて訳わからない人も多いと思うので、この問題について少し取り上げたいと思います



1.医学部定員増≠医師数増加

いきなり刺激的な見出しを上げましたが、勘違いされてる方が多いようなので、まずその幻想を壊させて頂きます
というのも、この前提を間違えていると、この先の話が全く通じないのです

確かに、医師国家試験は非常に高い合格率を誇っております
しかし、それは各医学部が

「国試に合格する可能性のある人間だけを入学させ、かなりの確率で合格が見込まれる人間だけを卒業させている」 

という背景があることを忘れてはいけないのです
この点は、司法試験と全くことなることにご注意下さい

先日私大出身のある方から聞いた話なのですが、国試に大学の先生が、精神安定剤や睡眠薬をもってついていくのはデフォルトだそうです(国立はやってないと思いますが…) 
さらに、とある私大医学部では6年生の留年者が数十人だったり、2回留年すると2年生からやりなおしだったりするそうです

医学部のクオリティコントロールは、それだけ厳密に行われているのです

そんな現状で何も考えずに医学部定員を増やせば、それは要するに医学部の偏差値が下がるということを意味します
もっと平たく言ってしまえば、国家試験に合格しない医学部生が増えるだけということになりかねないわけです
(まぁ、その辺は研究医で吸収させるという旧来の手法がでるかもしれませんが…)



2.地域枠定員割れ

さて、そんな中で今年の西日本の医学部入試で事件が起きました
確認されているだけで、九州と中国地方の複数の医学部が、地方医師不足対策の切り札である地域枠で「学力不足」を理由に意図的に定員割れをつくりました

いうまでもなく、一般紙に載るほどの問題になりましたが、大学としては純粋に労力と資金(国や県からの税金含む)の無駄遣いはできないということでしょう
地域枠は基本的に現役~1浪しか認めてないと思うので、教官からしたら地域枠に頼らずにもう一年勉強してこいくらいの感覚だとは思いますが…
ここで、そもそも医学部定員を増やすことになった原因がネックになってくるのです



3.医局崩壊=医学部教官不足

最近は日常化しすぎてあまり言われることはなくなりましたが、もちろん医局にも医師は足りていません

(マッチングのせいにする人も未だ多いですが、当事者としては、あれは表面化した理由であり、原因は別にあると思いますが、それはまた後日)
それはつまり、大学の教官が不足していると言うことでもあります
そんな中で学力が不足した学生が大勢増えることになれば、医局がさらに崩壊し、むしろ止めを刺しかねないという考えが働いても、私は一つも疑問に思いません(脱水だからって、2Lのミネラルウオーターを急速静注したりはしないでしょう…)
 今の医学部には、入学時点から学力の不足している学生を、「今の」国家試験に合格させるようにできるだけの教育資源が不足しているのです



4. 国家試験を変えない限り医師は増えない

ここまで色々言いましたが、要するに医学部合格というのは医師になるための切符を手にしたに過ぎないと言うことです
そこから999に乗って機械の体を手に入れ無事に卒業して、国家試験に合格するまでが問題なのです

その国家試験ですが、今年行われた104回国試では、学生の淡い期待を裏切って合格率が103回より下げられ、とうとう90%を切りました
パーセントだけで言うのはフェアではないので合格者数を上げますが


100回 7742人
101回 7535人
102回 7733人
103回 7668人
104回  7538人

となっています
私たちの学年は、入学時はまだ医師過剰とか医療費国亡論とか言われてた時代で医学部定員削減の最中でしたが、それを差し引いても、 今年の研修医は去年より100人減っているわけです
医師を増やせという声は、国家試験には全く届いていないことがよくわかります




5.日本国民が求める医師のレベルは?

では、国試を簡単にして、医学部生を増やせば全ては解決するのか?
そんなわけはありません
国試合格というのは、医師としてのスタートを切ったに過ぎないからです
それで医師になったところで、今の日本ではなにか事故が起きれば(同業から見れば過誤でなくとも)、裁判で負けて医師免許を失うという結末は十分あり得るからです

医師を急激に大幅に増やすと言うことは、金を大量に積んで海外から優秀な医師を買い集めるか、医療費は大して変えずに日本人医師で今よりも低い医療レベルになってもいいか?という問いと対でなければならないのです
日本国民が今の医療費でスーパードクターを求め続ける限り、医師が増えることはあり得ないのです

医師が足りないという前に、日本はどんな医療で満足するべきなのかを話しあうときなのではないでしょうか? 

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