2012年5月30日水曜日

医学部新設議論各論

気がついたら年度あけて引っ越し後に一度も更新してませんでした(^^;)

新生活も落ち着いたのでこれからはちょいとペースを戻していきたいと思います


さて、今回は医学部新設議論です


これについては、国がパブコメで医学部新設意見募集したら6割賛成意見
ただし、その多くは「特定地域」からの「テンプレ投稿」だった


というわけで、首長が医学部新設要望書を出したら今度はそこの県医師会が反対意見表明という感じでその後の場外戦が半年近く続いている状態です




被災地では仙台厚生連がねばってるようですが、どうにも突っ込み満載です



目黒泰一郎・仙台厚生病院理事長に聞く


――そのほかの状況はいかがでしょうか。東北大学との話し合いはされたのでしょうか。
 まだお話はしていません。
<略>
――これまで県医師会と直接話し合いの場を持たれたことは。
 そのような提案はしていますが、結局、声がかからないまま、医学部新設の反対決議をされました。
 東北大学はこの4月に医学部長が代わったばかりだったので、話し合いは少し落ち着いてからでいいのでは、と考えていました。また我々には、「県医師会は、医学部新設については当面は、イエスともノーでもない」という中立の立場を取る期待があったことは事実です。

――それは何らかの根拠があるのでしょうか。
 はい、ある程度の理由はあります。そのように主張される理事の方もおられ、そうなっていくようにも聞いていました。このような早さで、県医師会が見解を出すとは考えておらず、我々の読みが甘かった。また東北大学についても、3大学がまとまって、行動に出ることは、残念ながら予測していなかった。

――先生方は、文科省の検討会が一定の方向性を打ち出した後に、関係者などと話し合うというスケジュールを考えておられた。
 そうです。パブコメも募集したので、今年3月くらいまでに何らかの方向性が出るのかとも考えていた。それにより、世論も動いてくると思っていました。しかし、結局、その前に東北大学、県医師会が動いたわけです。その意味では、遅れを取ってしまった。


――医学部新設への反対理由として、「地域の病院の医師が、教員として集められるので、医師不足が加速する」ことが挙げられます。
全く新規に病院を作ることになれば、大学病院でなくても、地域の医療機関から医師を招くことになるので、そうした現象は起こり得るでしょう。しかし、今は病床規制が非常に厳しく、それはできません。したがって、結論としては、既存病院を生かして大学附属病院を作るしかないのです。新たな病院を作るわけではないので、周囲から医師を吸引することはありません。
また当院および協力病院の西日本の病院は、今でも臨床実習ができる体制になっています。医師を新たに確保する必要はない。一方、大学で座学を含めた教育を担当する教員は、最低で140人という設置基準になっています。この基準が、医学部が新設される際に、そのまま適用されるかどうかは分かりませんが、現在はこの基準であり、少ない大学でも200人を超す教員がいます。
こうした大学の教員陣が今いるのは、地域の病院ではなく、大学医学部あるいは大学病院。東北大学が最終的には一番多くなるかもしれませんが、全国の大学などから教員を募集すれば、医学部を新設する地域では、100人、200単位で医師が増えることになります。


えーと、この理事長様は「根回し」って言葉をご存じないのでしょうか?
しかも、他大学の医師は吸い取るって思いっきり言ってるんですが、その後いなくなった医師を補充するために地域から大学に医師を呼び戻すから結果的に地域の医療崩壊が進むってみんなずっと言っているのを全く理解してないんですね
なんか、医師会がまったく相手にしない理由が想像できてしまいますが…


どちらかというと被災地よりも最近ホットになりつつあるのが関東です





医学部新設反対派に反論、黒岩知事と高木理事長

シンポで神奈川県と国際医療福祉大学の構想語る

2012年5月20日 橋本佳子(m3.com編集長) 

 神奈川県では今年4月、「神奈川県医療のグランドデザイン(案)」を公表(案は、県のホームページに掲載)、5月17日までパブリックコメントを求めていた。黒岩氏は、「報告書では、医学部新設については両論併記になった。しかし、県の方針としては新設を目指す。県医師会が最も抵抗を示さずに医学部新設ができるかを、知恵を絞り、今動いている」と説明。2011年12月に国に指定された「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」で、「開かれた医療のショーウインドーのような医学部」を作り、例えば英語で教育し、附属病院も外国人医師や看護師が働く、自由診療を行うなどの新しいタイプの医学部を目指すとした。
略>
 長年、ジャーナリストとして仕事をしてきたが、救急救命士の業務範囲の拡大や准看護師の廃止など、医療の様々な問題を訴えると必ず医師会と全面戦争となった。医師会が反応することは、患者さんにとってはいいことだということ。しかし、神奈川県の知事となったからには、そうはいかない。神奈川県の医師会とは仲良くし、日本医師会とは戦うということでやってきている。  




という風に最初は医師不足対策ということで医学部考想上げていたはずなのですが、被災地での医学部新設議論が事実上ポシャったあたりから 「医学部教育改革」をおりまぜたりして搦め手を入れています
が、そもそも、首都圏で複数の医学部を持つ、地理的に非常に恵まれたはずの神奈川に「医学部が足りないから医師不足」という論調は成立しないわけで、県の無策と魅力のなさを全国に喧伝しているだけです。神奈川県知事は千葉県と埼玉県に謝れとまで書いてる人もいましたねw


まぁ、どう考えても新設ありき論調で、新設にしなければけない理由は全くなくしかもまともな医師からすればあまりにも非現実的なプランでありどの掲示板やブログみてもまともに相手をされていません



