2010年12月11日土曜日

箱は開かれた

朝日がんワクチン騒動、事前情報通り中村氏らが朝日を名誉毀損で訴えました。

がんワクチン報道で朝日新聞を提訴、東大医科研・中村教授ら
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/31331.html

これに対する朝日の「反論」は相変わらず意図的としか思えないほど歯車がかみ合ってないのですが
http://www.asahi.com/health/news/TKY201012080427.html
この先は裁判所でのバトルになるので、今回は朝日がんワクチン騒動の方をやろうと思ってたんですが、予定変更して時間外訴訟の続報に行きたいと思います。


奈良県の時間外労働訴訟が最高裁までもつれ込んだことは前回書きましたが、その後、全国でこれに呼応するかのような報道がされました


東大病院など違法超過勤務、是正勧告8回
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101208-OYT1T00155.htm
京都府立医大 残業代3億円支払わず
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20101207059.html
(岩手)県立病院、違法時間外労働22年 労使協定結ばず
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101208_2
和歌山県立医大病院が残業割増分6000万円未払い
http://www.asahi.com/job/news/OSK201012060123.html

他にも報道されてるかも知れませんが、フォローできたのはこれだけです
大学3件、自治体病院1件ですが、興味深いのは労基署はこれらに「以前から」是正勧告をしていたと言うことです
つまり、違法状態は認識していたが、手は出せなかったということでしょうか?
特に大学の場合、人事院が「見て見ぬふり」をしていた問題に、独法化を機に労基署が「大学病院といえども例外ではない」と踏み込んできたと言うことでしょうか?

奈良県の行き先次第では、ビッグバンが起こる可能性は充分にあると言うことです
(もっとも、一票の格差論争にみたいに延々訴訟が続く可能性の方が大ですが)

さて、ここで各病院の言い分を聞いてみましょう
まずは各ブログで既に散々叩かれてる東大ですが

 同大によると、是正勧告を受けたのは、付属病院が4回、医科研が2回、医学部と研究協力部が各1回の計8回。うち付属病院の未払い賃金額は約7457万円と全体の7割以上を占めた。04年以降、ほぼ毎年勧告を受け続けており、労基法違反が常態化していた。
 労使協定で定めた時間外労働の上限は、急患対応や入試などの特別事情を除き月45時間。しかし、職員や上司が、時間外労働として報告すべき残業を「自主研究」と勘違いして報告しなかったりして、正確な勤務状況を把握していなかったという。同大は未払い分を全額支払い済みだが、「勧告を誠実に受け止め改めて周知徹底する」(同大本部広報課)としている。


とんでもねーくらい開き直ってますなw
しかも東大のいう「全額」というのが本当に「全額」であるわけはないでしょう
時間外労働が月45時間で済んでると誰が信じます?(「急患対応」って便利な言葉ですよねw)
仮にこの言い分が正しいとしてもですね、
研究は労働時間ではないって『大学』でありながら何言ってるんでしょうか?
東大ですら研究者は減少していると騒がれていますが、東大ですらこういう状態で、日本の医学研究が発展すると本気で思っているんでしょうか?




次、京都府立医大


 大学によると、医師と同病院の間で時間外労働に関する協定がなく、2007年12月と09年10月に当直手当以外の賃金が支払われていないとして是正勧告を受けた。大学側は08年4月の法人化以降の時間外労働のうち、約1億6000万円をすでに支払い、残りも本年度中に支払うという。
 大学は「09年12月に時間外労働に関する規約をつくり、現在は適正に支払っている」としている。

「規約」の内容が非常に気になるところですが、情報不足すぎてあまり突っ込めませんが、医師に1億6000万払ったのなら、マシな方なのでしょうか?


次、和歌山県立医大病院


 大学総務課などによると、2009年6~8月、医師や職員の超勤手当を払っていなかったとして同年10月に是正勧告を受け、283人に計5617万円を支給した。紀北分院(同県かつらぎ町)も08年11月に是正勧告を受け、82人に計414万円を払った。
 同病院では、外来患者への対応や緊急手術などの際は超勤手当を支払っているが、それ以外の時間は当直手当のみとしている。現在も運用は変えていないといい、担当者は「直ちに運用を変えると経営が立ちゆかなくなる。今後の対応は決まっていない」と話している。

どうやら、奈良県と運命を共にすると言うことだそうです
最後、岩手県立病院

 県医療局によると、36協定は今年3月30日に再締結され、違法状態は解消した。医師を除く残業の上限時間は1カ月20時間、年間240時間とした。 5月1日現在の医療局職員は4742人で、管理職約120人を除く約4600人が36協定の対象となる。


医師は?
ねぇ、医師は??  


来週は学会のため休刊するかも知れませんが、次回はよほど大事件が起きない限りは
「モチベーション3.0からみた日本の医療の変化」を
考察したいと思います

2010年12月5日日曜日

パンドラの箱となった奈良県時間外労働裁判

先日の

バグだらけの医療体制と当直問題高裁判決
http://firstpenguindoc.blogspot.com/2010/11/blog-post_21.html

の続きです
奈良県の産科医が訴えた「『医療法上の当直』は時間外勤務か」を争う裁判、高裁は「『医療法上の当直』=『労基法上の当直』ではない」という働く側からすれば当たり前の、しかし画期的な判決を出しました

これに対して奈良県はどうしてくるかと思いきや、ネット医師の期待を裏切らず、最高裁まで持って行ってくれましたw
まずは奈良県の言い分を確認しましょう


時間外手当裁判、奈良県が上告したわけ
「奈良県だけの問題ではない、上級審に慎重な判断を求めたい」
2010年12月1日 橋本佳子(m3.com編集長)
 「この裁判では、(訴訟の対象となっている)2004年、2005年当時のことを争っているわけだが、その後、医師の処遇改善などを行った。しかし、大阪高裁判決は、現在の体制でもまだ不十分ということになる。また医師の労働環境を守ることと、地域住民の健康生命を守ることは、ジレンマに陥ることでもある。今回の判決を踏まえると、県では対応が困難であり、厳しい医師の労働環境、全国の救急医療の状況、医師の需給状況などの現実的な状況、さらにはこの判決が社会に与える影響を踏まえた上での慎重な判断を上級裁判所に求めたい」
 奈良県医療政策部長の武末文男氏は、11月30日の記者会見でこう説明した。同県は、奈良県立奈良病院の二人の産婦人科医が、未払いだった時間外手当(時間外・休日労働に対する割増賃金)の支給を求めた裁判の大阪高裁判決を不服とし、上告期限の30日、最高裁に上告した。


内容としては、前回指摘したのと以下同文の問題のすり替えですね
奈良県が何を言おうが、36協定なしにただ働きさせていた事実は変わりません
奈良県の主張は、36協定結んで全力でそれを遵守して金を払ってた病院が、労基署に労働時間を突っ込まれて初めて言って許される話です

しかし、最高に傑作なのは

医師の労働環境を守ることと、地域住民の健康生命を守ることは、ジレンマに陥ることでもある

という一言ですね
徹夜明けの思考力は飲酒状態に匹敵するという論文を引用して、医療安全上ありえないっていうか、むしろ地域住民の健康リスクになりかねないとか展開しようかと思いましたが、冷静に考えればそこまでする必要もない話でした
何故か毎度毎度「ただし医師は除く」のマジックで誤魔化されそうですが、このセリフを他業種に当てはめてみると非常にあり得ない話であることがわかります


派遣社員の労働環境を守ることと、企業の成長を守ることは、ジレンマに陥ることでもある
地域住民の生活環境を守ることと、企業の成長を守ることは、ジレンマに陥ることでもある 



とか言うセリフを経団連や内閣が言ったらどうなりますか?
まぁ誰かは腹を切ることになるでしょう
たった一言で奈良の医療に止めを刺しかねない魔術ですが、医療崩壊の聖地の名は伊達ではありませんでしたね…

日本医療の最大の間違いは、医療者も管理者も、医療と医師を同一視していることです
医師は医療の行為者ではありますが、それだけです

「医師法」として医師に義務づけられていることと、
「医療法」として都道府県や医療機関に義務づけられていることと、
「労働基準法」として雇用者に義務づけられていることと、
この3つは明確に区別して理解しなければなりません
医療というシステムに要求されていることを、医師という個人に背負わせるのは恥だと知るべきです



しかし、今回奈良県が最高裁に持ち込んだのは、本当にパンドラの箱としかいいようがありません
7月に、小児科医の中原氏が過労の末に鬱となり自殺したのを労災認定と病院の責任を求めて起こされた裁判で、高裁は労災を認めながらも病院の責任は認めず、最高裁で和解させた件を思い出しました
http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/

