まずは、先の衆院選で民主党が掲げていたマニフェストですが、
日本の医療に希望を作る
国の責任で医療制度を作り、持続させる
この二つが二本柱となっています。その為の方法として
社会保障制度の安定
予防医療の推進
医療の安心・納得・安全
国民皆保険制度の維持発展
医療提供体制の整備(今後15年間で「実動の医師数」を10万人増やす)
診療報酬(私たちは長期的には医療費を対GDP 比でOECD 平均の8.9%程度(現在日本は8.1%)まで引き上げることを目指すべきと考えています。そのために、まず、1.2兆円の予算を投入する案を考えました。)
各診療科・疾患対策
といったことが掲げられていました。
では、今度の参院選ではどの様になっているでしょう?
まずは見出し部分ですが
医療・介護、農業、住宅などの新たな成長産業
日本の先端医療技術を活かした国際医療交流の促進、生産・加工・流通までを一体的に担う農業の6次産業化、住宅のバリアフリー・耐震補強改修支援などにより潜在需要を掘り起こします。
ライフ・イノベーション
医療機器・医薬品のイノベーション、ICTと医療・介護産業の融合による遠隔医療、再生医療や介護ロボットの実用化などを支援します。
観光
訪日観光客3000万人の実現に向けた観光情報の戦略的発信、ビザ要件緩和などを進めます。むら・まちづくりと一体の多様な観光資源を活かした魅力ある観光地づくりや「ローカル・ホリデー制度」創設などを進めます。
EPA・FTA
アジアをはじめ各国とのEPA・FTAの交渉などを積極的に進めるとともに、投資規制の自由化・緩和などの国内制度改革に一体的に取り組みます。
となっております。
なんといいますか、衆院のマニフェストの残滓すら見ることができません…
ところで、ここで私が医療関連分野として観光やEPA・FTAを入れたことに疑問を持たれた方もいらっしゃるかも知れませんが、それは、霞ヶ関の動きを全くフォローできていないと言うことですので、是非ともお気をつけ下さい。
観光分野では海外からのメディカルツーリズムの誘致が計画されていますし、EPA・FTAでは条約に伴う看護師および介護士の移民が既に日本に入ってきています。
しかも、この二つは現在進行形の霞ヶ関および民主党の主要政策です。
マニフェストにそのことが触れられすらしていないというのは、このマニフェストは実際の政策を反映していない可能性があること既に示唆しています。
続いて詳細部分ですが、
4.子育て・教育
・出産育児一時金、不妊治療支援など出産にかかわる支援策を拡充します。
5.年金・医療・介護・障がい者福祉
・病気や高齢への不安を全力で減らしていきます。
・財源を確保して、持続可能な社会保障制度を構築します。
・後期高齢者医療制度は廃止し、2013年度から新しい高齢者医療制度をスタートさせます。
・診療報酬の引き上げに、引き続き取り組みます。
・地域の医師不足解消に向けて、医師を1.5倍に増やすことを目標に、医学部学生を増やします。看護師など医療従事者の増員に、引き続き取り組みます。
・新型インフルエンザ対策としてのワクチン接種体制の強化、がんの予防・検診体制の強化、肝炎治療に対する支援などに集中的に取り組みます。
・ヘルパーなどの給与の引き上げに引き続き取り組み、介護にあたる人材を確保します。
・在宅医療、訪問看護、在宅介護、在宅リハビリテーションなどを推進し、地域で安心して生活できる環境を整備するとともに、家族など実際に介護にあたっている人を支援します。
・自殺対策に積極的に取り組み、相談体制の充実、メンタルヘルス対策の推進、精神科医療の適切な受診環境の整備などを推進します。
となっておりますが、まぁ、細かい突っ込みをするとキリがないので鳩山政権で主要項目であった診療報酬と医学部定員増についてみてみましょう。
すでにいくつかのメディアで突っ込まれている通り、医学部定員増については衆院選では「今後15年間で「実動の医師数」を10万人増やす」であったのが「医師を1.5倍に増やすことを目標に」と、時間の点でも数の点においてもトーンダウンしています。
そして、実はそれ以上にトーンダウンしているのが、誰も突っ込んでいない診療報酬の方です。
当初から実現可能性は疑問視されていたものの、仮にも目標を掲げていた衆院の時と違い、今回は金額も期日も全く定めていません。これは、菅政権は診療報酬増額について統一見解を作れていないと考えておいていいでしょう。
先の診療報酬改訂の結果や、長妻大臣と足立政務官がすでに空気になっていることを見れば、民主党は診療報酬を上げる気はもうないのかも知れません。
つーか、速報の記者会見の時に言っていた「診療報酬の明確な方向性」とやらはどこ行った?
さて、ここまでですでに問題だらけの医療マニフェストですが、それ以上の爆弾があります。
メディカルツーリズムとかEPA・FTAとか、そんなのがどうでもよくなるくらいの問題です。
このマニフェスト、現在民主党と霞ヶ関が進めている混合診療解禁に一言も触れていません。
この件については、是非とも東洋経済6/12号仙石国家戦略担当相インタビュー記事を参照して頂きたいのですが、このインタビューを私なりに要約させていただくと、
・日本の医療を開放型に転換する
・これまで官僚は責任をとってこなかった。だからこれからは特区に指定された病院が全責任を負って混合診療を行う。皆保険で基本的なところを守る一線さえあれば混合診療は許容される。
・現在の医療を守るために医療費全体をGDPの10%程度まで増やすべき
という感じです。
簡単に突っ込ませていただくなら、「日本の医療を開放型に転換する」というのは「現在の医療を守る」とは反しますし、医療費増は「これからの医療」に必要なものです。
官僚はこれまで責任をとらなかったから国はこれからも責任を負わないというのは暴論以外何者でもありませんし、
混合診療下でも皆保険は最後の一線を守るということを担保する制度はどこにもありません。
しかし、それよりも何よりも問題なのは、これだけのことを一経済誌のインタビューで回答しておきながら、マニフェストにはその存在自体触れられていないということです。衆院選の「国民皆保険制度の維持発展」というマニフェストとは方針を180度転換になるかも知れないのにです。
これは、マニフェストに対する背信行為と言えるのではないでしょうか?
長くなったのでまとめます。
参院選の民主党の医療マニフェストは、衆院選の時に掲げられたものとは既に全くの別物です。
そして、このマニフェストには現在進行形で進められている重要政策が、全く反映されていません。
マニフェストにもインタビューにも言えることですが、現在の民主党政権は「中央の論理」であり、野党時代に散々謳っていた「国民目線」が欠如していると言えるでしょう。
そのせいか、今現在進行中の医療崩壊をどう止めるかが全く忘れ去られています。
これでは、日本の医療に未来はありません
次回、ブログではほとんどタブーとも言える混合診療問題について取り上げたいと思います。
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