ちなみにこの神奈川県のパブコメですが面白いオチが付きました





医学部新設、医師会が反対投稿要請…神奈川県の意見公募で

 国の特区制度を活用した医学部の新設などを柱とする神奈川県の「医療のグランドデザイン」をめぐり、県が意見を公募した「パブリックコメント」に対し、医師会側が反対意見の提出を会員に文書で求めていたことが29日、わかった。黒岩知事は反対意見が大半を占めた結果に「あまりにも偏り過ぎで、大変な違和感を持っている」と反発しており、知事と医師会の関係に影響を及ぼしそうだ。
<略>
 県によると、17日で募集が締め切られた意見の総数は634件で、医学部新設に関する意見446件のうち、反対は424件、賛成は15件、その他7件だった。
 これに対し、知事は29日の定例記者会見で「反対意見のうち、同じ様式のものが3パターン、計196件あった。幅広く県民の意見を聞く中で、非常な違和感を覚える」と批判。「医師会」との名指しは避けたが、「何かあったんじゃないかなと思わざるを得ない」と述べた。
(2012年5月30日 読売新聞)




とまぁ、完全に国のパブコメの意趣返しですなw

まったく、県医師会と仲良くできてないじゃないですかwww

しか同じ様式のものなかったことにしても、250228件反対なのは変わらない事実なワケでそこについて素直に言及していないのは為政者失格かと



あと、妙に熱心な栃木国際医療福祉大ですその現実性に疑問符が掲げられています



【高木邦格・国際医療福祉大学理事長の発言概要】
 私は本当に(医学部新設に反対する理由が)よく分からない。今、私どものグループには、まず附属病院(4カ所)に400人近い医師がいる。そのほか、山王病院や高木病院など、私どもの関連病院を含めると、八百数十名の医師がおり、非常に健全な経営で維持している。
200人前後の教員を増員すれば、それこそ旧七帝大以上の充実したスタッフになるのではないかと想定している。
 4カ所の附属病院は一応、黒字で動いている。平均年収1200万円で200人の教員を確保する場合、24億円程度が必要。そのほか、医療機器など(の購入費)も想定していくと、私は年間授業料200万円で十分にやっていけると考えている。私立医大は、平均で20億円の私学助成を受けている。
 またこれは地方の問題。民主党政権ができた時に、地方分権とあれだけ言われた。私が不思議なのは、神奈川県知事が作りたい、神奈川県には医師が不足していると言っているのに、国が規制するというのは何なのか。新潟県の知事も、一生懸命に活動されている。地方自治体の関与、授業料の問題、いろいろなことを条件にして、できるだけ早く新しい医学部を認めてほしいと思っている。私は授業料は200万円くらいの水準で十分にできることを確信している。


まず根本的にこの200人増員をどこから持ってくるつもりなのか?
当然外からまかなえる人数ではありませんしだからといって関連病院から引きはがすのは非常に健全な経営ぶちこわす恐れがありますなにせ、病院は医師が収入源なのですからそこまで計算しているのかどうか疑問です

そもそも、歴史ある私立を見るに授業料200万で医学部が成立するのかどうかという基本的な疑問がありますなにせ、あの莫大な資金源を持つ慶応ですら300万ですからね

また、地方自治訴え国の関与を求めながら補助金きっちりもらうつもりというのも不評の一因でしょう








とまぁ、こんな感じで既存医学部勤務医どころか地元医師会開業医からさえも絶賛反対中医学部新設ですが、決して合理性なく反対しているわけではありません


また仮にこの反対を無視して強行的に新設することは可能なのかという問題はこれまで全く触れられていないように思いますが、正直言ってこれは無謀です

今どき紹介逆紹介ない中核病院は存在せずぶっちゃけ、どれだけ困ったちゃん地元医師会でもビジネス上のつきあいくらいはうまくできてないと経営自体影響します



また、大学病院でも自分の手に負えない症例なんていくらでも出てきますが、そういうときに他の医学部と良好な協調関係を築けているかどうかは重要です


つくる前から没交渉の新設医学部附属病院なんてハイリスク以外なにものでもありません

2012年3月24日土曜日

練馬区の一週間戦争

地域医療振興協会への重大な懸念
続・地域医療振興協会への疑念
の続き
が早々に来てしまいました

正直、今回ばかりは予想が外れて欲しかったところです…


手続きの遅れと医療水準の未達

迷走が続く新練馬光が丘病院


 累積赤字90億円を理由に撤退を決めた日本大学医学部付属練馬光が丘病院(342床)の後継問題が迷走している。4月1日からは、地域医療振興協会(以下、協会)が後継機関として運営を開始する予定だが、いまだ遅々として進んでいないのだ。
 協会は、病院の開設許可証を得るための第1歩となる事前相談計画書を、3月13日になってようやく東京都に提出。予定は11月だったのだが、医師の引き継ぎ作業などの停滞によって大幅に遅れた。
 通常なら提出を受けた後に都が審査、その結果通知書が出てから開設許可証が降りるまでに少なくても3週間はかかる。とうにタイムリミットは越えた格好だ。
 しかも計画書を出す際には、本来、病院の土地・建物を無償で提供する練馬区と同協会の契約書か、協定書が必須。ところが、その大前提とな同区と日大側の契約の解消すら、いまだに決着の目途はたっていない。
 3月14日に開かれた練馬区議会の医療・高齢者等特別委員会。「何を根拠に、どう契約を解除するのか」(池尻成二区議)との追及に、区の地域医療課は「日大とは、今後、協議していく」と語るに止まった。
 なにより、日大が区に預けている50億円の保証金の返還問題もいまだ話し合いがつかず、平行線のままだ。 
 こうした状況に対し、東京都は医療の空白期間を是が非でも避けたいとして、今後の対応に必死の様相だ。
「計画書の確実性を見た上で、急いで内部決済を取る。契約書については、期日の関係でそれに代わる書面でもかまわない。これまで地域の医療を支えてきたこの病院がなくなっては困る」(東京都医療安全課)