恐らく、最高裁はこの時と同じようなロジックで来ると思われますので、別のところでした分析を引用します


最高裁までもつれ込んだ、小児科医過労自殺事件の民事裁判ですが、 かろうじて遺族敗訴は免れた…というところでしょうね
この手の話は、私の担当チームの先生が当時30代で夜勤中に過労死されてるので全く他人事じゃないんですが、 医師側の絶対的な基準で言えば「ふざけるな」という結論ですね
700万というところに反応される方も多いようですが、私が問題にしたいのは別のところです
まず、一審や二審の判定を継続して遺族敗訴にしなかったのは、流石に最高裁はそこまでバカではなかったと言うことでしょう
医師が法曹界にぶち切れてるのは流石に理解されてるようで、ここは大野病院事件以来の流れと見ていいかも知れません
しかし、では、何故「和解」なのか?
最高裁が本当に和解条項にあるように労基署の過労死認定を追認するのなら、「和解」である必要はなかったのです
本気で「過重な勤務条件の改善」に取り組ませたいのなら、遺族の逆転勝訴にするべきだったのです
でも、そうはしなかった
恐らく、「過労に伴う鬱病の自殺は使用者責任」という『最高裁判例』をつくるわけにいかなかったのだと思います
これは、医師だけでなく、一般の労働者にも適応されますからね
また、和解案に「医師不足や医師の過重負担を生じさせないことが国民の健康を守るために」とあることも気にかかります
確かに、現在の医師の労働時間は過労死ライン平気でこえてますからね
今の医師数で「過労死ラインを下回る労働環境」を最高裁が義務化すれば、「医師不足」に拍車がかかる(正確には表面化する)のは事実です
そこまで計算して「和解」に持ち込んだのであれば、最高裁としては可能な限りの妥協点であると言えるでしょう
しかし、妥協は所詮、妥協でしかないのです
結局のところ、この和解案は
「医師は生かさず殺さず使え」
という現状を追認したものに過ぎません
この和解は最悪ではないが、ただそれだけで、誰も救いません
つまり、現在のサボタージュ型地域医療崩壊は、これまで通り続くということです
医師だって、自分のことを考えない人のために、殉死なんてしたくはありませんから


最高裁としては、奈良に対してだいぶはらわた煮えくりかえってるんじゃないでしょうか?
法的には高裁判決に準じるほかありませんが、そうなれば当然地域病院は「これまで存在しないことにされていたコスト」を処理しなければならなくなります
そうなると、受診抑制を打ち出すしかないわけですが、CTAS(http://jsem.umin.ac.jp/ctas/index.html)など含めたシステム論ができる人間が最高裁にいるとは思えませんから、何言い出すかまったく想像ができません

最高裁が同じロジックで来るなら、やはり和解を狙うでしょうが、医師サイドは今回は地裁・高裁と勝ち進んできてるので、いまさら妥協してやる必要はありません
かといって、ここで逆転判決だせば問答無用で全国の医師の反発を招くこととなり、中原氏の裁判で和解にした意味がありません
どう転んでも、甚大な影響が出る判決になるであろうことは想像に難くありません


ところで、なんでここまでこじつけてまで奈良県の往生際が悪いか…と思っていたんですが、中原氏の記事を見つけたときに、すっかり忘れていた記事を偶然発見しました


産科医当直は違法な「時間外」…奈良県を書類送検

 奈良県立奈良病院(奈良市)に勤務する産科医の当直勤務は違法な時間外労働に当たるうえ、割増賃金も支払っていないとして、奈良労働基準監督署が、同病院を運営する県を労働基準法違反容疑で書類送検していたことがわかった。
 同病院は昨年4月、産科医2人が当直勤務に対して割増賃金の支給を求めた民事訴訟の奈良地裁判決で、計1540万円の支払いを命じられ、控訴審で係争中。公立病院の医師の勤務実態に関して、刑事責任を問われるのは異例という。
 捜査関係者らによると、同病院では、産科医らが当直中に分娩(ぶんべん)や緊急手術など通常業務を行っているが、病院は労基法上は時間外労働に相当するのに割増賃金を支払っていなかったうえ、同法36条に基づき、労使間で時間外労働や休日労働などを取り決める「36協定」も結ばず、法定労働時間を超えて勤務させた疑い。
 昨年4月の民事訴訟判決で、奈良地裁は「当直の約4分の1の時間は、分娩や緊急手術など通常業務を行っている」などとして、医師の当直勤務を時間外労働と初めて認め、割増賃金の支払いを命じた。判決後の同9月、県外に住む医師が県を労基法違反容疑で告発し、奈良労基署が調査を進め、今年5月に送検した。
 県は2004年から、36協定締結について労組側と協議したが、現在まで協定は締結されていない。ただし、県は06年の提訴後、2万円の当直手当に加え、当直中の急患や手術の時間に応じて割増賃金を支給し、当時5人だった産科医を7人に増員するなどの措置を取っている。
 武末文男・県医療政策部長は「書類送検されたことを重く受け止めており、協定をできるだけ早いうちに結びたい。割増賃金については、引き続き県の主張を説明する」としている。
 県立奈良病院は1977年開院。病床数は430床で、内科、外科、小児科など16の診療科がある。
(2010年7月9日10時58分 読売新聞)


要するに、奈良県の医療担当者と県知事は、労基法違反で刑事裁判(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)に問われているわけです(実は奈良県の医療がどうこうじゃなくて、単に我が身かわいさの悪あがきじゃなかろうか…)
この続報を聞いた覚えがないので、最高裁判決まで起訴を引っ張るつもりでしょうか?
労基署が何を考えているのかはわかりませんが、既に奈良県に退路は断たれていたわけですね
これが立件されれば、全国の知事に累が及ぶことになるわけです(公立病院の独法化が進みそうだな…)

根本的な解決策が提示されない限り、誰かが血を見る羽目になるのは間違いなさそうです

2010年11月29日月曜日

自治体病院の家計簿

病院、特に自治体病院は非常に経営が大変なことは周知の通りですが、その実態を象徴する事件がありました



診療報酬2億円返還へ 八戸市民病院

 青森県八戸市民病院は26日、看護師配置の算定などに不備があったとして、2007年9月~08年8月の診療報酬計約2億317万円を返還すると発表した。東北厚生局と青森県による特定共同指導で過大請求が判明した。
 市民病院によると、返還する診療報酬は健康保険組合など保険者分が6818件の約1億9310万円、患者分は2615人、4461件の約1007万円。
 市民病院は入院患者7人に対し看護師1人を配置する「7対1看護」に基づき、診療報酬を請求している。本来は外来施設扱いの「急患室」を入院施設と解釈し、同室で診療を受けた患者を入院患者として診療報酬を算定するなどしたため、東北厚生局から「算定要件を満たしていない」と指摘を受けた。
 保険者には今後発生する保険料と相殺し、患者には口座振り込みなどで返還する。
2010年11月27日土曜日


要は、外来ベッドを入院ベッドとして申告することで、外来ナースの一部を入院患者用ナースとして「7:1看護」としていたってことでしょうか?
非常にわかりにくい記事(というか、この手の記事はわかってない人間が書くからさらに意味不明になる…)ですので推測でしかありませんが、単年度分だけで6818件、約2億円相当ですから、多分間違ってないとは思うのですが?
2008年9月以降の記載がないのは、調査中なんでしょうか?

しかし、これ「返還する」で済まされちゃうのが病院ですよね…
普通の企業でこんなのやったら「詐欺容疑」とかつくと思うのですが?
いくらサイフが厳しくたって、嘘ついて金取ったり、払うべき給料を払わない(NARAとか)とかしたら、それはれっきとした「犯罪」ですので、皆さんご注意を

さて、この市民病院ですが、何度か聞き覚えある名前だし、なんか比較的最近聞いたことあるような気がしたんでググってみたらこんな記事出ました



2010年8月21日(土)
八戸市民病院が黒字転換/09年度

 八戸市民病院は20日、2009年度事業会計の概要を発表した。診療など病院事業の収支を示す収益的収支は、入院・外来収益の増加などにより2億5947万円の黒字となり、1997年に現在の田向地区に移転新築して以来初の黒字を計上した。累積赤字は前年度比1.9%減の132億3330万円となった。
 入院・外来患者の診療収入などによる事業収益は約145億円で、前年度比6.2%の増。延べ患者数は入院が同1.8%増の約19万2千人、外来は同10.2%増の約21万5千人だった。
 また、市一般会計からの繰入金が前年度を12.4%上回る約19億3千万円だったことも事業収益の増加につながった。
 一方、給与費などの事業費は約142億4千万円で前年度比2.8%の増。医師が前年度から11人増え83人となったことで給与費が増え、患者数の増加により診療に伴う材料費も増加したが、各種燃料に使う重油の値段が前年度に比べて安値で落ち着いたことなどから経費が削減され、事業費全体の伸び率を抑制できた。
 同病院管理課の担当者によると、単年度黒字の計上は「移転新築直前の95~96年度以来ではないか」という。今後の経営の推移については「新築から13年がたち、MRIやCTなど老朽化した設備の更新に取り組む必要がある。楽観視できる状態ではなく、引き続き健全経営に取り組みたい」と説明した。


