2010年8月22日日曜日

責任者不在の臓器移植法

このご時世に脳死移植反対を公言してる私ですが、中でも小児脳死移植に反対する理由として「少なくとも現時点では絶対に認められない道義的理由」として以前より指摘していた問題があります
それは、「そもそも虐待防止、早期発見、虐待児保護の国家的体制がない。また、一件の脳死ドナー候補がでるだけで、ただでさえ先進国最低クラスと絶対的にリソースが不足している小児三次救急が一時的に崩壊するのではないか?脳死移植は、小児救急を整備して脳死になる子どもを最小限にした上で議論されるべき問題ではないか?」ということです。
私がこのことを某所で指摘してから1年以上経って、法施行から一ヶ月経ちましたが、果たして今どんなことになっているでしょうか?
キャリアブレインの記事から抜粋させていただきましょう。

改正臓器移植法施行1か月(上) 医療現場になお不安

 改正臓器移植法の完全施行から1か月がたった。この間には、書面での意思表示がない男性2人(いずれも18歳以上)から臓器提供が実施されたが、提供者(ドナー)からの臓器提供を担う提供施設では、今も不安を抱えたままだ。(池島貴裕、田上優子、兼松昭夫)

■避けられない負担増
 脳死判定を行い、臓器の摘出手術を行う脳死下臓器提供施設の1つ、川崎市立川崎病院(神奈川県川崎市)。同病院で脳死判定を担当する野﨑博之・神経内科部長は、改正法に不安を感じている。最大の懸念が、脳死判定の見直しに伴う提供施設の負担増だ。
 脳死の判定は、▽深い昏睡(こんすい)▽瞳孔の散大と固定▽脳幹反射の消失▽平坦な脳波▽自発呼吸の停止-などが基準で、2回にわたって実施する。
 1回目と2回目の判定の間隔は「6時間以上」とされていたが、改正法で新たに臓器提供が認められた15歳未満のうち、6歳未満については「24時間以上」に延長された。6歳未満の小児では、脳死判定後も心臓が長期間動き続ける「長期脳死」になることが成人より多いためだが、判定が長引けば病院や担当医師への負担増は避けられない。
 「忙しいから対応できないでは通らない。やるしかない」と野﨑医師は話す。ただ、その胸中は複雑だ。
 01年に行った臓器提供では、金曜日の夜から脳死判定の作業が始まり、担当したスタッフらは搬出作業が終了した日曜日の正午近くまで対応に追われた。新たに認められた小児では、脳死判定時のスタッフの拘束時間が一層長くなる。脳死した小児の臓器を摘出する上では、虐待の有無の判定などの作業も加わる。さらに、遺族への手厚い対応も求められる。
 川崎市立川崎病院は、県内全域からの救急搬送を受け入れる三次救急医療機関。200人近い勤務医がいるが、脳死の判定に携わる脳外科などでは、今でも「ぎりぎりの労働環境」で勤務しているのが実情だ。
 今後、小児の脳死判定に対応する場合には、緊急手術を近隣の病院に任せることも検討せざるを得ないという。
 野﨑医師は「よほどスタッフがそろった病院でないと円滑な対応は厳しい。脳死判定に対応するために救急患者の受け入れをストップする病院が出るかも知れない」と話す。

 仮に病院側の対応が国のガイドラインから逸脱すれば批判の的になりかねず、これが提供施設の負担につながるという関係者も多い。
 日本医科大付属病院の横田裕行・高度救命救急センター部長は、「改正法では、判定に前後する虐待の有無の確認や遺族へのオプション提示のタイミングが、すべて厳格に決められている。提供病院の負担を軽減するため、現場の裁量を認めてほしい」と訴える。

( 2010年08月19日 18:55 キャリアブレイン )
改正臓器移植法施行1か月(下) 小児の臓器移植に壁
 ■虐待の確認 どこまで可能?

 改正法では、18歳未満の人が虐待を受けていたことが明らかになった場合には臓器提供を認めていない。虐待の有無を判定するため、提供施設は「虐待防止委員会」を設置し、虐待が疑われるケースは警察や児童相談所などに届け出なければならない。
 しかし、捜査に関するノウハウもない医師らによる虐待防止委員会が、虐待の有無を本当に判断できるのかを疑問視する声が多い。

 日本移植学会の寺岡慧理事長は、虐待の有無の確認が医療現場に委ねられたことで、「小児の移植は慎重にならざるを得ない。虐待防止委員会で止まってしまうのではないか」と危惧(きぐ)する。
 実際、日本脳神経外科学会が会員施設を対象に実施したアンケート調査では、「虐待への対応が不可能」などの理由から、小児の脳死判定や臓器提供の体制を「未整備」とする施設が回答した施設の7割以上占めた。

 日本移植学会が改正法の施行前に開いた記者会見で、阪大病院の福嶌教偉・移植医療部副部長は、「本来は警察が行うべき犯罪かどうかの見極めが医療者側に委ねられた。院内にそのための仕組みをつくるのは非常に大変」「虐待の有無の判断には、国レベルでの“お墨付き”に近い仕組みづくりが必要。病院の責任だけで確信を持って判断するのは難しい」などと困惑を隠さなかった。
( 2010年08月20日 16:35 キャリアブレイン ) 



キャリアブレインにしては見出しがイマイチなんですが、不安も壁もつくったのは国会です
しかも、これらの問題は法案成立以前から指摘されていたことです。
第一ですね、医師は虐待の「捜査のノウハウがない」のではなく、根本的に「そもそも捜査権限がない」ということを皆さん忘れていないでしょうか?

新法が法案となる以前からあちこちで既に指摘されていたリソースや虐待発見、情報公開と行った問題が、法案が成立して1年以上経っても放置されているのが現状なんですが、マスコミはこのことを垂れ流しはしても「じゃあどうする」って話は全くなしです
結局のところ、この新臓器移植法もマスコミの話題作りと政治家のゲームの一つでしかなかったと言うことでしょうか?


既に導火線に火はついてしまいました
このまま放置すれば、いつか、どこかで爆発するのは確実です
その時、いつもの医療過誤報道のようにまた病院や医師が生け贄になるのでしょうか?
そんなことになれば、その日が日本の移植医療の最後の日となるでしょう


日本の医師が、臓器移植になぜここまで徹底的に安全走行を求めるかというと、日本初の脳死移植におよそ考え得る限りの問題が凝縮されていたからです。
和田心臓移植事件という二度と繰り返されてはならない疑念があるからこそ、臓器移植には透明性と慎重さが重要なのです。
脳死というものは、一病院や、ましてや医師個人に背負えるものではないのです。


国が全ての責任を負うようにしない限り、日本で小児脳死移植は進みませんし、進めてはならないのです。

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