 同病院の外来患者は、年間に約22万人。小児救急では、約9000人を受け入れ、近隣の区市にとっても要となる医療機関だった。
 ただ、今回、都が新病院を認めたとしても、課題は山積している。志村豊志郎区長が明言してきた「現在と同等の医療機能や規模を引き継ぐ」という約束が、果たされていないからだ。
 日大練馬光が丘病院には、常勤医師が122人、看護師290人が働く(今年2月)。これに対して、新病院の計画数は、4月1日時点で常勤医師70人、看護師が180人と約4割も減少する。外来診療は、8科で予定を組めない事態に陥っている。

 そもそも区は、協会の選定理由の一つに「小児医療や周産期医療を維持するために必要な医師数が提案されている」ことを挙げていた。昨年12月7日の住民説明会でも、区は常勤医師数について現病院の「小児科15人、産婦人科5人と同程度を予定」としたが、現状は同9人と2人にすぎない。
 都は「入院と救急を縮小しても、より早い段階で元の稼動状況に戻していただく」と説明するが、その実現は至難の業といえる。
 すでに近隣の病院からは、今後の「小児救急の崩壊」を危惧する声が上がっている。4月以降、試されるのは協会の運営能力だけではない。練馬区と都の指導力も、大きく問われることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)



日大病院後継 常勤医3人多く発表 練馬区「確認不足だった」

 読売新聞 朝刊 2012.03.16
今月で撤退する「日大医学部付属練馬光が丘病院」の後継医療機関を巡り、新たに開設される病院の常勤医師数が、練馬区が14日に発表した70人をさらに下回り、実際には67人だったことがわかった。新病院側が、非常勤医師の勤務時間を積算した結果、常勤医師3人分に相当するとして上乗せしていたためで、区は「認識不足だった」として区議会にも陳謝する方針。
新病院の現段階の常勤医師は、日大病院と比べて54人減となる。区は14日の区議会で常勤医師数を70人と発表。実際には、非常勤医師の勤務時間を積算した分を常勤医師に含めることができる「常勤換算」を入れた人数だったが、区は「常勤換算を含めない常勤医師数」と答弁していた。
都が同日、区側に対し、常勤医師数の答弁で誤りがあると指摘して判明した。区は「新病院が『常勤医師は70人』と言っていたためにそう答弁したが、認識も間違っており、確認も不十分だった」と誤りを認めた。
区によると、新病院の常勤医師については、現在、新病院側が医師の獲得交渉を進めている。開業時の4月には70人を上回る可能性もあるという。




絶対に確信犯だろ、こいつら…

練馬区も、地域医療振興協会も、これで完全に信用は地に落ちましたね
地域医療振興協会以外にも手を上げてくれていた病院はあったわけですし、
普通に考えて、一般企業ならどっちも訴訟ものですけど


とはいえ、はっきりいって都も同罪だと思いますけどね

少なくとも、被害者面する権利は、ない
前々からわかっていたことですし、清瀬の都立小児病院を潰したのだって影響してるでしょうに


近隣小児科がドミノ倒しにならないことを願うのみです

2012年3月16日金曜日

続・地域医療振興協会への疑念

先日
地域医療振興協会への重大な懸念
を書いたばかりなのですが、早速続報が入って参りました

日経メディカル記事なんですが




練馬区によると、4月1日の開設時点で協会が確保した医師数は常勤70人、非常勤40人。日大練馬光が丘病院の常勤121人、非常勤48人(いずれも昨年12月末時点)を大きく下回った。
看護師も、日大練馬光が丘病院の約280人(同)より大幅に少ない180人となった。



とのことですが、先日の新聞報道では「常勤医+非常勤=70人」です
また、都議会議員のtweetでは「常勤医換算で70人相当」と書かれていたそうで、大きく食い違ってます

どれも、元ネタは協会が都に提出した計画書…つまり、同じソースであり、こうまで食い違うのは珍しいというか、ありえないことです


まぁ、これについてはあと2週間すれば自然と結論は出てしまうのですが、もっとも「被害」が少ない日経メディカルが正しいとしても、
常勤医121→70名と常勤医数は58%になります。
これにランチェスターの第二法則を当てるなら、戦力としては33%まで低下
…「壊滅」っていうか「消滅」といっていいレベルですね。軍隊なら回れ右して全力で逃亡するところです

しかもここで1つ問題があります
ぶっちゃけた話をしてしまうと、仮にも大学系列である日大練馬と、地域医療振興協会が慌ててかき集めている医師のレベルが同等であるのかどうかという問題です


「数」と「質」の両面からいって、普通に考えて同等の機能を果たせるとはとても思えませんっていうか、あり得ません


さて、ところで、医師っていうのは実は流民というかフリーランサー的要素が強いので、まだ全国から集められる存在です
一方、どうがんばっても地元で集めなきゃいけない重要な職業として看護師がいますが…ここで64%まで低下ってのは正直、いかんともしがたいのではないかと…

