「どれだけ医学部生を増やしても、今の国家試験では医師は増えない」
といいました。
そのことについて、もう少し掘り下げたいと思います。
まず、確認頂きたいのは医師国家試験の合格者数です。
前回も書きましたが、もう一度掲載します。
100回(2005年度) 7742人
101回(2006年度) 7535人
102回(2007年度) 7733人
103回(2008年度) 7668人
104回(2009年度) 7538人
全体的な傾向としては「合格者数は7600人前後にされている」とするべきかと思いますが、
新ガイドライン(103回~)では、合格者は200人減っています。
103回の時にはすでに医師不足は全国的に周知されてましたので、この合格者の削減は厚労省の意図的なものと考えておいた方がいいと思います。
つまり、これから数年間はさらに合格者が減る可能性が十分あるということです
しかし、一方でこの2年間で除外問題(要は不適切問題)が増え、合格基準も引き下げられています。
その原因は医学部生のレベルの低下にあるのでしょうか?
私には、そうは思えません。
この新ガイドラインは明らかに新研修医に要求しているものがそれまでと変わりました。
思いつくものを列挙しますと
・計算問題が強化された
・写真で臨床手技を問う問題が登場した
・CTやエコーなど画像で最終診断させる問題が増えた
・3日間で同じ疾患が違う角度から複数出題されたり、類似の症状を示す疾患群が問われた
・一患者一疾患から、複数の合併症から臨床的優先度を判断する問題になった
・3つ選べなど複数回答させる問題が登場した
・患者急変時の対応が求められらた(ICLS?)
・英語問題の登場
というところでしょうか
どれも、医療現場で必要なスキルであることは言うまでもありません
しかし、ですね。これは専門医試験ではないわけです
写真を見るだけで、それが関節鏡であることを理解し、関節鏡を使う手術を選別できたり、
MDSのガイドラインを丸暗記し、経過観察させたり、
病理像で治療方針決定させたり、
エコーと心電図で心疾患を最終診断させたり
腹部疾患を、CTから抗菌剤で間に合うか、手術が必要か判断させたりetc
また、とうとう歯科医師国家試験で「全て選べ」が10問出たそうです
105回か106回には、医師国家試験にも登場するでしょうが、これまで回答数が指定されていた問題が「全て選べ」に形式が変わるだけでも難易度は急上昇します
はたしてこれは、「研修を始めるのに必要な知識」なのでしょうか?
厚労省はコードブルーの見過ぎではないでしょうか(笑
こんな問題を苦もなく解けるの学生なら、初期研修など無用の長物でしかないのでは?
また、問題の絶対的なレベル以上に問題なのは、相対的なレベルの高さです
新ガイドラインになって不適切問題が急増したのは、正にそこが理由です
医学教育と国家試験の要求レベルが、あまりにも解離してないでしょうか?
コアカリキュラムやBSTで、こういった問題を確実に解けるようになるだけの教育をしている医学部はどれだけあるのでしょうか?
学部教育のレベルなど知らんと厚労省が言うなら、それは医学部の存在自体を否定することになります
確かに、医学は専門化、高度化が急速に進んでいます
しかし、人間が6年間で覚えられることには人間としての限界があります
また、それだけ勉強させるのであれば、トレードオフで医師の人間性は下がっていくと考えるべきでしょう
研修医になるのに、そこまでの知識と技術と人間性が必要というなら、医学部生は今よりも厳選されなければならないはずです
しかし、地域枠が入った数年後に国家試験を迎える医学部生のレベルは、底辺が広がっていますので、全体としては学力は低下傾向と考えられます
これでは、医師国家試験合格者が1万人をこえるなんてことは、ありえません
医師国家試験の目指している方向と、医学部生増は、ベクトルが全く逆なのです
だから、私は日本人が医療に求めるものを自重しない限り、今まで以上の定員増やメディカルスクール、医学部新設には反対しているのです
優秀な若者に不幸な人生送らせるくらいなら、一流大学の理工系に行ってもらった方が、本人と国家にとって最大限の利益であるはずです
何度でも言います
医師を増やすのであれば、医師に求めるものを減らさなければならないのです
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