混合診療は非常に難しい問題であり、議論しても結論の出ないのは毎度のことである。
しかし、何故そんなことになるか、何故議論がかみ合わないのかという問題をちゃんと分析した文章を私は見たことがない。
今回はそこに切り込んで見たいと思う。
まず混合診療の話が何故混乱するかであるが、私はその理由は、「混合診療」という言葉をあまりに無用心に使っているからではないかと思う。色々な議論をみていて思うのだが、「どんな」混合診療を想定しているのか確認せず議論しているのだ。
実際、多少作為的な日経メディカルのアンケートでは賛成が59%になっている一方、同時期に中立的にとられたm3では賛成が44%と多いものの反対28%、どちらとも言えない28%となっており、医師間ですら問題の共有ができていないことが予想できる。
(余談だが、日経メディカルの一般人では7割が混合診療賛成になってるが、日経メディカル会員というところからして自由診療になってもそう困らない収入を持つ層である。これをもって患者の総意と言うことはできない)
まず混合診療の定義だが、
「保険診療と自由診療を同一医療機関で併用可能にするもの」
と理解しておけば間違いはないだろう。
ここを間違って理解されてると先の話ができなくなるので、確実に理解していただきたい。
つまり、病院Aで保険診療中に病院Bで自由診療をすることは混合診療には当たらず、現在でも可能なのである。
極端な話、メディカルクラスターにして保険診療用の病院と自由診療用の病院を併設して事実上の混合診療を行う事は現在でも可能なはずだ。実際、似たような事をやってる先生もいるらしい。
また、先進医療という制度もある。保険診療化のテストとして限定的に混合診療を認める制度なのだが、現実には自由診療分は校費で、つまり赤字の大学病院が自腹切ってやってる事がほとんどだろう。このため、「日本は既に混合診療を行っている」という主張は、間違いではないが正しくもなく、非常にわかりにくい制度になってしまっている。
この様に「混合診療」というのは非常に限定的な定義であり、ある意味既におこなわれているのである。
その事を知って頂いた上で、本題に入りたい。
では、混合診療の「何を」解禁すると言っているかだが、実はそこが問題なのだ。
恐らく、多くの医師が無意識に考えている混合診療は、先進医療の延長にあるものだ。つまり、現在の保険診療は堅持したままで、保険適応される前の先端医療を日本でできるようにしようというものである。
確かにこれが理想的に運用されるなら医療の安全性と先進性を確保できる。
だが、逆にこれによって、医療費削減の名の下に保険診療が進歩しなくなってしまう可能性や、製薬企業が日本での保険申請を行わなくなる可能性があるのも紛れもない事実であり、それが混合診療反対派の論拠となっている。
医師にとっての混合診療解禁の賛否は、1人でも多くに最高の医療を提供するか、全ての国民に一定の医療を保証するかという問題なのだ。
いってみれば、サービスとしてみるか、福祉としてみるかの違いである。
社会保障としての最終目標が違うのだから、この混合診療の賛否を同列に議論しても結論が出ないのは当然なのである。
しかし、ここで敢えて私見を述べさせていただくなら、これは混合診療反対派の論に分がある。
現在の保険診療下でさえ支払いができず治療中断があるのに、自由診療を拡大するというのは現実的な話だろうか?
また、自由診療には高額療養費の補助もない事を忘れてはならない。
混合診療解禁は、どう考えても患者負担は増えるだろう。
そうなったとき、医師は、金がないなら保険診療だけでやりましょうと言えるのだろうか?
現在、大学が校費で治療を行い、校費が不足したために寄付金を求めればマスコミにバッシングされているのが現実である。
であるならば、大学など高度医療機関は身を削って自由診療をボランティアでやりかねない。
それは一見美談であるが、その先にあるのはさらなる勤務医の環境悪化であり、長期的には日本医療を殺す毒となるだろう。
そうなれば、日本から高度医療の火が消えてしまう。
では逆に、病院側が自由診療なんだから患者が勝手にすればいいと言ったとき、どうなるだろうか?
言うまでもなく、患者とその家族は必死で医療費を集めてくるだろう。
その結果、アメリカの様に医療費が個人破産の主因になるのは間違いあるまい。
渡航臓器移植のために募金を集めているところがよく報道されているが、それが自由診療のための募金にすり替わるだけだろう。
では、そうならない事が担保されれば、一定の条件が満たされれば医師の多くが混合診療を認めるだろうか?
おそらくはその通りだろう。
しかし、だからといって「総論賛成、各論反対」と単純に言うわけにはいかないのだ。
何故なら、官僚は医師とは全く違う混合診療解禁を描いているからである。
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