(看護師って医療崩壊の議論からいつも外れがちですけど、実はこういう独法化とか経営移譲のときにいつもネックになる部分です)



最初は退院・転院できなかった入院患者をさばくだけでもギリギリなんじゃないでしょうかね…
練馬区だけ↓を先行した方がいいんじゃないでしょうか



消防庁が出動に緊急度判定基準 軽症なら自力受診を

 救急車の出動件数の増加により、現場到着に時間がかかるなどの問題が深刻化していることを受け、総務省消防庁は14日、119番を受けた担当者が救急出動の必要性を判断するための緊急度判定基準をまとめた。症状に応じていくつかの質問に答えてもらい、4段階で判定。軽度の場合は、タクシーなどで病院に行くよう促し、重度の急患への対応を優先させる。

 消防庁の有識者検討会が同日、判定基準を盛り込んだ報告書を了承。消防庁は9~11月に、複数の地方自治体で試験運用し、改善を図った上で、全国で活用してもらう。
2012/03/14 18:34 【共同通信】

2012年3月14日水曜日

地域医療振興協会への重大な懸念

半年前に取り上げた、日大練馬病院撤退→地域医療振興協会登場の続編

前のはこちら参照
日大の変
日大練馬 その後

とうとう、地域医療振興協会への引き継ぎまで一ヶ月を切った中で、予想通り混乱してます



2012. 3. 9
日経メディカル2012年3月号「ニュース追跡」(転載)
 日大練馬病院の継承に暗雲 スタッフ確保に苦慮、全床返還の可能性も  
今年4月、日大から地域医療振興協会に引き継がれる予定の練馬光が丘病院。しかし、同協会は継承のための計画書を2月になっても東京都に提出しておらず、342床全床を引き継げない可能性も出てきた。
日大は1991年に東京都練馬区から病院を賃借して練馬光が丘病院(同区)の運営を開始した。しかし、20年以上支出超過が続き、2010年度には累積損失が約90億円に達した。さらに、同大が病院の貸付契約の際に区に納めた保証金50億円の返還時期について認識の違いが生じ、両者が衝突。昨年7月、同大は今年3月末をもって病院運営から撤退することを表明した。
約2カ月後の昨年9月、区は後継法人に地域医療振興協会を選定した。同協会は直営や指定管理者制度によって全国52施設の自治体医療機関の運営に携わる公益社団法人だ。救急や小児医療などを手掛け、日大の運営時と同等の病院規模・機能の維持を条件に、今年4月から協会が運営することになった。
しかし18診療科中4科で、日大と協会の医師による患者引き継ぎが始まっていないことが、1月25日の区議会で分かった。その理由について日大側は、「協会側で医師を確保できていない」(広報部)ことを挙げる。
昨年末の協会の資料によれば、入職が確定した常勤医は26人、協会内病院からの異動などでの確保が25人、交渉中が29人。1月には「常勤医70人を確保するめどが立ち、今後も人事異動などで医師数を増やしたい」と協会は説明した。しかし、昨年12月時点の同病院の常勤医121人、非常勤医48人と比べると、日大の指摘通り不足感は否めない。
さらに協会は、09年4月に千葉県浦安市と市川市から経営譲渡を受け、現在建て替え中の東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県浦安市、一般344床)も、今年4月の開院時は165床に減らしてスタートする。背景には、スタッフを確保できないなどの理由があるようだ。
このため練馬区議会議員の池尻成二氏は、「本当に70人確保できているのかも疑わしくなる。人事異動というが、僻地医療への貢献を目的とする協会が、都内の病院のために地方病院から医師を引き抜くのは理念に反するのではないか」と話す。


小児常勤医は8人 練馬区・協会が引き継ぎで説明 新光が丘病院 
2012.3.9 11:02
日大光が丘病院(東京都練馬区)が撤退し地域医療振興協会が引き継ぐ問題で、協会が確保した新病院の小児科常勤医は8人であることが8日、分かった。区は公募時に、常勤医16人程度の日大の規模と機能を維持すると公約していた。
複数の関係者によると、7日の引き継ぎ会で、練馬区と協会が、名前が確定した常勤医は8人と伝えた。内訳は新採用が2人で、残り6人は、協会の病院から半年ごとに交代勤務する。この人数では小児救急の当直は1人態勢となる。
小児科医数について、区は「人数に関してコメントできる者がおらず、答えられない。協会は小児科医による24時間対応の診療と入院受け入れ態勢を整えるとしており問題ない」、地域医療振興協会は「万全の態勢を目指して準備中」としている。
都救急災害医療課は「区からの最終報告を待ちたい」としている。


日大練馬病院後継で「計画書」

3月末に撤退する日大医学部付属練馬光が丘病院(練馬区)の後継医療機関・地域医療振興協会が13日、都に対し、新病院の「事前相談計画書」を提出、受理された。都が審査後、病院開設許可や使用許可の手続きを経て、4月1日の開院を目指す。
計画書によると、新病院は日大病院と同じ17診療科で、非常勤を含め約70人の医師を確保。24時間体制の小児救急も維持する。病床数も現行と同じ342床だが、開院時は一時的に入院患者を減らし、1年以内70人をめどに8割の稼働率に戻す。区では、計画書の提出を昨年中と想定していた。しかし、志村豊志郎区長が1月の記者会見で、「日大は患者を捨てていく」などと述べたことなどが影響して日大側と新病院の引き継ぎがストップし、提出が遅れたという。
(2012年3月14日 読売新聞)


