2010年8月8日日曜日

疑わしきは提供せず

3週間ほど前に施行された改正臓器移植法ですが
小児からの臓器提供も可能になったハズですが、今のところまだ1件も行われていないのは何故でしょうか?
今回はそこのところにスポットを当てたいと思います

子ども提供で手続き断念複数 虐待有無の判断理由に

改正臓器移植法で可能になった15歳未満の子どもからの臓器提供について、家族に提供意思があっても移植に向けた手続きが断念される事例が同法が全面施行された7月17日以降、複数あったことが分かった。日本臓器移植ネットワーク西日本支部の移植コーディネーターが2日、高知県内の勉強会で明らかにした。
虐待を受けた18歳未満からの臓器提供はできないと定められているが、虐待の有無の判断は個々の病院内の虐待防止委員会に任せられている。
このコーディネーターは、詳しい状況は明らかにしていないが、虐待の疑いの有無を病院が判断し切れないことが原因という。
改正臓器移植法の全面施行後、子どもからの提供、移植に向けた手続きが断念された事例が明らかになったのは初めて。
臓器移植法の改正に当たっては、運用指針を検討する厚生労働省の委員会で、虐待を受けた子どもの扱いが焦点となった。だが、全国の提供病院では虐待を受けた子どもからの提供を防ぐための院内組織やマニュアル整備が進んでいない。また虐待を見逃さないため、医療機関や児童相談所、警察など多機関の連携体制の構築が不十分との指摘もある。
勉強会では、医師から「提供施設が虐待の判断をするのは負担が大きすぎる」との声も出た。
2010/08/03 01:00 【共同通信】


いきなり正にその通りで、私の言いたい事を要約してくれまくったような記事なんですがw、
どうやら、同日にこの記事の続きネタがあったようです
今回問題にしたいのはそっちの方です


厚労相「詳細把握し議論したい」 子どもの臓器提供断念で

脳死状態になった子どもからの臓器提供が可能となった7月の改正臓器移植法全面施行後に、虐待の疑いの有無が判断できないとして子どもからの提供に向けた手続きが断念される事例が複数あったことについて、長妻昭厚生労働相は3日の閣議後の記者会見で「どういう状況で医師がどう判断したか詳細を把握したい」と述べた。
医療機関や警察など関係機関の連携など、虐待された子どもからの臓器摘出を防ぐための体制づくりが遅れているとの指摘もあり、長妻厚労相は「(実態把握の上で)改善すべき点があるか省内でも議論していきたい」との考えを示した。
2日に事例を報告した日本臓器移植ネットワーク西日本支部(大阪市)の易平真由美主席コーディネーター代理の説明によると、生後15週間の子どもの両親から臓器提供の申し出があったが、虐待防止の観点などから判断ができず断念。また、3カ月の子どもが車から転落する事案については、母親が故意に投げたのではないとどう判断するのか難しいとして断念したという。
2010/08/03 13:31 【共同通信】



えーと、長妻大臣よ、
この改正法は、改善すべき点があるとかそういう次元ではなく、
何も決めない事を決めた法律
である事を知らないのか?

知ってて言ってるなら大したタヌキ寝入りだが、知らずに言ってるならただの阿呆だ

何で私がここまでぶち切れてるかというと、先日あった
「小児からの臓器提供に必要な施設体制」
とかなんかそんな感じのタイトルの医療機関向けの臓器移植ネットワークの講演会が原因である

私のいる大学病院は、まだ小児からの臓器提供はできない
何故かというと、その為に必須とされている虐待発見委員(仮)が組織されてないからである
なぜ組織されないかというと、その委員会にどんなメンバーを集めてどんな議論をすればいいのか、国が指針を示していないからだ
共同記事にもあるように、普通に考えれば他の医療機関や警察、学校、児童相談所との連携が必要なのだが、そんなものを1病院が作れるわけないのである
(つーか、理想を言うなら虐待発見と脳死判定はそれぞれ各県に1つ第三者委員を作るべきなのだが

で、当然ながらどんな虐待対策をすればいいかという質問がネットワークに殺到したわけだが、彼らの回答は非常に単純明快であった

「それらは全て、各病院の裁量に任されています」

つまり、どんなメンバー集めるかも、どんな議論するかも、各病院が勝手にやれというのだ


これには呆れるほかなく、そうなると、次はトラブった場合に誰が責任とるのかが問題になるが、これもまた素晴らしい官僚的答弁が待っていた


「非公式見解ですが、提供を決めたのは各病院という事になりますので、後はご想像の通りです」


普通ならこれでキレても十分許されるレベルだが、そこを抑えて別の手で行くのがチーム戦の素晴らしいところである
まぁ、単にこいつらに権利と責任の話をしても通じないとみんなが一瞬で悟っただけなんだけどさw
しょうがないから各論にいったら、これもまたとんでもない

今回の法改正で、本人が拒否を示していなければ、親族の判断で臓器提供できる事になったのだが、例外規定がある事は意外と知られていない
『知的障害などで拒否の意思を表明できないものは脳死の対象ではない』のである

で、当然ながら理系人間である医師は突っ込む
何を持って、『知的障害』と判断するのか
そして、この解答から地獄が始まった


「知的障害の定義はありません。そもそも、この文面は『拒否の意思を表明できない』がポイントですので。先生方が家族の話から判断して下さい」


なんと、なにをもって「拒否の意思を表明できない」とするのか、科学的な定義はないそうなw
(まぁ、れを言い出せば何を持って虐待というかがこの国でまだ定義されてないんだけどさwww)


そう言われれば、誰もが同じ疑問を持つ
小児や認知症患者は『拒否の意志を表明できない』のであるから、臓器提供の対象外になるのではないか?
さらに広義にとるなら、脳死者は拒否の意思を表明できないのだから、そもそも臓器提供者になり得ないというパラドックスをきたすのだがwww   


それに対する解答は、もう法律の精神を根本から否定するものであった

「矛盾は承知の上です」


呆れる意外に何ができようか?
恣意的に運用できる法律、矛盾した法律というのは、政情不安国の専売特許だ


つまり、あの講演の全てを要約するならば
「臓器を提供するのも、誰をドナーとするのかも、各病院が勝手にやれ。全て自己責任でな」
ということです


………誰か、こいつらに法治国家の意味を教えてやって下さい

脳死者は、社会的に死とされうる生物学的な生者です
これの権利を最大限守ろうとする事は、医師と法律家の唯一の共通点であると私は勝手に信じてますが、
この法律は、文系的にも理系的にもアウトでしょう

こんな法律で早々に小児からの臓器提供が始まらなかった事は、この国の医療機関に生命倫理と道徳がまだ生きている証だと胸をはるべき事だと、私は思います

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