なんていうか…その、黒字化はいいんですけど、
「入院・外来収益の増加」
ってのは真っ当な手段での増加なんでしょうか?
去年も同じことやってたなら、違反分返還したら赤字転落じゃね?
1匹見ると~と疑ってしまいますが、まぁそこは追求しようがないので置いといて、それよりも突っ込むべきところがあります

「市一般会計からの繰入金が前年度を12.4%上回る約19億3千万円だったことも事業収益の増加につながった。」

ということですが…えーと、ここでちょっと解説入れましょう
実は、病院の「収入」には、いわゆる「補助金」が組み込まれてます
つまり、この文章はぶっちゃけるなら、「ママからお小遣い多くもらえたから財布の中身が増えた」っていってるだけです
具体的に計算すると、市からのお金は08年度が17.1億で09年度が19.3億………黒字分の84%が繰越金の増額じゃないですか?!
自治体病院が自治体にとってどれだけ金食い虫かよくわかりますが、
これを「黒字転換」といっていいんでしょうかねぇ?

まぁ、色々努力↓はされてるみたいですけど?



市民病院「診療費納入通知書・領収書」への広告を募集
http://www.city.hachinohe.aomori.jp/index.cfm/14,4868,71,html

2007年3月22日(木)
八戸周辺自治体で協議を/病院で格差料金

 八戸市民病院は、七月一日から個室の入院室料や分娩(ぶんべん)料を市民と市外の患者で格差をつけることになった。県内の自治体病院では初めての試み。果たして、患者に料金格差を設けることが中核自治体病院になじむのか、大きな問いを発している。
 同病院の考え方は、八戸市民は税金を繰入金として同病院に毎年入れており、それと応分の金額を市外の利用者にも負担してもらおうというものだ。
 病院建設費や高度医療機器整備の償還金などを含め、八戸市の一般会計からは、年間およそ二十億円が同病院事業に投入されている。それは同病院事業収入の15%を占める。
 今回の個室入院室料の割り増し分も、それに合わせ15%に設定した。市民と“同率”の負担を市外患者にもという理屈だ。分娩料は料金改正で全体が値上げされるため、市外患者の負担は10%に抑えたという。



なんというか、たくましいというか、なりふり構わず収入を増やそうという病院(というか、経営者の市?)の姿勢というか執念が見えます
きれい事だけで病院経営できる時代ではないのは事実ですが、一つ、疑問がわきますよね?
例年赤字だったとしても、そもそも、なんで132億もの累積赤字抱え込むことになったの?ってことです

こういうときの「主犯」って、たいていが病院建築費だったりしますが、この病院の建設費用は…あれ?正式な金額出てこないな?300億とかいう噂もあるけど、それだと1床あたり5100万?とかいう自治体病院でも最高クラスの金額になるが、あり得ない金額じゃないですね(ちなみに民間は1床あたり1000~1500万です。自治体病院は何故か3000~5000万になる)
…おや?なんか検索に引っかかりました


http://ja.wikipedia.org/wiki/大島理森
政策秘書が公共工事
2002年に、政策秘書が公共工事などに絡み数千万円の口利き料を得ていたとの疑惑が浮上した。政策秘書は八戸市民病院や八戸赤十字病院、JR八戸駅駅舎のほか町村などの工事にも絡み、「営業手数料」などの名目で口利き料を得ていたとされる[14]。事務所は「本人からは『心配ない。きちっと対応したい』という連絡があった。事務所としての対応もこれから詰めていく」とコメントしていたが、2003年3月の農林水産大臣辞任へと繋がった


…あれ、普通に病院の収支の考察するはずだったのに、なんでこんな香ばしいネタばかり引っかかるんだろ(-_-)



おまけ
初期臨床研修に向けてのメッセージ
http://www.hospital.hachinohe.aomori.jp/sb.cgi?cid=18

ん???
またネタみたいな香ばしい文章が並んでますが、なんか記憶に引っかかるな…
うに?

ウニ丼無料の日をつくったら研修医増えたっていう病院ってここか?!!!

2010年11月21日日曜日

バグだらけの医療体制と当直問題高裁判決

医師の当直問題について、とうとう画期的な判決が出ました


産科医の当直、時間外支払い命じた一審支持 大阪高裁
http://www.asahi.com/national/update/1116/OSK201011160074.html
2010年11月16日23時54分

 産婦人科医の夜間や休日の当直勤務が労働基準法で定められた「時間外手当」の支給対象になるかが争われた訴訟で、大阪高裁の紙浦健二裁判長は16日、対象になると判断して奈良県に計約1540万円の支払いを命じた一審・奈良地裁判決を支持し、原告・被告双方の控訴を棄却した。
 原告は奈良市の同県立奈良病院に勤める産婦人科医の男性2人。各地の病院の産婦人科医の多くも同じ問題を抱えているといい、代理人の藤本卓司弁護士は「高裁レベルで支給対象と認められたのは初めてで、産婦人科医療に影響を与える可能性がある。問題の背景には産婦人科医の絶対的な不足があり、数を増やすための国の対応が求められている」と話している。
 高裁判決によると、2人は04~05年に210回と213回の当直をこなし、1人は計56時間連続して勤務したケースもあった。これに対し県は「当直は待機時間があり、勤務内容も軽い」として時間外手当の対象外と判断。当直1回につき2万円を支給した。
 紙浦裁判長は、産婦人科医不足で県立奈良病院には県内外から救急患者が集中的に運ばれ、分娩(ぶんべん)件数の6割以上が当直時間帯だったと指摘。当直勤務について「通常業務そのもので、待機時間も病院側の指揮命令下にあった」と判断した。緊急時に備えて自宅待機する「宅直勤務」は時間外手当の支給対象と認めなかったが、「繁忙な業務実態からすると過重な負担で、適正な手当の支給などが考慮されるべきだ」と述べた。
 武末文男・同県医療政策部長は判決後に県庁で記者会見し、「判決に従えば夜間や休日の診療が困難になる。国に労働環境改善と救急医療の両立を図れる体制作りを要請したい」と述べ、上告についても検討するとした。県側は2人の提訴後の07年6月以降、県立病院の医師が当直中に治療や手術をした場合、その時間に限って時間外手当を支給する制度を導入している。(平賀拓哉、赤木基宏)


この判決の少し突っ込んだ内容については…私がどうこう言うより、m3の解説から抜粋させて頂きましょう


 判決の論旨は明確で、(1)就業規則上は「宿日直」の扱いだが、実態は異なり、労働基準法41条3号の規定の適用除外の範囲を超える(「宿日直」に当たらず、時間外手当の支払い対象となる)、(2)救急患者や分娩などへの対応など、実際に診療に従事した以外の待機時間も、病院の指揮命令系統下にあることから、時間外手当の支払い対象になる、というものだ。
 判決では、(1)について、2002年3月19日の通知(厚生労働省労働基準局長通達基発第0319007号)を引用し、宿日直とは「構内巡視、文書・電話の収受または非常事態に備えるもの等であって、常態としてほとんど労働する必要がない勤務」とした。県が2007年6月から9カ月間について調査したところ、通常勤務(救急外来患者への処置全般および入院患者にかかる手術室を利用しての緊急手術など)の時間は、宿日直勤務時間の24%だった。
 (2)について県側は、「時間外手当を支払う対象となる労働時間は、社会通念上の一定の線引きの下に、必要と判断される所要時間と考えるべき」と主張していたが、判決では「宿日直勤務の開始から終了までの間」と判断された。
 結局、2004年10月26日から2005年12月31日までの間で、A医師が認められた時間外の労働時間は、宿直1372時間30分、日直271時間15分、B医師は宿直1418時間15分、日直297時間30分。時間外手当の算定基礎額は、月額給料に、調整手当、初任給調整手当、月額特殊勤務手当を加えた額とされた。


高裁が医師の「当直」は労基法上の「当直」とは異なるという判決を出した初めての判決で、非常に画期的な内容となっています
ですが、法解釈自体は以前から医療者や法曹界から指摘されていた通りで、特に画期的なモノはありません
それどころか、この判決にも2つの欠陥があり、私はネット医師の歓喜の声ほど楽観はできません


第一の問題は、この「当直」が「時間外勤務に相当する」とした根拠が、「当直時間中の通常勤務割合」とされているところです
非常に明快なロジックで、法の趣旨に照らせばそうなりますが、もし具体的な数字をあげて
「当直時間のうち、通常の勤務が~%を超えた場合は時間外勤務とみなす」
というような基準ができてしまったらどうなるでしょうか?