というわけで、とりあえず来月からのスタートにはこぎ着けたようですが、

日大常勤121非常勤48169
地域常勤非常勤70人

って、これはいかんともしがたいですよ…
単純に人数比2.4倍です。ランチェスターの法則でいえば、戦力比でいえば5.8倍です
同程度の重症度をみるのであれば、スタート時は342床どころか、60床が妥当になります

しかも、この70人すらも、相当無理やりに集めてるのは明らかです
1年以内に稼働率8割にもちこむって…どこから医師を持ってくるの?
正直、最初から日大と同等の機能・人数を用意する気はないのではないかと疑いたくもなります

東京都北西部と埼玉県南西部の小児医療を守るための小児科医共同声明



私は別段、地域医療振興会という自治医大の外郭団体の存在自体は悪く思っていません
むしろ、端から見ててキャリアが不安定になりがちな自治医大出身者からしたら、悲願とも言える組織なのではないかとも思います

しかし、この関連病院の急速な展開は、どう考えても無茶です
というか…正直、病院の特殊性をあまり理解していない人が経営の中核にいるのではないかと思わざるを得ません
組織のミッションを完全に見失っていないでしょうか?

病院というのは希少な国家資格保持者とその後方支援部隊を大勢必要とするため、その展開は軍隊の様に慎重に行われるべきです
学生アルバイトやフリーターを現地徴用すればそれで済む、コンビニや外食チェーンとはワケが違います
限度を超えて膨らんだ風船は、パーンと破裂して、それで終わりです

まぁ、それでもその病院にいる医師は、逆刃刀でも持って流浪となってでも死にはしませんが、
地域住民と、潰れた病院の分まで防衛戦を強いられることになる病院は堪ったものじゃないので、そこはきっちり、責任持てる範囲で病院運営をして欲しいですね



ところで、本筋とそれるので敢えて最後までスルーしていましたが、区長の最低っぷりが半端ないですね
…そもそも日大が撤退したのって、区に貸してる50億円を踏み倒されてるのが原因だろうに



2012年2月6日月曜日

地域医療の行く先

先日、医療過疎の進む沖縄の八重山諸島からこの様なニュースが入ってきました


八重山病院 産婦人科医めど立たず
2012年1月31日
【八重山】県立八重山病院が産婦人科医不足で3月中旬から出産を受け付けられない可能性が出ている問題で、松本廣嗣院長は30日、順天堂大など複数の大学や医療機関、個人などと交渉しているものの、医師確保にめどが立っていないことを説明した。八重山の医療を守る郡民の会が同日、松本院長を訪ねて現状を聞いた。竹富町議会と与那国町議会も同日、産婦人科医確保を求める意見書と要請決議をそれぞれ全会一致で可決した。
  松本院長によると、複数の医療機関に産婦人科医の派遣を要請したり、退職予定の医師に残留を求めたりしているが、30日までに具体的な回答はなく、4月以降の医師確保にめどは立っていない。  八重山病院は眼科、神経内科、血液内科も不在で、週に1回他の病院から医師を派遣してもらい外来診療を行っている状況も明かした。
  八重山の医療を守る郡民の会の宮平康弘会長は「産婦人科医がいないと安心して住むことができない。定住できず過疎化が厳しくなるのは火を見るより明らか」と事態を危惧。「長い間勤める地元出身の医師を増やすなど安心できる状況をつくってほしい。医師確保は一義的に県の役割だが、私たちも協力する」と強調。産婦人科医など専門医が不足しないよう、医師定員増加などを求める要請書を八重山市長会などに送った。



さて、まずこの八重山病院なのですが、石垣島にあり、西表島を含む近隣諸島の中核病院のようです
石垣島だけで4.5万人の人口があるので、普通に本州の自治体病院レベルは要求されるところですね
HPをみたところNICUもあるようで、産科も分娩件数年620件(帝王切開153件)となっていて、なかなか数はあるようです
外来表には6人のDrの名前が確認できます
また、2010年から助産師外来も開かれており、立地から考えるとかなり潤沢な人的資源があったと思われます

…が、それが突然、



当院での出産を検討している皆さまへ
2012年01月25日 投稿
 産婦人科医師の不足のため、平成24年4月より9月までの間、当院での出産が困難になる恐れがあります。
 この間出産予定の皆様におかれましては、下記の対応策を参考に、他の医療機関での出産をご検討いただきますよう、お知らせします。
 <対応策>
 他の地域で里帰り出産をする。
 八重山病院での里帰り出産を取りやめる。
 他の医療機関に紹介してもらい、36週未満までに移動する
 当院では引き続き産婦人科医師確保に努めてまいります。
 今後、状況が変わり次第、お知らせしてまいります。


となっています
過去の記事等を調べると、もともと九大の関連だったのが、打ち切られて、他の県立病院や県外医療機関からの応援+自前でもっていたようですが…
普通に考えると、常勤の産科医がかなり転出することになったのでしょう
なんでそんなことになったのかについては、いささか気になるところですが

