しかし、具体的な状況はまだ明らかになっていない点が多く、現時点で判明している医療機関の対応をまとめておきたいと思います
まず何にもまして大規模災害で問題となるのは大量の負傷者ですが、今回はそれはあまり問題となりませんでした
というのも、阪神大震災などのような倒壊や火災ではなく、津波が被害の原因であり、DMATが現場に突入するも、黒タグと緑タグしか出番がなかったとのことです。文字通りdead or aliveの悲惨すぎる状況であったことが推察されます
そうなると、次の問題は入院患者および慢性疾患の患者です
入院患者の問題はすぐに表面化しました
根本的にインフラが破壊されたため、水と電気と食料の確保、および暖房や自家発電の燃料の枯渇が問題となりました
交通インフラが破壊されたため、最低限の生活物資はもちろん、医薬品も底をつき亡くなられた方も出ています
医師らに食事行き渡らず 救援活動に支障の恐れも
11/03/14 共同通信社
東日本大震災で大きな被害を出した岩手県や、宮城県沿岸部の災害拠点病院で働く医師や看護師など病院職員用の食料が不足していることが14日、分かった。ようやくつながった病院から県の担当部局への電話で「被災者優先なのは百も承知だが、このままでは救援活動に支障が出る」との悲痛な声が相次いで伝えられたという。
岩手県の県立病院で働く職員は計約4800人。震災を逃れた職員の多くが、勤務地で医療活動に当たっている。県の災害対策本部には「市町村役場には食料が届いているのに、われわれのところに回ってこない」といった声が寄せられた。 同対策本部は「最も被害がひどい沿岸部の病院とは今もほとんど連絡が取れない。状況はより深刻なはずだ」として、こうした病院向けに救援物資の新たな輸送方法を検討中だ。同様の訴えは宮城県にも寄せられているという。
原子力発電所を抱える福島県では、爆発事故で避難してくる被災者への対応で精いっぱいで、医療従事者の状況まで配慮できないという。担当者は「自己責任で調達してもらうようにしているが、要望があればできるだけ対応していきたい」と話した。
また、慢性疾患で特に問題となったのは透析患者です
きれいな水、電気、医薬品を必要とする人工臓器である透析のストップは、そのまま患者の命に直結します
このため、Kの調整など、文字通り生命を維持する最低限の透析を繰り返すことでなんとか時間を稼ぎ、交通インフラが復旧後に透析医会が中心となり、各自治体の協力の下、各県の透析病院で分散して受け入れるという大移住で現在対応しています
さて、以上の点をまとめると、被災地の入院患者および慢性疾患患者は、被災地で治療を継続するのではなく、可及的速やかに安全地域の病院へ分散移住するのが最善であると言うことがわかります
これについては医療機関は被災直後から自衛隊もしくは米軍による搬送の必要を叫んでいました
これに対する厚労省の3/14の回答は以下の通りでした
厚労省医政局医事課企画法令係の担当者は、あくまでケースバイケースとしながらも、
「停電で医療機器が使えない、水道がストップし必要な治療ができないといった理由で患者を診られない場合は、医師法第19条の正当な事由に当たると考えている」
として、応召義務違反には当たらないとの見解を示した。
大塚耕平厚生労働副大臣は3月14日の記者会見の席上、 同日から始まっている計画停電への厚生労働省の対応についてコメント。
自家発電の保有状況を厚労省が把握しているべきかどうかについては、
「自家発電については、持っていても使えるかどうかが分からない。 自家発電が機能しなかった場合にどこの医療機関に搬送するかを、 個々の医療機関が計画を立てていなければいけない」
との考えを示した。
また、有事の際にどの医療機関に移送するかの互いの取り決めについても、
「今回の話は国家全体の話であり、 『自家発電が立ち上がらないときは国が何とかしてください』という姿勢では困る。 自らエマージェンシープランを組んでもらわないといけない」
として、個々の医療機関が、高い意識の下で行うべきだと訴えた。
…というわけで、究極の責任放棄記者会見をされました
彼らは「医療機関の責任」を叫んでいましたが、そういうレベルの状況ではないと言うことを認識していなかったのでしょうか?