当直が「当直」なのか「時間外勤務」なのかは、勤務が終わってみないとわからないことになります
消防隊員に、「今日は火事がなかったから、お前ら今日は給料なしだ」と言う人はいるでしょうか?
前線の軍人に「今日は襲撃がなかったから、お前ら今日は給料なしだ」と言えばどうなりますか?
後は野となれ山となれとなることは容易に想像されるでしょう
士気の上でも運用上の問題でも、かなりあり得ないことになります


若干話はそれますが、先日の事業仕分けでも、これと同じ過ちを犯しています


 「診療報酬改定で対応可能」とされた事業は、「特定の診療科に従事する医師等への手当支給」で、救急勤務医支援事業(救急医に対して宿日直のたびに最大1万9000千円程度の手当を支給)、新生児医療担当医確保事業(NICUへ入室する新生児を担当する医師に対し1万円の手当てを支給)、産科医等育成支援事業(後期臨床研修で産科を選択する医師に対し月額5万円の手当てを12カ月支給)など。


診療報酬のみで対応すると言うことは、患者が来たことに対する出来高払いしかしないということであり、
「今日は救急車が来なかったから、救急診療部の収入0」ってことです
救急が不採算部門となる元凶はここにあります


今回の高裁判決と事業仕分けは、医療体制に対する無理解という、同じ病理を抱えています
国の、インフラとしての医療に対する金は払わないと言う姿勢を、今回の高裁判決は婉曲的に認める内容にもなりかねないのです
必要なのは「労働の対価としての給与が適切に支払われているか」ではなく、それ以前の「何をもって医療と呼ぶか」ではないでしょうか?


第二の問題は、この判決は給与体系のみに言及しており、労働体系そのものへの言及はされていないと言うことです
宿直を時間外勤務としてカウントした場合、これを可能な限り遵守する方法としては、現状では病院ごとの機能分化と患者制限しかありえません
しかし、これは応召義務(医師法)との兼ね合いがネックになります

「医師法」として医師に義務づけられていることと、
「医療法」として都道府県に義務づけられていることと、
「労働基準法」として雇用者に義務づけられていることと、
現在パラドックスに陥ってしまっているこの3つの整合性をどうとるのか

 という問題にぶち当たります
ここのところがデバッグされない限り、類似の裁判がいくつも続くことになるでしょう

まあ、なんにせよ
当直を時間外勤務と認めると労基法違反になるから認めるわけに行かない、とか全国に発信しちゃう奈良県の医療担当者の不用心さが、やっぱり奈良は奈良だったと全国の医療者に思わせたことだけは間違いないでしょう

2010年11月13日土曜日

メディアの驕り:朝日がんワクチン報道

とうとう朝日が詳細な反論文を出してきました



これに対しては、すでに以下の反論が行われています

Vol. 346 大丈夫か朝日新聞の報道姿勢 II
http://medg.jp/mt/2010/11/vol-346-ii.html#more

Vol. 348 がんワクチン報道に関し、朝日新聞社に対し迅速な真相究明と説明を求めた
http://medg.jp/mt/2010/11/vol-348.html#more


まぁ、基本的にはご指摘の通りですが、正直言って、詰めが甘いかと思います
というわけで、朝日の反論記事を滅多切りにしてあげましょう


記事で朝日新聞が最も伝えたかったことは、薬事法の規制を受けない臨床試験には被験者保護の観点から改善すべき点がある

という冒頭の文ですが、ここからしてすでに突っ込みどころ多彩です
まず、問題の発端の記事を確認して頂きたいのですが(http://firstpenguindoc.blogspot.com/2010/10/vs.html)
根本的な問題として、今回の反論記事を書いた大牟田記者は、問題の記事を書いた記者ではありません。よって、問題記事の目的を説明する人物としては不適当であると言わざるを得ません

また、朝日が本当に臨床試験の制度上の不備を訴えたかったのなら、問題の記事はこの様な文章構成になるでしょうか?
もし制度上の問題を問うのであれば、記事の焦点はペプチドワクチンではなく薬事法と臨床試験であるべきです。
清水氏のこれまでの反論にあるように、


この議論は今回の医科学研究所の例を引くまでもなく成り立つことです。


もしあくまで制度上の不備を問う記事であると言い張るつもりならば、朝日新聞の日本語力に重大な問題があると言わざるを得ないでしょう

さらに、朝日新聞は医科研や中村教授、清水所長は「法的に正しい行為をしている」と言うことを承知でこの文面を書いたことになります。であるならば彼らに不当な責を問うのはやはり言いがかりであり、朝日は名誉毀損の罪科から逃れることはできないでしょう



患者はその後、いったん退院しました。問題の根管ではないので詳述はしませんでしたが、がんワクチンの臨床試験では必ず消化管出血が起きる、あるいは、命に関わる副作用が出ると報じようとしたわけではありません
さて、これについても前と以下同文なんですが、なぜ問題記事を書いたわけではない大牟田記者が「~と報じようとしたわけではありません」などと説明するのでしょうか?これもやはり問題の記事を書いた本人が説明するべき問題です

さらに、朝日が連呼している「重篤な有害事象」ですが、単なる風邪で入院が長引いても制度上は「重篤な有害事象」に相当することを説明をせずに「消化管出血という重篤な有害事象が発生した」と書けば読者が誤解をすることは容易に想像できることです。マスメディアがこれをやったのでは、意図的なミスリードではないかと思われても仕方ないでしょう
こうした不作為は、報道では罪として問われないのでしょうか?


被験者保護を考えれば、同種のワクチンをつかう多施設にも伝えるべきでした
とか書いてますが、この記者は、朝日によって「共同施設」とされた医療機関からの抗議文を読んでいないのでしょうか?
記事に書かれた症例以前に、「消化管出血はワクチンとの関連性は極めて低い」という結論が出されているのですが?
もしその上で医科研が、(実際には共同研究ではない施設に)消化管出血の情報を流したなら、それは「風邪の患者が風邪薬を飲んだら咳が出た」というようなものであり、余計な混乱を招く(もしくは医科研の能力が問われる)行動でしかないでしょう
それとも、朝日はこの結論を覆すような情報を医科研が隠蔽していたという情報でもお持ちなのでしょうか?

私は実父と義父をともにがんで失いました~
なんか、こっからフォローもしようがないくらい小学生の作文になってるんですが…
個人的な感想文が「被験者保護する仕組み必要」という見出しをつけた記事の半分って、正気ですか?
正直言って、朝日新聞東京本社科学医療部門の能力に重大な疑念があると言わざるを得ません

がんって、30年前から日本人の死亡原因一位の疾患で、日本人の3割がこれで死ぬんですが?
自分はがん患者の遺族だから何を言っても許されるとでも言いたいのでしょうか?
というか、この大牟田記者は問題の記事を書いた記者ではないのですが(以下略
 

朝日新聞はこれからも患者や研究者などの多様な意見を報じていきます
そういうのなら、その「意見」とやらを無加工で本人の了承を得た上で掲載するべきです。取材を受けた人のセリフや患者会の声明を自分の都合のいいように切り貼りするな



とまあ記事の直接的な問題点をあげましたが、結論として、この記事はをお涙頂戴で問題
記事の問題点をすり替えようとしているとしか評し得ません

確実にわかってやってるのでしょうが、医療機関や患者会からの声明に対して、一つもまともに回答してません
医療機関からの「基本的な事実誤認」や「捏造疑惑」の指摘については触れられてすらいませんし、
患者会からの「誤解を招く報道をするな」という声明も以前の記事では削除されていたばかりでなく(http://firstpenguindoc.blogspot.com/2010/10/blog-post_3366.html)、今回の反論記事では「報道の趣旨ではない」の一言で切り捨ててます



これが、マスメディアのすることでしょうか?


朝日は医療機関と患者会からの信頼を完璧に失いました
そして、そのフォローをする気がないことが今回の記事ではっきりしました
この問題、恐らく、朝日が泣いてごめんなさいと言うまで尾を引くでしょう
殲滅戦は継続が決定しました
次戦は、中村教授の名誉毀損訴訟でしょうか?