この件は結局



要請団に県が報告 医師4人の診療体制を継続
【那覇】八重山病院産婦人科の医師不足問題で、県病院事業局の伊江朝次局長は3日午後、関係医療機関から指導医を含む産婦人科医2人の派遣が決まり、医師確保のめどが立ったことを明らかにした。伊江局長によると、新任医師は5月から勤務。心配された同病院の産科医不足問題は、医師確保が決まったことで、5月以降も4人の医師による出産医療体制が継続し、出産ができることになった。
伊江局長は、同日午後に県庁で八重山市町会と3市町議会、八重山の医療を守る郡民の会、市女性団体ネットワーク会議が行った要請に応えたもの。
要請に対応した仲井真弘多県知事は「医師確保のめどがついたと伊江局長から連絡をもらっている。詳細は近くまとめて発表したい。いい答えになると思う」と述べた。
伊江局長は、医師派遣を要請していた医療機関からこの日、了承を得たという。要請団には、地元出身医師を養成する重要性を指摘。地域での受け入れ態勢の在り方にも触れ「八重山圏域でお産ができる病院は八重山病院のみで、産婦人科医は最低でも4人体制を守る必要があると考えている」と述べた。
産科医不足問題には「八重山の妊婦や関係者に心配をかけたが、全国的にも数が少ない産婦人科医を確保する上ではこれからも起こりうる問題。引き続き医師確保に全力を尽くしていきたい」と語った。
市議会の伊良皆高信議長は「安心した。県も苦労しているが、郡民約5万5000人の良い医療環境をつくっていきたい。今後も配慮してほしい」、八重山の医療を守る郡民の会の宮平康弘会長は「尽力に感謝したい。八重山は都市地区とは別の医療体制で、医師定員を増やすことを検討していただければ」とそれぞれ語った。
要請団は、産婦人科医確保や他分野での慢性的な医師、看護師不足の現状を訴え、その改善なども要望した。仲井真知事、伊江局長、県議会の高嶺善伸議長はいずれも積極的に協力していく姿勢を示した。



というわけで、他の県立病院からの派遣を増やすことで当面の解決をえたようです
…とはいえ、他の県立病院も余裕があるワケじゃないですからね

こういう「白い巨塔」時代の医局の様な無茶な人事が続くと、若手医師や学生から県立病院群が嫌われるでしょうしね

地域枠がそろそろ実戦投入される頃合いですが、それもどこまで効果があるのかは、甚だ疑問です
日経メディカルから、アメリカの医療に関する記事ですが、アメリカにもマイノリティ向けに「地域枠」があるようですが、ほとんど効果は上がってないようです



2012. 1. 31
大都会の医療“過疎”地で起こっている悪循環
<略>
「黒人医師は、ここのような都会の医療過疎地のクリニックでは働きたがらない」との答えでした。マイノリティー(黒人やヒスパニック)の医師の大半は貧困層出身者。彼らが自分の出身地に戻ってマイノリティーの医療を改善するという狙いで、affirmative action(※1)が存在しています。にもかかわらず、医療格差の改善は実現されていない。明確な裏付けはないものの、「もともと経済的に苦労して育ってきた人が、医師になって研修を終えて、わざわざ収入の低い職場を選ぶことはない」(指導医)という理由が推測されるそうです。
※1 affirmative actionとは、underrepresented minoritiesに対して平等なチャンスを与えるための優遇措置で、1960年代に始まりました。例えば、黒人やヒスパニックの医師は人口比率に照らしてかなり少なく、この状況が医療格差に関係してくるのではないかという指摘があります。そのため、メディカルスクールなどが入学志願者を選考する際、簡単に言えば、同じ学力の白人・アジア人・黒人がいれば、黒人を優先的に合格させることが許されています。こうした措置は今も国家レベルで広く行われていますが、逆差別につながりかねないという反対意見もあります。
<略>
医療過疎地となっている地域の住民は無保険者または公的保険(メディケイドやメディケア)の対象者であることが多く、そのような患者層を対象にクリニックを経営することは、少なくとも普通の医師にとっては、国や州からの助成金がない限り不可能なのです[1、2]。したがって、医療過疎地は固定化されることになります。 
<略> 



実際、日本では収入の格差はそれほどではないものの、大都市出身者が地方に出て大都市に帰るのに比べて、地方出身者が大都市に出て地方に帰る率は少ないように思います

これに対して、国や読売新聞は医師を強制配置するシステムを考えていますが、民間人に過ぎない医師に居住の自由を侵害するのは普通に憲法違反です
医師会が強制配置するドイツは、医学部定員割れ+優秀な医師・学生は海外or企業流出という状況です

要はこの問題って、世界レベルで解決できてないんですよねぇ
ただ、客観的にいって、ハイリスク分娩やNICUってのは、本来的にはとんでもない贅沢です

産科だけではないです。医療が高度化するに従い、集約化と医療格差は広がざるをえません
医療が消失する…というよりは、元々の姿に戻る、というべきでしょうか
あと20年もして高齢者がいなくなり限界集落ばかりとなれば、なおのことでしょう
先日いった五箇山の「残ったのは8世帯」という状況が、日本中で生まれるでしょう

医療は空気や水ではないということを思い出して諦めてもらう時代が、もうそこに来ていると思います

2011年12月24日土曜日

診療報酬その後

診療報酬の争いですが、
「診療報酬本体」+1.379%「薬価・材料費」-1.375%=「診療報酬全体」+0.004%
というわけで、綱引きはど真ん中で決着したようです

この決着は、大局的な長期政策ではなく、民主党内部の政治的駆け引きという感じのようです


診療報酬プラス改定「最後は官房長官判断」- 安住財務相
 安住淳財務相は22日の閣議後の記者会見で、2012年度診療報酬改定の改定率が全体(ネット)で0.004%の引き上げで決着したことについて、「最後は(藤村修)官房長官にご判断いただいた。それはやむを得なかった部分もある」と述べた。

