さて、今回は国の医療制度改革です
先日の民主党のプロジェクトチームが謎の決定をしました
https://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=32798
ライフイノベーションの18項目は、「地域主権の医療への転換」のほか、▽病床規制の見直し▽医療法人の再生支援・合併における諸規制の見直し▽介護総量規制の緩和▽一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和―など。
さて、この「地域主権の医療への転換」ってなんのことでしょうね?
医療圏は現行法で地方自治体レベルで調整されている(はず)です
では、この民主党の言う「地域主権」とはなんの権利を指しているのでしょうか?
…どうにも、嫌な予感がしてきます
その嫌な予感をさらに増幅させてくれるのが、別の記事です
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/32822.html
民主党の「社会保障と税の抜本改革調査会」(会長=仙谷由人代表代行)は3月3日、これまでのヒアリングを踏まえた意見交換を行った。出席した議員からは、今後の社会保障の方向性や在るべき姿を決めた上で、各論や財源を議論すべきといった意見が多く出た。(略) 仙谷会長は「現状の医療提供体制の中で、患者の視点から何が足りないのか。そこはまだ議論の余地がある」と述べた。
まだいたのか?と突っ込んだ人は多いと思いますが、(笑)今回はそこは置いておきましょう
なんといいますか、非常に現場のやる気を削いでくれる発言ですねぇ
医療崩壊の原因は、「患者」の無制限の要求による医師と医療機関のバーンアウトであるという事実をまったく理解してないのがよくわかる一言です
そうなるとやはり先の「地域主権」とやらは、医師をいかに酷使するかという権利にしか見えてこなくなります
彼らは、どんなに経営努力をしようが、結局のところ医療というものは医師というリソースに上限が決まっているパイを配分しているに過ぎないと言う基本的なことを理解できていません
そのあたりはこの記事で詳しく述べられています
医療に「効率」を求めるとどうなるのか規制緩和と生産性向上で医療が失うもの2011.03.01(Tue) 多田 智裕
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5536
本当によくまとまっている記事だと思います
付け加えることがあるなら、医師のリソースを医療に割きすぎると、経産省がもくろんでいる医療技術のイノベーションに割く分はなくなるってことでしょうか
そもそも、一般の業種において「効率化」というのは「不採算部門の切り捨て」と「選択と集中」が基本ですが、日本の医療機関ではこれは不可能です。不採算部門の切り捨ては政治家が許しません。そういう意味では、地域主権こそが勤務医負担増大を招いていると言えます。
選択と集中も同様な上に、規模の経済が発揮できる業種であれば薄利多売も可能ですが、一例一例がオーダーメードの医療ではまず不可能です。
では高付加価値商品に切り替えるのが王道ですが、これは治療費は公定価格で、しかも2年ごとに勝手に変えられるので不可能です。過去、どれだけの医療機関が厚労省の「ハシゴ外し」に泣いたことか…
今の医療制度で病院に経営努力を迫るのは、羽をむしった鳥に飛べと言うようなものです
一方で厚労省はもう幾分マシな議論がされていたようです
ただし、反論する機会があるというだけの「マシ」さですが…
勤務医の負担軽減と患者の受診抑制
http://lohasmedical.jp/news/2011/03/03091423.php
「たくさん医師がいないとできない」「アクセスを制限しなきゃいけない」─。勤務医の負担を軽減しようとすると、患者の受診抑制という壁にぶち当たる。(新井裕充)
医師というのはどう転んだところで業態としては職人であり、純粋に数と数の戦いにしかなり得ません。何を当たり前のことを?という感じですが…官僚と経済界の逃げっぷりがこの問題の袋小路を示しています
まず官僚の言う主治医制の廃絶と交替勤務制導入ですが、これ自体は私は基本的には賛成です
です。ただし、それにはフリーアクセスを廃止し、医師数をそれなりに増やした上で、という前提条件がつきます
この記事を読む限りだと、交代勤務を導入した病院には何らかの特典をつけることになりそうな気配もありますが、
まさか、「7:1看護導入時の悪夢」を忘れたワケじゃないですよね???
そんなことやったら、地域病院からの引き上げが一気に加速して医療崩壊が光速で進行しますよ?