2010年11月8日月曜日

違うところのいつもの光景

先週は医療ネタがあまりなかったのでどうしようかと思ったのですが、介護の方から気になるネタが挙がってきました


賛否両論の「お泊まりデイサービス」 厚労省の狙いは規制強化か
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/61c4773a30f89c54b361396e045f0580/page/1/

 介護を受けている高齢者が日中を過ごすデイサービス(通所介護)。電動ベッドなどの福祉用具レンタルや訪問介護とともに、最も普及している介護保険サービスの一つだ。このデイサービス事業所内の静養室や居間を用いて夜間に高齢者を宿泊させる新サービスの創設をめぐり、賛否両論が渦巻いている。
 論争が勃発したのは8月下旬だ。8月23日の社会保障審議会介護保険部会で厚生労働省が配布した資料に「お泊まりデイサービスの創設」という文言が突如、登場。審議会出席者から反対論や慎重論が相次いだが、同30日付の2011年度予算の概算要求で、「家族介護者支援(レスパイトケア)の推進」として「100億円」が盛り込まれた。
 家族の介護疲れ解消や冠婚葬祭などの急用に対応するために、通い慣れたデイサービス事業所がお年寄りを一時的に預かるサービスに対する潜在的な需要は大きい――。厚労省はこうした考えに基づき、予算要求を掲げた。破格ともいえる100億円は、全国に8000ベッド分(2000カ所)を宿泊用として確保するための設備改修費用(スプリンクラーの設置など)として投じる。
 ところが、こうした方針に反対や懸念の声が続出した。


国試受かったばかりだというのに、どうもこの高齢者福祉制度は複雑怪奇で理解できませんが、どうやら利用者からのニーズが高いので、お手軽なデイサービス(日帰りサービス)で宿泊もできるようにしようという話のようです
…いや、ショートステイの敷居を下げればいいんじゃないの?と当然の突っ込みが沸いて出るわけですが、どうやらデイケアでいつもお世話になってる人のところで泊まれると言うことが肝のようです。
一見美談のようですが、結局は設備的にも人的にも「昼も夜も働け」と言ってるだけなわけで、介護士にも「名ばかり当直」が降りかかるのでしょうか?
まぁ、とりあえず専門化の方々の反対理由を抜粋しましょう


「介護保険内のサービスとして宿泊の単価が点数化された場合、多くの利用者は限度額を超えてしまい、宿泊どころか通所も制限されかねない。その結果、認知症高齢者の在宅生活を支えてきた拠点を潰す結果になりかねない」
 地域密着型のスタイルで訪問介護と通所介護、宿泊という三つのサービスを提供している「小規模多機能型居宅介護」の事業者からも反対論が続出。「サービス間の整合性が取れなかった場合、(職員配置や設備基準が相対的に厳しい)小規模多機能型の存立は困難になる」
「利用日数の制限や高い設備基準が設けられた場合には、制度に乗れない」
新サービス導入とともに小規模通所介護の報酬引き下げが行われた場合、打撃を被る可能性がある。



えー、専門というか、経営側の方々のおっしゃることを要約すると
「介護保険の総額上げずに新サービス導入は、既存サービスの価格切り下げにつながり、既存の介護システムに危険が及ぶ」
ってことの様です。医療界じゃ「いつものこと」ですが、まぁ、厚労省なので同じスキームを導入しようとして、いつも通り反対くらってるという日常の光景のようです

とりあえず、介護士の待遇改善とか、福祉を成長産業にするとかいう話とは逆行しそうな感じです

役人というのは自分のセクションの中で無理にどうにかしようとするから、全体システム無視して小手先の仕様変更すると全体がバグるということがわからないんでしょうか?


それにしても、こんなことに設備改修費用100億ってすごい予算の金額つきましたね
民主党が「今年は医療費アップしたぜ!」って叫んでる、医療費増額分がちょうど100億ですよw
まぁ、エコカー減税5837億円にくらべれば端金かも知れませんがw、この100億投入で儲かるのって、誰?土建屋?

2010年10月31日日曜日

編集権はどこまで許されるか:朝日がんワクチン報道

ところで、癌ワクチン報道に関する重大な朝日の恣意的な記事がもう一つありました。
これについては既に以下の指摘されていました。

Vol. 332 大丈夫か朝日新聞の報道姿勢
医療ガバナンス学会 (2010年10月24日 06:00)  
東京大学医科学研究所・教授
清木元治
2010年10月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
平成22年10月15日の朝日新聞朝刊に東京大学医科学研究におけるペプチドワクチンの臨床試験についての報道があった。これに対して、10月20日に41のがん患者団体が厚生労働省で記者会見を開き、我国の臨床試験が停滞することを憂慮するとの声明文を公表した。朝日新聞は翌日21日に、"患者団体「研究の適正化を」"と題する記事(朝刊38面)を書いている。 
この記事が記者会見の声明文の真意を伝える報道であれば朝日新聞の公正な立場が評価されるところだが、よく読んでみると声明文の一部分を削除して掲載することにより、声明の意図をすり替えているように読める。
声明文の一部をそのまま掲載すると:
「臨床試験による有害事象などの報道に関しては,がん患者も含む一般国民の視点を考え,誤解を与えるような不適切な報道ではなく,事実を分かりやすく伝えるよう,冷静な報道を求めます。」 
  全文は
  http://pancreatic.cocolog-nifty.com/oncle/2010/10/37-3925.html
  http://smiley.e-ryouiku.net/?day=20101019
  http://lohasmedical.jp/blog/2010/10/37.php
ところが朝日記事の声明文説明では:
「有害事象などの報道では,がん患者も含む一般国民の視点を考え,事実を分かりやすく伝えることを求めている。」となっており、 なんと「誤解を与えるような不適切な報道ではなく」の部分が削除されている。
本来の声明文は、臨床試験を行う研究者・医師、行政関係者、報道関係者に向けられており、特に上記に相当する部分では報道に対して「誤解を与えるような不適切な報道」を慎んでほしいとの切実な要望が述べられている。
科学論文の世界では、事実の一部をなかったことにして解釈を意図的に変えることを捏造と呼んでおり、この捏造の定義に異論を唱える人はないだろう。朝日新聞の10月15日から始まった一連の関連記事を読むと、実際の事実関係と書きぶりによって影響を与えようとしている目的との間に大きなギャップを感じざるを得ない。社会に対して大きな権力を持ち責任を担う朝日新聞の中で、急速に報道モラルと体質の劣化が起こっているのではないかと思わせられ大変心配になる。「医療や臨床試験の中では人権保護が重要だ」と主張している担当記者の人権意識は、単にインパクトある大きな記事を書く為の看板であり、最も根幹である保護されるべき対象が欠落しているのではないかと思わせられる。
             (2010年10月22日)




これについては、朝日がネットにアップしてないためにあまり大きな騒動になってないですが、今回問題の新聞記事の画像を入手したので、アップします。


これは二枚とも癌ワクチン報道に対する患者会の声明を報道した朝日記事です。
読んで頂ければ、清水教授のご指摘の通りであることがすぐに確認できます。

なぜ記事の写真が二枚あるかですが、上が北陸の版で、下が東京の版です
両方とも朝日記事なので中の文章は一字一句同じですが、なぜか見出しに変更が加えられてます
北陸版は声明の最初の国に対する声明(朝日報道による研究予算削減に対する牽制と思われます)を見出しにしていますが、東京版では研究施設に対する二番目の声明を見出しに採用しています

しかし、通常の日本語読解能力を持ってすれば、患者団体の声明の主目的は清水教授が指摘されたように

・臨床試験による有害事象などの報道に関しては、がん患者も含む一般国民の視点を考え、誤解を与えるような不適切な報道ではなく、事実をわかりやすく伝えるよう、冷静な報道をお願いします。
(患者団体の声明の3つ目。原文ママ)

であることは明らかで、なんと患者団体のマスコミに対する反論声明すら医療機関への攻撃材料に利用しています
これはもはや報道テロのレベルです

大野事件から始まった「対テロ戦争」はどこまで行くのでしょうか?

全面戦争:朝日がんワクチン報道

朝日癌ワクチン報道問題、もはや完全な殲滅戦へと変わりました…


まずは日本がん免疫学会の抗議文ですが


平成22年10月22日
日本がん免疫学会理事長 今井浩三
日本癌学会理事長 野田哲生

朝日新聞の「臨床試験中のがん治療ワクチン」記事(2010年10月15日、16日)には、東京大学医科学研究所で開発した「がんワクチン」を用いて同附属病院で行われた臨床試験に関して、大きな事実誤認に基づいて情報をゆがめ、読者を誤った理解へと誘導する内容が掲載されました。
その結果、ワクチン治療を受けておられる全国のがん患者さんに無用なご心配をおかけするとともに、今後の新たながん治療開発に向けた臨床試験に参加を希望される、多くのがん患者の皆様にも、多大なご迷惑をおかけする事態となっております。また、この記事は、がん患者さんに、より有効な治療を提供するべく懸命に努力している医療関係者、研究者、学生の意欲を大きく削ぐものであり、この分野での我が国の進歩に大きなブレーキをかける結果を招きかねません。
より良いがん治療の提供を最大の目的として設立され、活動を続けている学会としては、このような記事を容認することはできません。ここに朝日新聞に対して強く抗議するとともに、速やかな記事の訂正と患者さんや関係者に対する謝罪を含めた釈明を求めます。