この官房長官ですが、まったく名を知らなかったので経歴をみたところ
2009年、ネクスト厚生労働大臣
2010年、菅第1次改造内閣で厚生労働副大臣(大臣は細川律夫)
というわけで、 野田グループではあるものの、立場的には野田内閣と民主党の中継役というところでしょうか
もしかしたらマニフェストの作成に関与していたかも知れません

で、この0.004%の評価ですが、


プラス改定「医療を守っていく姿勢示せた」- 小宮山厚労相
この政権として医療をしっかりと守っていくという姿勢は示せた」と述べた。一方、プラス改定となったことで国民負担が増加することについては、「国民の負担がどういう形でどこに使われて、それが今の医療の体系の維持にどう役立っているかを分かりやすく説明しないといけないが、安心してお産ができるようになったり、小児科医不足が解消したりすることに結び付くことが分かれば、納得していただけると思う」と強調した。

 日医原中会長、プラス改定は「95点」
 日本医師会は22日、緊急記者会見を開き、2012年度診療報酬改定の改定率が全体(ネット)で0.004%の引き上げで決着したことについて、医師の疲弊や地域医療の崩壊を食い止めるものと評価する見解を発表した。同会の原中勝征会長は、「(100点満点で)95点くらい」とプラス改定の実現に高い点数を付けた。
 日医の見解では、「医師の疲弊、産科医療・小児医療・救急医療など、地域医療の崩壊を少なからず食い止めるものと確信している」と診療報酬のプラス改定を評価。

0.004%アップ ネット上の声さまざま- 「財務省を押し返した」「横ばい」
 長妻昭・元厚労相は「今回の改定でもほんの少しプラスになり、医療立て直しの歩みを続けることができた」と評価。山井和則・元厚労政務官も「診療報酬は二回連続、政権交代のあと、ネットプラスとなり、マニフェストを実現できた」。
 厚労省の幹部は「数字の前の符号は大事なんです」と、小宮山洋子厚労相の成果を強調した。


なんつーか、自演乙wって感じです
日医も、原中氏も結局は政権べったりになって、とても専門家集団とは言えない有様です
これに対して、当たり前ですけど、世間の声は冷たいです


 ただ、一般の人たちの書き込みには、「そこまで小数点以下の改定率にするか。辛うじてプラスだけど、四捨五入すればプラマイゼロ?」「企業だとこんなの横ばいと言うんです」といった厳しい意見が目立つ。
 医療系業界誌のある記者は、「プラス改定ともとれれば、プラスマイナスゼロ改定ともとれ、長期収載品の引き下げ分を引けば実質はマイナス改定でもある。どうにでも解釈できる」とつぶやいた。


とまぁ、要は解釈次第でどうともとれる玉虫色の結果です

つーか、+0.004%っていくら増えるのよ?
医療費を40兆円(厚労相発表)として、0.004%っていくら?
ちょっと計算してみましょう
(4*10^13)×(4×10^-5)=16*10^8
16億しかねぇじゃん!


どうみても、横ばい以外のなにものでもないですね

これで「安心のお産」「小児科医不足対策」「地域医療崩壊阻止」ができると?
年末ジョークにしてはきついですねぇ


数字上の解釈はどうあれ、現場の現実はただ1つです
戦線が膠着状態であるならば、戦線維持という言い訳が立ちます
戦線が回復しつつあるならば、彼らが主張する通りでしょう
しかし、前回改訂で医療費を少々増やしたところで、状況は好転しましたか?しませんでしたね?
だって、自民党政権下では社会保障分野は毎年2200億円減ってましたから

この結論は、現在崩壊している戦線に援軍を送らないと言うことです

医療崩壊は、あと2年は続きますね

まぁ、2.3%引き下げを+-0にまで持ち込んだ長妻元厚労大臣には、お疲れ様でしたとは言っておきましょう
でも、ここで「まだ足りない」といえない当たりが、やはり派閥・官僚政治の限界なのでしょう

2011年12月18日日曜日

境界線上の診療報酬

昨今にしては珍しく、与党内でまったく意思統一が図れていない診療報酬のお話

まず、各陣営の現在の立場を明確にしましょう


1.厚労相
「本体切り込みはあり得ない」
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36225.html
小宮山洋子厚生労働相は16日の閣議後の記者会見で、2012年度診療報酬改定をめぐり来週から始まる閣僚折衝に臨むスタンスについて、「(診療報酬の)本体を切り込むということはあり得ない」と述べ、本体マイナスを主張する財務省をけん制した。
  小宮山厚労相は、診療報酬への基本的な考え方について、「診療報酬は本体と薬価があるが、薬価は下がる。その辺の見合いとかある。政策目的がきちんと達成できるような方向で、厚労省として当然、主張していく。命にかかわることなので、考えは貫いて各方面に説明する」と語った。

2.財務省
診療報酬本体下げ方針「来週も変わらぬ」- 安住財務相、「ネットプラス論外」
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36227.html
安住淳財務相は16日の閣議後の記者会見で、2012年度診療報酬改定での本体部分の改定率について、「さまざまな社会状況を勘案すれば、プラスにするのは難しい。その考えは来週になっても変わらない」と述べ、来週に予定している小宮山洋子厚生労働相との折衝でも引き下げを主張する方針を示唆した。診療報酬のネット(全体)でのプラス改定については、「論外」との認識を示した。
  安住財務相は、「経済界や労働組合、市町村、中小企業の意見を聞いているが、診療報酬を引き下げるべきだということを皆言っている。国民負担にも直結する」と指摘。さらに、「医療環境を改善するため、わが党もこの1、2年大変努力してきた。経営の改善が見られた病院も数多くある」と述べ、引き下げ方針の正当性を強調した。