いや、そもそも民間人である医療者と医療機関にそこまでの無限責任を求めるのはどうなのかという根本的な命題があります
彼らは、医療者と医療機関を守らなければ患者=地域住民を守れないという視点が欠けていました
このため、被災地域の透析病院が自力でバスをチャーターし各県に送り出すと言うことが行われました。恐らくこの中で最大規模なのがこの記事です
福島の800人、人工透析受けられず県外に出発(読売新聞 - 03月17日 11:06)
福島県いわき市と周辺地域の人工透析を受けられなくなった患者約800人が17日午前10時、バス約30台に分乗し、東京に向かって同市を出発した。
患者らは首都圏と新潟県の医療機関に分散し、治療を受ける。
いわき市周辺の医療機関は、職員らが市外などに退避。断水もしており、透析が出来ない施設が続出。そのため、いわき泌尿器科病院が周辺数施設の患者をまとめ、送り出した。
実際にはどれだけの患者が被災地から脱出し、またこの後も必要としているのかは不明ですが、震災から一週間経ち、マスメディアも繰り返す余震や原発だけでなく、避難所や医療機関に目が行き始め、一般人にもこの惨状が徐々に伝わり出しました
このためか、ようやく厚労省も重い腰を上げはじめました
福島の入院患者を県外搬送- 厚労省
厚生労働省は3月18日、福島の入院患者の県外搬送を進めていることを明らかにした。同省によると、同日現在、関東甲信越と山形の11都県で受け入れ可能な患者数は1800人以上だという。
同省は、協力を要請した11都県がどのような患者を受け入れられるかを調査・整理した上で、内閣危機管理センターと福島県に情報を提供している。
これとは別に、県内の病院も自主的に搬送を行っている。
同省によると、入院患者の搬送については、現在までに福島第1原子力発電所の20キロ圏内に入院していた1132人の搬送を終えており、現在、20-30キロ圏内で搬送対象となっている入院患者1164人の搬送を進めている。
同日午後5時までに、同省のマッチングによって搬送されたのは、20キロ圏内の入院患者約200人、20-30キロ圏内の入院患者約300人。
( 2011年03月18日 23:16 キャリアブレイン )
というわけで、14日の副大臣の会見などなかったことのようにされています
彼らの責任追及はある程度事態が収束化してから行われることでしょう
今は患者を安全な場所まで脱出させることが最優先事項です
しかし、原発の避難エリアだけでまだ1164人もいます。避難が必要な全ての患者の数を厚労省は把握しているのでしょうか?
東日本大震災:「薬は残り3日分」 医師「何とか物資を」--福島・いわきの病院 http://mainichi.jp/select/science/news/20110317dde041040037000c.html
「入院患者の給食の在庫はあと5日分。薬は残り3日分。ガソリン不足や家族の被災で出勤できない職員や原発事故を恐れ避難した職員も多い」。福島県いわき市にある市立総合磐城共立病院の樋渡信夫院長(62)はそう話し、援助を呼びかけた。
病院は福島第1原発から南へ約45キロ。地域の中核病院で、震災当日は約650人が入院していた。約半数を退院・転院させたが、今も300人余が残る。
だが、薬が足りない。16日に病院職員が薬問屋を回ったが、それでも在庫はようやく3日分。ガソリン不足と放射能への警戒感からいわき市には薬が運ばれてきにくいという。
原発事故も怖い。医師108人のうち若い研修医8人は院長の指示で避難させた。他にも避難した医師は多く、残る医師は約60人。医師以外のスタッフも半数近くが欠勤中だ。看護師80人が「ガソリン不足のため、帰ったら出勤できない」と病院に泊まって支える。
そうした中、新生児集中治療室(NICU)には赤ちゃん4人が残る。体重1000グラム以下と小さく、転院が危険な子たちだ。ミルクは残り数日分しかない。
子どもたちの世話をする本田義信医師(49)は地震以来、1人で病院に泊まり続ける。「12人いた赤ちゃんのうち、事故が深刻化した15日以降に8人を転院させた。残る4人の避難を判断するため、この病院で最悪どれだけの被ばくがあり得るか知りたい」という。
心療内科の岩橋成寿(しげとし)医師(52)は訴える。「病院のそばには原発の近くから300人が避難してきた。兵糧が尽きるまでは頑張る。何とか物資を供給してほしい」