で、ここまできてようやく朝日が動きました


医科研記事、癌学会など抗議 朝日新聞「確かな取材」
2010年10月24日3時2分

 日本癌(がん)学会の野田哲生理事長と日本がん免疫学会の今井浩三理事長は、東京大学医科学研究所が開発したがんペプチドワクチンを使った付属病院の臨床試験で起きた有害事象が、ペプチドの提供先である他の医療機関に伝えられていなかったことを報じた15、16日付朝日新聞朝刊の記事への抗議声明を両学会のホームページに掲載した。「大きな事実誤認に基づいて情報をゆがめ、読者を誤った理解へと誘導する」としている。
 朝日新聞社広報部の話 記事は、薬事法の規制を受けない臨床試験には被験者保護の観点から問題があることを、医科研病院の事例を通じて指摘したものです。抗議声明はどの点が「大きな事実誤認」か具体的に言及していませんが、記事は確かな取材に基づくものです。


がん免疫学会が具体的な突っ込みをしなかったのは明らかに失点なのですが、朝日はそれをいいことに意図的な誤謬をかましてくれてます
まず、

記事は、薬事法の規制を受けない臨床試験には被験者保護の観点から問題があることを、医科研病院の事例を通じて指摘したものです

となってますが、前回引用したの朝日一面記事をよく読んでも、どこにもそんな主張は書かれてません
よって、この反論は全く説明になってません
また、記事内容の担保も「確かな取材」の一言しか言及してません

この中途半端な朝日の反論文によって、医療サイドは完璧に堪忍袋の緒が切れました


まず、医療報道を考える臨床医の会が抗議署名を開始しました

http://medg.jp/mt/2010/10/news.html#more
朝日新聞社に適切な医療報道を求めます
  医療報道を考える臨床医の会
  http://iryohodo.umin.jp/
   発起人代表 帝京大学ちば総合医療センター 小松恒彦


さらに10/29に、朝日が「医科研は情報提供をするべきだった」とした「情報を受ける側」であり、医科研の被害者として書かれた共同研究施設が共同で朝日の社長と人権委員会に抗議文を出しました
http://iryohodo.umin.jp/pressrelease20101029.pdf

長いので勝手に要約しますが、
1.今回の報道内容にあるワクチンについては我々は「共同研究施設」ではない。あれは医科研の単独試験であり、我々は情報を提供される立場にない
2.消化管出血はいつものこと
3.消化管出血の事例はそもそも2008年に別の症例ですでに情報共有され、ワクチンとは極めて関係が低いとの結論が出ている
4.内部調査では朝日の報道にあるような回答をした関係者は存在しなかった。よって朝日の記事は捏造と結論づけるよりほかない

ええと、もっとわかりやすく要約するなら、
朝日が反論記事で『抗議声明はどの点が「大きな事実誤認」か具体的に言及していませんが』
と書いたため、朝日報道的には『被害者』であるはずの「共同研究施設」が懇切丁寧にどの点が「大きな事実誤認か」を指摘したうえで、朝日の記事を真っ正面から全面否定したということです
 
人権委員会にまで提出された以上、朝日はこれに何らかの回答をせねばならず、もはやだんまりを決め込むことは不可能です
この上に、同日に日本医学界も声明を発表しました。これまでの抗議文で最もわかりやすく説明しているので全文引用します

http://jams.med.or.jp/news/014.html
「事実を歪曲した朝日新聞がんペプチドワクチン療法報道」
平成22年10月29日
日本医学会
会長 髙久史麿

 2010年10月15日の朝日新聞朝刊1面に、『「患者が出血」伝えず 臨床試験中のがん治療ワクチン 東大医科研、提供先に』と題する記事が掲載されました。
 記事は、東京大学医科学研究所附属病院での「がんワクチン」臨床試験中に、膵臓がんの患者さんに起きた消化管出血が、「『重篤な有害事象』と院内で報告されていたのに、医科研が同種のペプチドを提供する他の病院に知らせていなかった、また医科研病院は消化管出血の恐れのある患者を被験者から外したが、他施設の被験者は知らされていなかった、と報じるものでした。一般の読者がこの記事を読まれた場合、「東大医科研が、臨床試験でがんワクチンが原因の消化管出血が生じているにもかかわらず、他の施設に情報を提供せず隠ぺいした」という印象をお持ちになられると思います。
 しかし医学的真実は異なります。医科研病院が情報隠蔽をしていたわけではありません。
 まず、この臨床試験は難治性の膵臓がん患者さんを対象としたものであり、抗がん剤とがんワクチンを併用したものでした。難治性の膵臓癌で、消化管出血が生じることがあることは医学的常識です。当該患者さんも、膵臓がんの進行により、食道からの出血を来していました。あえて他の施設に消化管出血を報告することは通常行われません。さらに、この臨床試験は医科研病院単独で行われたものであり、他の施設に報告する義務はありませんでした。以上から、医科研病院が情報隠蔽をしていたわけではないことがわかります。
 さらに記事には問題があります。それは、日本のトップレベルの業績を持つ中村祐輔教授を不当に貶める報道内容であったことです。
 2010年10月15日の朝日新聞社会面は、「患者出血「なぜ知らせぬ」ワクチン臨床試験協力の病院、困惑」「薬の開発優先批判免れない」となっています。本文中では、中村祐輔教授が、未承認のペプチドの開発者であること、中村教授を代表者とする研究グループが中心となり、上記ペプチドの製造販売承認を得ようとしていること、中村教授が、上記研究成果の事業化を目的としたオンコセラピー・サイエンス社(大学発ベンチャー)の筆頭株主であること、消化管出血の事実が他の施設に伝えられなかったことを摘示し、「被験者の確保が難しくなって製品化が遅れる事態を避けようとしたのではないかという疑念すら抱かせるもので、被験者の安全よりも薬の開発を優先させたとの批判は免れない」との内容が述べられています。
 しかしながらこの記事の内容も誤っています。中村祐輔教授は、がんペプチドワクチンの開発者ではなく、特許も保有しておらず、医科研病院の臨床試験の責任者ではありません。責任を有する立場でない中村祐輔教授を批判するのは、お門違いであり、重大な人権侵害です。
 この記事の影響により、関係各所のみならず多くの医療機関に患者さんやご家族からの問い合わせが殺到しました。
 新たな治療法や治療薬の開発は、多くのがん患者さんにとって大きな願いです。しかしながら、誤った報道から、がん臨床研究の停滞や、がん患者さんの不安の増大が懸念されます。
 以上の理由により、日本医学会は日本癌学会ならびに日本がん免疫学会の抗議声明を支持します。


いつの間にか、大野病院事件を超える規模のメディアVS医学会・患者会連合の全面戦争へと発展してきました
あまりの事態に、朝日以外のメディアは中立…というよりは、朝日を若干切る方向の経過記事を出しています