3.民主党(座長=長妻昭衆院議員
診療報酬の改定率、「前回以上」を
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36237.html
決議文は、▽診療報酬本体とネットで、10年度改定を下回らない報酬の引き上げ▽急性期の医療機関への継続的な対応と、在宅療養の充実を目指した中小病院、有床診療所などへの一層の対応▽医薬品産業の成長を阻む要因となる長期収載医薬品の過重な引き下げや、原価割れ問題への対応▽現状の介護報酬水準に加え、介護職員処遇改善交付金分(2%)以上の報酬引き上げ▽7区分に再編される介護報酬の新たな地域区分の見直しについては、現行報酬より引き下がる地域が発生しない対応-の5項目。
厚生労働省との折衝で財務省側は、12年度の診療報酬改定の改定率に関して、本体部分を1%程度、先発医薬品の薬価を10%程度それぞれ引き下げるよう求めており、決議文はこれをけん制したものだ。
梅村聡副座長によると、この日の会合に出席した36人の議員のうち、9割がプラス改定を目指す方向性に賛同したほか、薬価の大幅な引き下げに懸念を示す声も多かったという。
 09年に閣議決定された新成長戦略では、20年度までに医療・介護分野で280万人の新規雇用の創出を掲げているが、報酬の引き下げでは働き手を増やすことが困難なため、プラス改定を目指す方向で一致。野田佳彦首相(当時財務相)自身が党代表選前、「基本的にマイナス(改定)はない」と発言していることから、それを守るよう求める意見もあった。





さて、まず三者の立場ですが、これが少々面白いものとなっています


右派:民主党
左派:財務省
中道右派:厚労省

であり、党と厚労省の本来の位置が逆転しています
というわけで、これだけみると長期目標としては厚労相と民主党は一致しており、党と厚労省は診療報酬引き上げで一致しており、財務省が孤立しているようにも見えますが、発言内容を慎重に見ると、実は孤立しているのは民主党になっています



…と、その前に解説を少し挟みましょう
まず、「診療報酬」には狭義と広義があります

「狭義の診療報酬」はここで言われている「本体」、つまり医行為に対する診療報酬で
「広義の診療報酬」は「医行為+薬価」です


で、ここで本題に戻ります
民主党は「広義の診療報酬=医療費」upを要求していますが、
厚労相は「狭義の診療報酬」keepにしか言及しておらず、「広義の診療報酬」については沈黙によってdownを認めているのです
よって、厚労相と財務省=内閣は診療報酬downで一致していると言えます


実は財務相の発言は「平行線戦術」であり、議論をしていません(故に今回のブログのタイトルとなっていますw)
これは、時間切れによる没交渉を狙う交渉戦術です
…ええ、戦術です。断じて戦略ではありません
これは「議論を行わないこと=時間稼ぎが勝利条件」であるときにのみ使われる必勝戦術です
(ちなみに、今週それを双方意図的にやっているのが野田首相とイ・ミョンバク大統領だったりします)


また、厚労相が用いているのは「前提のすり替えによる誘導」です
狭義において相手と自分は一致しているようにみせて、実は広義においては対立関係であるわけです
要は、詐欺師の戦略です
この状況に陥ると議論はまず平行線となるため、平行戦術の前準備としても使えます
(また、終わらない議論がしばしば発生するのは、意図せずに「前提のすり替え」が行われていて、広義で一致しても狭義で対立していることに気づいていないということがほとんどです)

今回の最低なところは、自民党下の財務省ですら、医療費国亡論という仮説を用いて長期戦略として診療報酬削減を国是としたのに対し、現財務相は来週のことにしか言及せず、長期戦略を盲目にすることで診療報酬削減を目指していることです


これに対する正道は、議論のゴールを相手に要求し続けることで、長妻氏は正解です
ただし、この正道は決着をつけることを双方が求めている場合にしか有効ではありません
財務相と厚労相がやっている議論の拒否は、ディスカッションとしては負けない(ただし勝てない)戦術ではありますが、末期の自民党政権ですら診療報酬upを目指さざるを得ないくらいに疲弊した医療現場に対して、この時間稼ぎは敗北条件以外の何者でもありません
というか、野田内閣は福祉国家として敗北することを勝利条件にしている…としか考えようがありません


結局のところ、この診療報酬の議論は、実は内閣と民主党の対立が1つの形を伴って表面化しただけのモノと言えます
今回は、「官僚政治をぶっ壊す民主党」と「財務官僚主義の首相」の対立と言えるでしょう
最近、鳩山氏や小沢氏が野田首相叩きに急に躍起になっているのをみれば明白ですが、TPPを期に、内閣の親中対米から親米対中路線への切り替えは表面化しました
診療報酬についても、まだ場外戦が発生する可能性があります


ただ、現場の意見として1つ言わせてもらうなら、「医療の充実」を行うのであれば民主党方針しかありえません
医療費というのは軍事費と同じで、相対的に同じレベルを維持するなら自然増するものです
診療報酬を維持するだけでも、国際比較では医療は後退しているのです
診療報酬引き下げともなれば、医療レベルの後退は必至です
そして、一度後退したものを再度引き上げるには、実現不可能と思えるほどのコストを覚悟する必要があります
つまり、診療報酬を引き下げるのであれば、「医療に対してもうなにも求めない」ことが前提として必要であり、それこそ「国民感情」に反するものであります

内閣には、是非ともまず、最終目標を示して頂きたいものです