【高木昭午】
兵站がなければ戦力は維持し得ません
すでに生活物資が枯渇し撤退した医療機関も出ています
インフラが破壊されている以上、まだ物資が残っている=移送する余裕があるうちに戦略的撤退こそが最善です
既に当県にも患者は来ており、ALL JAPANでの受け入れが必要になることでしょう
また、メディア報道には医療者も人間であり、守るべき家族がいるということ。しかもほとんどの医師は民間人に過ぎないという視点が欠けています。
言い方は悪いですが、国からの支援もなく、自分の家族を見捨てて、患者と共に心中する義理はないということです
この震災での国および自治体の一連の対応は、全国の医療者に深い不信感を植え付けることになりました
なかでも象徴的なのが、最悪の誤報事件。双葉病院事件です
すでに元記事はどれもこれも削除されているのでネットの魚拓から転載
高齢者残し、医師ら避難か=原発圏内の病院−福島
事故が相次ぐ福島第1原発(福島県大熊町)の10キロ圏内にあり、避難指示が出た同町の双葉病院で、患者を避難させるため自衛隊が到着した際、病院内は高齢の入院患者128人だけで、 医師や病院職員らがいなかったことが17日、分かった。
県災害対策本部が明らかにした。
同病院の患者のうち14人は、避難途中や避難先の県立いわき光洋高校(いわき市)で死亡した。
対策本部によると、官邸危機管理センターは14日未明、原発の10キロ圏内に取り残された住民について「明け方までに避難させること。避難しない場合は責任を取れない」と県に指示したという。 県は自衛隊に救助を要請。自衛隊は14〜16日にかけ、バス3台を使って双葉病院から128人を搬出した。
しかし、隊員が病院に到着した時点では、300人を超える患者のうち、寝たきりの高齢者らだけが取り残され、病院関係者はいなかったという。 自衛隊は患者の被ばく状況を調査した上で、避難所に移動させた。
県の担当者は「病院職員がいないことはあり得ない。放棄ととられても仕方がない」と批判。
同病院を運営する医療法人「博文会」関係者は取材に対し、「理事長と連絡が取れず、事実関係は分からない」としている。(2011/03/17-20:52)
で、これが1日も経たないうちに一転しました
「避難時に院長いた」=福島県が訂正発表
福島県は17日夜、福島第1原発の事故で避難指示が出た双葉病院(福島県大熊町)で高齢者らが避難する際、医師や病院関係者らがいなかったと同日発表したことについて、自衛隊の救出時には院長がいたと訂正した。
県によると、同病院は原発から10キロ圏内にあり、自衛隊が14日から15日にかけ3回に分けて高齢者を救出。院長は1回目の救出時に立ち会っていたという。
院長は県に対し、救援を求めるため病院の外に出たが、原発で事故が相次ぎ、戻るのを断念したと説明。他の病院スタッフも途中からいなくなったという。(2011/03/18-01:18)
患者死亡 院長“何もできず”
3月19日 0時14分
福島第一原子力発電所の事故で、避難指示の対象になった福島県大熊町の病院の入院患者21人が避難所で衰弱するなどして死亡した問題で、この病院の院長が、NHKの取材に応じ、「国や県に何度も頼んだのに救助が遅れた。自分たちでは何もできなかった」などと話しました。
この問題は、原発事故で避難指示の対象になった福島県大熊町の双葉病院に入院していた高齢の患者など21人が、避難所で衰弱するなどして死亡したものです。これについて、双葉病院の院長が18日、NHKの取材に応じ、当時の状況を証言しました。それによりますと、地震のあと、この病院には寝たきりの人など130人ほどの患者が残っていたということです。しかし、翌日に原発の事故で避難指示が出たあとは、およそ60人いた病院関係者はほとんどが避難し、2日後には、院長など4人しかいない状態だったということです。こうしたなかで、自衛隊員が到着して、患者の避難所への搬送が始まり、院長たちは、今月15日に病院を離れたあと、警察官の指示で、病院には戻らなかったということです。これについて、院長は「当時は地震と原発事故でパニック状態で、自分たちだけでは何もできず、国や県に助けを求めたのに救助が遅れた。いわき市の避難所には、系列の病院の医師やスタッフを派遣したが、患者が亡くなったのは残念だ」と話しています。今回の問題を受けて、福島県は、改善する点が無かったか詳しく調べています。気がつきましたかね?