これに対して朝日がどう反論してくるのか、非常に楽しみになって参りました

2010年10月23日土曜日

癌ワクチン報道を巡る朝日VS患者会

朝日のおごりに対して、医療界のすさまじいカウンターアタックが繰り広げられましたので、時系列を追ってまとめたいと思います。

まず、発端と鳴った問題の朝日の1面記事ですが


東大医科研でワクチン被験者出血、他の試験病院に伝えず
2010年10月15日3時1分

 東京大学医科学研究所(東京都港区)が開発したがんペプチドワクチンの臨床試験をめぐり、医科研付属病院で2008年、被験者に起きた消化管出血が「重篤な有害事象」と院内で報告されたのに、医科研が同種のペプチドを提供する他の病院に知らせていなかったことがわかった。医科研病院は消化管出血の恐れのある患者を被験者から外したが、他施設の被験者は知らされていなかった。
 このペプチドは医薬品としては未承認で、医科研病院での臨床試験は主に安全性を確かめるためのものだった。こうした臨床試験では、被験者の安全や人権保護のため、予想されるリスクの十分な説明が必要だ。他施設の研究者は「患者に知らせるべき情報だ」と指摘している。
 医科研ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔教授(4月から国立がん研究センター研究所長を兼任)がペプチドを開発し、臨床試験は08年4月に医科研病院の治験審査委員会の承認を受け始まった。
 朝日新聞の情報公開請求に対し開示された医科研病院の審査委の議事要旨などによると、開始から約半年後、膵臓(すいぞう)がんの被験者が消化管から出血、輸血治療を受けた。医科研病院はペプチドと出血との因果関係を否定できないとして、08年12月に同種のペプチドを使う9件の臨床試験で被験者を選ぶ基準を変更、消化管の大量出血の恐れがある患者を除くことにした。被験者の同意を得るための説明文書にも消化管出血が起きたことを追加したが、しばらくして臨床試験をすべて中止した。
 開示資料などによると、同種のペプチドを使う臨床試験が少なくとも11の大学病院で行われ、そのすべてに医科研病院での消化管出血は伝えられていなかった。うち六つの国公立大学病院の試験計画書で、中村教授は研究協力者や共同研究者とされていたが、医科研病院の被験者選択基準変更後に始まった複数の試験でも計画書などに消化管出血に関する記載はなかった。
 厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」は「共同で臨床研究をする場合の他施設への重篤な有害事象の報告義務」を定めている。朝日新聞が今年5月下旬から中村教授と臨床試験実施時の山下直秀医科研病院長に取材を申し込んだところ、清木元治医科研所長名の文書(6月30日付と9月14日付)で「当該臨床試験は付属病院のみの単一施設で実施した臨床試験なので、指針で規定する『他の臨床研究機関と共同で臨床研究を実施する場合』には該当せず、他の臨床試験機関への報告義務を負いません」と答えた。
 しかし、医科研は他施設にペプチドを提供し、中村教授が他施設の臨床試験の研究協力者などを務め、他施設から有害事象の情報を集めていた。国の先端医療開発特区では医科研はペプチドワクチン臨床試験の全体統括を担う。
 厚労省は朝日新聞の取材に対し「早急に伝えるべきだ」と調査を始め、9月17日に中村教授らに事情を聴いた。医科研は翌日、消化管出血に言及した日本消化器病学会機関誌(電子版)に掲載前の論文のゲラ刷りを他施設に送った。論文は7月2日に投稿、9月25日付で掲載された。厚労省調査は今も続いている。
 清木所長は論文での情報提供について「朝日新聞の取材を受けた施設から説明を求められているため、情報提供した」と東大広報室を通じて答えた。(編集委員・出河雅彦、論説委員・野呂雅之)


記名記事で一面報道とはずいぶん気合いの入っていることですw
他紙も後追い報道をしていますが、なぜ朝日のみが悪とされたかというポイントは主に二つです


1.出血の発生原因および報告義務に対する根本的な事実誤認
2.中村教授や清水所長の名をほぼ一方的に上げており、今回の一連の事実に対する確認・説明を怠っている



ちなみに、翌日の毎日記事と比べていただければ、「鬼の首を取ったような」朝日と、意外と冷静に事実確認している毎日との差異が明らかです
どうも、朝日は医科研ネガティブキャンペーンでもはろうとしてたんじゃないかという感じですね


東大医科研病院:がんワクチン投与の1人が出血 提供施設に伝えず

 東京大医科学研究所(清木元治所長)は15日、医科研病院で08年に実施した「がんペプチドワクチン」の臨床試験で、ワクチンを投与した膵臓(すいぞう)がん患者1人が消化管から出血を起こしていたと発表した。医科研は出血を「重篤な有害事象」と判断して院内倫理委員会に報告したが、ワクチンを提供した国内約30の医療機関にこの事実を伝えていなかったという。
 がんペプチドワクチンは、がん細胞だけを攻撃する特定のリンパ球を体内で活性化させる治療法。開発した医科研がワクチンを全国の医療機関に提供し、食道がん、大腸がんなどで臨床試験が実施されている。
 医科研によると、患者は投与開始から2カ月後の08年12月、消化管から出血したため中止。患者は小康状態となり退院したが、入院期間が約1週間延びたため、厚生労働省の臨床研究倫理指針に基づき院内の倫理委員会に「重篤な有害事象」として報告した。患者は退院の約1年後、がんで死亡。同じ試験に参加していた5人に異常は見られず、試験は昨年5月に終わった。
 ワクチン提供先の医療機関に知らせなかった理由について医科研は「医科研病院が単独で実施した臨床試験で(他施設に)報告義務はない。以前実施された共同研究で同様の症例があり、情報は既に共有されていると考えた」と説明する。
 消化管出血は膵臓がんに見られる症状で、医科研は「ワクチン投与と出血との因果関係を100%否定はできないが、出血はがんによるものとみられる」としている。【河内敏康、佐々木洋】

毎日新聞 2010年10月16日 東京朝刊


まぁ、そもそも、ある程度の深度で医療に関わったことのある人間なら、膵癌のペプチドワクチンで消化管出血って聞いて、真っ先に副作用だと思う人はいないと思いますけどね…


これに対して、一方的に槍玉に挙げられた医科研もだまっておらず、反撃に転じます


東京大学医科学研究所・教授 
清木元治
2010年10月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2010 年10 月15 日付朝日新聞の1 面トップに、「『患者が出血』伝えず 東大医科研、提供先に」(東京版)との見出しで、当研究所で開発した「がんワクチン」に関して附属病院で行った臨床試験中、2008 年に膵臓がんの患者さんに起きた消化管出血について、「『重篤な有害事象』と院内で報告されたのに、医科研が同種のペプチドを提供する他の病院に知らせていなかったことがわかった」と野呂雅之論説委員、出河雅彦編集委員の名前で書かれています。また、関連記事が同日39 面にも掲載されています(その他には、同夕刊12面、16 日社説、36 面)。特に15 日付朝刊トップの記事は、判りにくい記事である上に、基本的な事実誤認があり、関係者の発言などを部分的に引用することにより事実が巧妙に歪曲されていると感じざるを得ません。判り難くい記事の内容を補足する形で、更なる解説を出河編集委員が書いているという複雑な構図の記事です。この構図を見ると、記事の大部分を占める医科学研究所の臨床試験に関するところでは、何らかの法令や指針の違反、人的被害があったとは述べられていないので、記事は解説部分にある出河編集委員の主張を書く為の話題として、医科学研究所を利用しているだけのように思えます。しかし、一般の読者には、「医科学研究所のがんワクチンによる副作用で出血があるようだ。それにもかかわらず、医科学研究所は報告しておらず、医療倫理上問題がある」と思わせるに十分な見出しです。なぜこのような記事を書くのか理由は判りませんが、実に巧妙な仕掛けでがんワクチンおよび関連する臨床試験つぶしを意図しているとしか思えませんし、これまで朝日新聞の野呂論説委員、出河編集委員連名の取材に対して医科学研究所が真摯に情報を提供したことに対する裏切り行為と感じざるを得ません。「事実誤認」関連は医科研HPに掲載する予定ですが、以下のような「取材意図/取材姿勢」にも問題があると考えますのでので、これから述べたいと思います。

その1:前提を無視して構図を変える記事づくり
記事の中では、ワクチン投与による消化管出血を重大な副作用であるとの印象を読者に与えることを意図して、医科学研究所が提供した情報から記事に載せる事実関係の取捨選択がなされています。まず、医科学研究所は朝日新聞社からの取材に対して、「今回のような出血は末期のすい臓がんの場合にはその経過の中で自然に起こりうることであること」を繰り返し説明してきました。それと関連して、和歌山県立医大で以前に類似の出血について報告があったことも取材への対応のなかで述べています。これらは、今回の出血がワクチン投与とは関係なく原疾患の経過の中で起こりうる事象であることを読者が理解するためには必須の情報です。しかし、今回の記事ではまったく無視されています。この情報を提供しない限り、出血がワクチン投与による重大な副作用であると読者は誤解しますし、そのように読者に思わせることにより、「それほど重要なことを医科学研究所は他施設に伝えていない」と批判させる根拠を意図的に作っているという印象を持たざるを得ません。
事実、今回の記事では「消化管出血例を他施設に伝えていなかった」ということが最も重要な争点として描かれており、厚生労働省「臨床研究に関する倫理指針」では報告義務がないかもしれないが、報告するのが研究者の良心だろうというのが朝日新聞社の主張です(16 日3 面社説)。その為には、今回の出血が「通常ではありえない重大な副作用があった」という読者の誤解が不可欠であったと思われます。このことは「他施設の研究者」なる人物による「患者に知らせるべき情報だ」とのコメントによってもサポートされています。
進行性すい臓がん患者の消化管出血のリスクは、本来はワクチン投与にかかわらず主治医から説明されるべきことです。取材過程で得た様々な情報から、出河編集委員にとって都合のよいコメントを選んで載せたと言わざるを得ません。