あと、官僚のだした勤務医負担軽減の「成功例」も、問題だらけです
一番確実な方法としてはクラーク等の「支援部隊の強化」があげられますが、クラーク導入してもクラークの行為に対して医療費はくれないので、クラークの人件費は医師が稼がなければなりません。規模の経済を発揮できない中小病院ではクラーク導入は本末転倒にすらなりかねないと聞いてます
また、交代勤務の成功例としてあげられている藤沢ですが、これは嘉山先生が突っ込んでいる通りとしかいいようがありません。非常に人的に潤沢な二次以下の病院でしか不可能でしょう
さらに言うと、産科と小児科で交替勤務が進んでいるのは正直、女医対策です。必要なことですが、今の医師数では他の医師の負担が増大していないかは気をつける必要があります。
実際、元のpdfをみてて疑問に思ったのですが、この藤沢の交代勤務は「夜間外来に専念」となってます
もしかして、病棟当直は他にいるんでしょうか?だとすると、11人で病棟を回していることになるので、実は交代勤務導入しても当直回数自体は大して減ってない可能性もあります
他で真似できるかどうか以前に、「成功例」かどうかすらあやしいと思います
さて、この議論の最後に非常にやる気をなくすやりとりがまたあるんですが
[北村光一委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長代理)] あの......。よく分かりました。我々も若いころは随分、鍛えられたり、長時間勤務とか、上司からアレされましたけれども......。そういう意味ではやはり医療業界も同じでしょうから......。 (語気を強めて)ぜひですね、ご指導いただいて、素晴らしい先生に育つようにですね、よろしくお願いしたいと思います。
[嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)] (ムッとした表情で)国民も一緒に......、国民も一緒にやってください。(以下略)
「俺の若い頃は~」を国の会議でやるって…どういう神経してるんでしょうね?
経団連って、戦後の復興期の成功体験で21世紀の混乱を乗り切ろうとしてるとかないですよね?
この人が若かった頃のような、パターナリズム全開で非専門医が治療するのが当たり前で誰も文句をいわない、医療訴訟もない、病院の経営努力なんていう概念すらなかった医療をやっていいなら今の労働時間でも精神的にはだいぶ楽でしょうが、経団連的にはそういう医療でOK?そんなわけないですよね
っていうかこの人のいう「素晴らしい先生」=「奴隷医」?
労基法守る気0ですな!
大丈夫か三菱アルミニウム?
経済関係者の医療関係の議論を見ていると、医師は日本国民にあらずと言わんばかりです
(そもそも経済界が自分のところの若手を同胞扱いしていない節がありますが)フリーアクセスと応召義務がある限り、患者の無限の要求がある限り、医師不足は永遠に解決しないでしょう
日本、医療の満足度15% 22カ国で最低レベル
【ワシントン共同】日米中など先進、新興22カ国を対象にした医療制度に関する満足度調査で、手ごろで良質な医療を受けられると答えた日本人は15%にとどまり、22カ国中最低レベルであることが15日分かった。ロイター通信が報じた。
ロイターは、日本は国民皆保険制度があり、長寿社会を誇っているとしつつも「高齢者の医療保険の財源確保で苦労している」と指摘した。
自国の医療制度に満足している人の割合が高いのはスウェーデン(75%)とカナダ(約70%)で、英国では55%が「満足」と回答。韓国、ロシアなどの満足の割合は30%以下だった。
国民皆保険制度が未導入で、オバマ大統領による医療保険制度改革の議論で国論が二分した米国は、回答者の51%が手ごろな医療を受けられると回答した。
2010/04/15 17:44 【共同通信】
こんな医療者以外からは不満大会な日本医療ですが、お隣の国から見るとだいぶ違う評価のようです
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=49611
日本の医者の患者に対する責任感と温かさに感動した。そして、言われた通りの時期に再度訪日した。最初の検査が終わった後、医者は病状について、心臓の模型を使って位置を示しながら詳しく教えてくれた。しかも、「説明が細かすぎてすみません」と謝りながら…。
この病院は高級レストランで会計をする時のように請求書を持った係員が私の前に跪いて明細を説明してくれた。驚いたことに中国よりも安かった。
誰でも無料で予約できるそうだ。資本主義社会の中にも社会主義の要素が感じられた体験だった。
東京の有名病院ですら、中国人に「中国より安い」「社会主義」と言われる日本医療ってどんだけ?!
これで「安心安全の医療」とか「経営努力」とか、どこに生まれる余地があるんでしょうね?
現場に出てから、強く感じることが一つあります
目の前の患者というミクロに対する最良は、基本的には医療供給というマクロとは対立概念であるということです
このバランスを無視して、医療に持続可能性はありません
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