詳細は来週公開されるようですが、CBニュースの速報から今後の医療政策を読み解きたいと思います。
マニフェストには、2020年度までの平均経済成長率を名目で3%超、実質で2%を上回るようにするとの目標を設定。これを実現するための施策を盛り込んだ。医療・介護などの社会保障分野では、規制が成長を阻んでいるとして、規制緩和に取り組む姿勢を示した。
―マニフェストの成長戦略に盛り込まれた「命のための技術革新」の項目について
例えば、医療や介護分野は、日本は非常に技術力があるといわれているが、いろいろな制約要因があり、十分にマーケットを開くことができていないと理解している。そういった部分だ。
―社会保障費に関する書きぶり
「医療、介護、障害者福祉」と項目が別になって、それぞれ非常に微妙な問題をはらんでいるので、単純に書き切れない部分もある。ただ、われわれは「強い社会保障」を目指しているので、特に診療報酬などはかなり明確な方向性をもって書いているとお考えいただいていいと思う。
診療報酬については来週の詳細版で「明確な方向性」とやらを見てから批評させて頂きたいと思いますが、ここまでで既にいくつかの問題を推測することができます。
まず、この報道では衆院選の時に医療分野で前面に出された「医師数・医療費をOECD並に増やす」という基本方針はまるで言及されておらず、医療に対する民主党の基本路線が変更されたと推測することができます。
先の衆院選では自民党に見切りをつけて民主党に票を入れた医療者が相当数いましたが、彼らは政策に票を入れたのであって、民主党に白紙委任状を与えたのではありません。
政策の基本路線が変更されるのであれば、政治理念的には、そのことを国民に問う=解散総選挙が必要なはずで、民主党上層部は既に、先の衆院選の意味を忘れている危険性があります。
さて、少々話が脱線してしまいましたが、この報道から見ることができる民主党のこれからの医療政策の基本路線は「規制緩和」であるようです。
自民党をぶっ壊すと言った小泉元首相と同じような漢字が並んでいて目新しさはないですが、それはつまり、医療にとってはあの惨事が再び訪れる危険性があると言うことです。
「医療・介護などの社会保障分野では、規制が成長を阻んでいる」とのことですが、病院の7割が赤字であったり、歯科医師の3割がワーキングプアだったり、老人ホームが設備投資する金がなくて耐震設計になってなかったり火災報知器がついてなかったりするのは、果たして規制のせいでしょうか?
医療・介護が成長できないのは、公定価格である診療報酬・介護報酬が低すぎることが原因です。
そうした問題を「規制改革」で解決しようとすると言うことは、菅政権では医療費のベースアップは見込めないと考えた方が良さそうです。
では、いったいどこを「規制改革」しようとしているかですが、最近の動向から見るに、おそらくは「混合診療解禁」と「メディカルツーリズムで外貨を稼ぐ」といったところでしょう。
これは、それぞれそれだけで本一冊書けそうな重さの話なので敢えて簡潔に言いますと、現状での「混合診療解禁」はむしろ患者の負担を増大させるだけの結果になる危険性が高いですし、メディカルツーリズムは日本の物価の高さと言語の壁、病院のアメニティの低さを考えれば絵に描いた餅です。しかし、そうした現実を無視して病院は今以上の経営努力を求められ、診療報酬を減らされて、労働環境がさらに悪化することになるでしょう。
そもそも、成長戦略に掲げられた「命のための技術革新」というのが意味不明です。医学や医療技術は命を守りません。命に関わるのはそれら知識や技術の実行者たる人です。だからこそ、医療制度改革や人員増を衆院選では掲げていたはずです。
菅首相は全自動医療ロボットでも開発する気なのでしょうか?
また、「いろいろな制約要因があり、十分にマーケットを開くことができていないと理解している。」という理解そのものが大きく間違っています。
日本において、医療や介護はマーケットであるのでしょうか?
水道水に対して、マーケットという言葉は使われません。マーケットというのは、「贅沢品」に対して用いられる概念です。
医療・介護をマーケットと見なすと言うことは、医療・介護は購入するものであるということであり、安定供給されるものではないと言うことです。
菅政権には、医療や介護は福祉であるという認識はないと思われます。
第一、仮にマーケット化できたとしても、「これからの世代」が生活に余裕がないのに、それで医療や介護が廃れこそすれ、潤うはずもないと言うことすら想像できないのでしょうか?
閣僚メンバーやこれまでの限られた情報から見る限り、科学技術や社会保障にあまりに暗いメンバーが性急に行った悪夢の事業仕分けそのままのノリで行く危険があります。
あの事業仕分けでは財務省の暗躍が後に暴露されましたが、菅政権が財務省の走狗となっていないことを祈るばかりです。
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