2010年5月9日日曜日

医師の労働力

私が医療について話をするとき、結局何が言いたいのかがわかりにくいと言われることがあります
ですが、私が医療改革について話をするときに関しては、そのテーマはただ一つです
「一般的な人間の精神でできる医療体制をつくらなくてはならない」
といっているだけです

その理由についてはいくつかあるのですが、今回は単純な算数で、極めて現実的な危機を説明したいと思います

これは、本当に医療体制の根管に関わる問題です
しかし、そのことに気づいている人は、この国ではまだ極めて限られているようです
何故なら、研究者や官僚といった人たちは、医師のことは調べていても医学生のことは調べていないからです
そのことによって、対策が6年も遅れてしまうということに気づいている人は、何故かあまりいないようです

私が医学部に入学したその時は、まだ医師過剰論が国民的な常識で、医学部定員は減らされていました。
その時と現在では、1学年の人口が3割ほど違うようです。
これだけ聞くと、医師不足はなんの問題もなく時間が解消してくれると思う方も多いでしょう。
しかし、この間に女子の割合も激増しているのです


女性医師の労働力は、体力や育児休業を考えて欧米では0.8前後でカウントされるようです
一方、日本はずっと男性と同じ1とカウントしていました
これまでは女性医師は少なかったので、誤差は大したものではなかったと思いますが、これからはそうはいきません
舛添前大臣は、日本の現状は女性医師を0.5とカウントするべきかも知れないと言われていたので、それに倣ってみたいと思います


私が入学したときの人数を100としましょう。
私の学年の男女比は8:2だったので、労働力は
80×1+20×0.5=90です

一方、今の学生の人数は130となります
問題は男女比ですが、女子は4~5割というところでしょうか?
仮に半々としますと、労働力は
65×1+65×0.5=97.5です


おや?医学部生は3割も増えたのに、医師の労働力は1割も増えてませんね?
実際には厚労省が国試合格者数を3割も増やしてくれるとは思えないので、
「医学部定員は増やした。しかし、医師の労働力は改善されなかった」
という問題が発生しうることは容易に想像できます
しかも、総数としての労働力は変わらず人数だけ増えているので、実際に人事を預かる現場は今以上の混乱に巻き込まれるでしょう
 

この予測された未来を学会として真っ先に予言したのは、産婦人科です




病院出産、10年後に20%減 産婦人科医会が推計

 病院勤務の産科医の就労環境を改善しなければ、10年後に病院(20床以上)で扱える出産数は、2009年の約54万件から約20%減る可能性があるとの推計を、日本産婦人科医会常務理事の中井章人・日本医科大教授がまとめた。
 女性医師が子育てなどのために、労働環境が過酷な出産診療から離れると予測されるのが理由で、中井教授は「(環境の)迅速な改善が必要」としている。
<略>
2010/04/22 18:20  共同通信


言うまでもありませんが、医学部に女子がこれだけ増えている以上、これは産婦人科だけに起きる問題ではありません
全ての医療機関、特に大学病院など高度医療部門が危機にさらされていると考えて手を打つべきです


勘違いされると困るので言っておきますが、別にこれは男尊女卑とか、女性医師厚遇とかそんな問題ではありません
私が知っているだけでも、非医療者と結婚した3人の男性医師が、
「大学病院辞めますか?それとも家族止めますか?」
という決断を迫られて大学病院辞めて、今は充実したQOMLを満喫されているようです
過労死ラインを楽勝で超えるような医師の非常識な過労は、男性なら耐えられるとか、もはやそういう次元ではないのです


この状況を打開するには、「全ての医師が家庭を持ち、子育てできる環境をつくる」以外にありません


仮に男性医師の労働力を0.9、女性医師を0.7とできれば、今の医学生が医師となったときの労働力は
65×0.9+65×0.7=104
となり、今よりも労働力を2割ほど増やすことができます

そうした環境をつくる為には、医師よりも労働単価が安く、養成が比較的容易なコメディカルを早急に創設・育成する必要があるでしょう



しかし、そこには日本でチーム医療が未だに広まらないという問題が壁となって立ちはだかります

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