県もメディアも、「訂正」はしても「謝罪」はしてません
とりあえず、お前らの態度を改める必要があるのは事実だと思うが???
明らかにメディアフィルターが欠けられているので、こちらの方が真実に近いかと思われます
福島・双葉病院「患者置き去り」報道の悪意。医師・看護師は患者を見捨てたりしていなかった
http://news.livedoor.com/article/detail/5424517/
詳細はいつかご本人の口から語られることでしょうが、
そもそも、一病院長という「個人」にこの状況でこれ以上の何ができるというのでしょうか?何をしろというのでしょうか?
大野病院事件と並んで、医療崩壊の聖地福島を語り継ぐ伝説となることでしょう
さて、国や県、メディアの責任追及はまた情報を待つこととして、 今回の震災では他にも教訓があります
完全に想定外の事態として、被災地への医薬品の供給のみならず、被災地にあった工場からの医薬品の全国への供給が滞るという状況が発生しました。
幸い、メーカーの必死の努力により、長期処方さえされなければ在庫が払底する前にはぎりぎり対応できるとのことですが、新薬や生物製剤など製造企業の少ない医薬品の備蓄や緊急輸入を自動的に行えるような法整備が必要ということは忘れてはならないと思います
また、被災地域外でも問題が出ています
まず、まったく被災していない当院ですら、燃料や電池、輸血製剤の入手が困難になったため、暖房や患者のモニター、輸血は最低限になっています
また、計画停電による影響もあります
停電リスクにさらされる都内大病院、大規模な心臓手術が困難。長期戦へ準備、東日本大震災 - 11/03/18 | 23:22
東日本大震災で生じた停電リスクの影響で、人工心肺装置などを使った長時間にわたる心臓外科手術の実施が困難になっている。野村実・東京女子医科大学医学部麻酔科学講座教授(日本心臓血管麻酔学会常任理事=写真)によれば、「人工心肺を用いた手術は最低5時間、長い場合は12時間以上かかるため、当大学でもすでに予定の決まっている大きな心臓手術(定期手術)はしばらく見送らざるを得ない状況にある」という。
野村教授が籍を置く東京女子医大付属病院では、震災から2日後の3月14日は安全確保のため定時手術を中止して機器や電源設備の点検を実施。翌15日に心臓手術や長時間の重症手術以外は部分的に再開した。「3月22日の週については、手術時間や輸血のリスクを考えながら心臓手術を含めた手術症例を通常の80%程度組んだ」(野村教授)という。
東京女子医大が位置する東京・新宿区は「計画停電」の対象地域外だ。1423床の大病院で、自家発電設備も完備している。ただ、MRI(磁気共鳴画像装置)など大きな電力を消費する装置も多く、「自家発電に切り替えた場合にすべての医療機器が正常に作動する保障がない」(野村教授)。また、燃料供給が不安定な現状では、自家発電に用いる燃料もできるだけ温存しておきたいという事情もある。
長時間かかる大がかりな手術には、大動脈弓部手術や人工心臓手術、心臓移植、脳死の膵腎移植などがある。「最も難しいのは緊急の大動脈瘤破裂の緊急手術で、大量の輸血が必要」(野村教授)。だが、「血小板など血液製剤の追加調達が難しい」(野村教授)という事情がある。3月18日現時点では「手術に必要な薬剤は今のところ十分に確保しているものの、中長期にわたって供給体制が維持できるか見えていない」(野村教授)。
東京女子医大病院では、通常では毎週1回の割合で「手術調整会議」を開催しているが、「当面は週2~3回の割合で物品調達状況を含めて手術調整会議を開いていかないといけない」(野村教授)。すでに一部の診療科では、「長時間手術について、関西方面の病院にも協力を求めている」(野村教授)。
今後は学会会員などからもきちんとした情報を得つつ、「中長期的な戦略を構築していくことが何よりも必要だ」と野村教授は強調する。
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)
この震災から学ぶべき事はあまりに多くあり、いつか必ず来る「次の大震災」までに備えなければならないこともあまりに多くあります
本ブログは、今後もこの問題を最優先でまとめていきます
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