その2:「報告義務」と「重篤な有害事象」の根拠のない誤用
単独施設の臨床試験の場合でも、予想外の異変や、治療の副作用と想定されるような事象があれば、「臨床研究に関する倫理指針」の報告義務の範囲にかかわりなく、速やかに他施設に報告すべきでしょう。しかし、日常的に原疾患の進行に伴って起こりうるような事象であり、臨床医であれば誰でもそのリスクを認知しているような情報については、その取り扱いの優先順位をよく考慮してしかるべきだと考えます。煩雑で重要度の低い情報が飛び交っていると、本来、監視すべき重要な兆候を見逃す恐れがあります。この点も出河編集委員・野呂論説委員には何度も説明しましたが、具体的な反論もないまま、報告する責務を怠ったかのような論調の記事にされてしまいました。「重篤な有害事象」とは、「薬剤が投与された方に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごとであり、当該薬剤との因果関係については問わない」と国際的に定められています。また、「重篤な有害事象」には、「治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの」が含まれており、具体的には、風邪をひいて入院期間が延長された場合でも「重篤な有害事象」に該当します。このことも繰り返し説明しましたが、記事には敢えて書かないことにより「重篤な有害事象」という医学用語を一人歩きさせ、一般読者には「重篤な副作用」が発生したかのように思わせる意図があったと感じざるを得ません。実際に、この目論見が当たっていることは多くの人々のネットでの反応を見れば明らかです。

その3:インパクトのあるキーワードの濫用
本記事を朝刊のトップに持ってくるためのキーワードとして、人体実験的な医療(臨床試験)、東京大学、医科学研究所、ペプチドワクチン、消化管出血、重篤な有害事象、情報提供をしない医科研、中村祐輔教授名などはインパクトがあります。特に中村教授については当該ワクチンの開発者であり、それを製品化するオンコセラピー社との間で金銭的な私利私欲でつながっているとの想像を誘導しようとする意図が事実誤認に基づいた記事のいたるところに感じられます。中村教授はペプチドワクチン開発の全国的な中心人物の一人であり、一面に記事を出すにも十分なネームバリューがあります。しかし、本件のペプチド開発者は実は別人であり、特許にも中村教授は関与していません。臨床試験に必要な品質でペプチドを作成することは非常に高価であるために、特区としてペプチド供給元となる責任者の立場です。これらの情報も、取材過程で明らかにしてきたにもかかわらず、敢えて事実誤認するのには、何か事情があるのでしょうか。

その4:部分的な言葉の引用
朝日新聞の取材に対する厚生労働省のコメントとして「早急に伝えるべきだ」との見解が掲載されています。しかし、「因果関係が疑われるとすれば」というような前置きが通常はあるはずであり、それを削除して引用することにより、医科研の対応に問題があったと厚生労働省が判断したかのようミスリードを演出した可能性があります。

以上のように、朝日新聞朝刊のトップ記事を書くために、医科学研究所では臨床試験の被験者に不利益をもたらす重大な事象さえ他施設に伝えることなく放置しているというストーリーを医科学研究所が提供した情報の勝手な取捨選択と勝手な事実誤認を結び付けることにより作ったと考えざるを得ません。これほどまでしなければならなかった出河編集委員の目的は何なのでしょうか?それが解説として述べられている出河編集委員の主張にあると思われます。出河編集委員はこの解説を1 面で書きたい為に、医科学研究所で不適切ながんワクチンの臨床試験が行われたという如何にも大きな悪があるというイメージを仕立て上げなければならなかったのではないかと想像します。解説部分では、臨床試験では法的な縛りがないので、患者に伝えられるべき重要な副作用情報が開発者の利害関係によって今回の医科学研究所の例に見られ得るように患者や医療関係者に伝えられないことがあるということを主張し、だから一律に法規制を掛けるべきだという、彼の従来の主張を繰り返しています。適否は別にして、この議論は今回の医科学研究所の例を引くまでもなく成り立つことです。しかし、医科学研究所の臨床試験に対する創作的な記事を書くことにより、医科学研究所の臨床試験のみならず我が国の医療開発に対して強引な急ブレーキを掛けようとしているだけでなく、標準的な治療法を失った多くのがん患者さんが臨床試験に期待せざるを得ない現在の状況をまったく考慮していません。このことは自らがん患者である片木美穂さんのMRIC への投稿<http://medg.jp/mt/2010/10/vol-325.html#more>に的確に述べられていると思います。
今回の朝日新聞の記事を見るとき、かなり昔のことですが、高邁な自然保護の主張を訴えるために自ら沖縄のサンゴ礁に傷つけた事件があったことをつい思い出してしまいます。
今回、傷つけられたのは、医科学研究所における臨床試験にかかわる本当の姿であり、医療開発に携わる研究者たちであり、更には新しい医療に希望をつなごうとしている全国の患者の気持ちです。
法規制論議についてはマスコミの取材と記事についても医療倫理と同様のことが言えるのではないかと思います。沖縄の事件のように事実を捏造して記事を書くのは論外ですが、事実や個人の発言をいったんバラバラにして、あとで断片をつなぎ合わせる手法を用いればかなりの話を創作することは可能です。これらも捏造に近いと思いますが、許せる範囲のものからかなり事実と乖離したグレーなものまであるでしょう。しかし、新聞記事の影響は絶大であり、これで被害が及ぶ人たちのことを考えればキッチリと法的に規制をかけて罰則を整えないと、報道被害をなくすることはできないと言う意見も出てきそうです。しかし、そういった議論があまり健全でないことは言うに及びません。社会には法的な規制がかけにくい先端部分で新しい発展が生まれ、人類に貢献し、社会の健全性が保たれる仕組みとなることも多々あります。無論そこでは関係者の高いモラルと善意が必要であることは言うまでもありません。
今回の報道では、新しい医療開発に取り組む多くのまじめな研究者・医師が傷つき、多くのがん患者が動揺を感じ、大きな不安を抱えたままとなっている現状を忘れるべきではないでしょう。朝日新聞は10 月16 日に、「医科学研究所は今回の出血を他施設に伝えるべきであった」という社説をもう一度掲げて、「研究者の良心が問われる」という表題を付けています。良心は自らを振り返りつつ問うべき問題であり、自説を主張するためには手段を選ばない記事を書いた記者の良心はどこに行ったのでしょうか。また、朝日新聞という大組織が今回のような常軌を逸した記事を1 面に掲載したことが正しいと判断するのであれば別ですが、そうでなければ社内におけるチェックシステムが機能していないということではないでしょうか。権力を持つ者が自ら作ったストーリーに執着するあまり、大きな過ちを犯したケースは大阪地検特捜部であったばかりです。高い専門性の職業にかかわるものとして常に意識すべき問題が改めて提起されたと考えます。
朝日新聞に対しては今回の報道の十分な検証と事実関係の早期の訂正を求めたいと思います。

正直、ここまでは予想通りというか、「いつものこと」としか私は感じていませんでした
しかし、ここから予想外のことが起きました
学会の抗議声明よりも前に、患者団体(41団体連名!)がマスコミに反撃に出たのです


平成22年10月20日
がん臨床研究の適切な推進に関する声明文
がん患者団体有志一同

「がん患者は、がんの進行や再発の不安、先のことが考えられない辛さなどと向き合いながら、新たな治療法の開発に期待を寄せつつ、一日一日を大切に生きています」。2007年に胸腺がんで亡くなった故山本孝史参議院議員は、参議院本会議にてこう演説しました。日本では二人に一人ががんを発症し、三人に一人ががんで亡くなるといわれる中で、新たな治療法や治療薬の開発は、多くのがん患者にとって大きな願いです。
新たな治療法や治療薬の開発のためには、基礎研究から始まり、がん患者さんを対象にした治験や臨床試験など、長い研究過程が不可欠です。特に、がんの患者さんを対象にした臨床研究は、がんの治療成績の向上と治療の安全性の確認のために、重要な役割を担っています。現在のがん治療成績の向上は、多額のがん研究予算と、多くの研究者や医療者による尽力、そして臨床試験への多くのがん患者さんの尊い参画によって得られています。
治験や臨床試験では、一定のリスクがあることも忘れてはなりません。がん患者さんが参画する治験や臨床試験において、被験者の保護には十分すぎるほどの配慮が不可欠です。一方で、治験や臨床試験のリスクについては、正しい理解と適切な検証が必要であり、不確かな情報や不十分な検証に基づいて、治験や臨床試験のリスクが評価されるべきではありません。特に、東京大学医科学研究所の臨床研究に関する報道を受けて、当該臨床研究のみならず、他のがん臨床研究の停止という事態が生じており、がん臨床研究の停滞が生じることを強く憂慮します。
私たちは、がん患者の命を救うがん臨床研究の適切な推進に向けて、以下の声明を表明たします。


・がん患者の命を救うがん臨床研究が、適切に推進されるとともに、その推進にあたって必要な国のがん研究予算が、根拠とオープンな議論に基づいて拡充されることを求めます。
・がん臨床研究の推進にあたっては、臨床研究に参画する被験者の保護が、十分に行われること、被験者の保護については、情報が広く開示されるとともに、事実と客観性に基づいて、専門家によるオープンな議論と検証が行われることを求めます
・臨床試験による有害事象などの報道に関しては、がん患者も含む一般国民の視点を考え、誤解を与えるような不適切な報道ではなく、事実をわかりやすく伝えるよう、冷静な報道をお願いします。
以上

(※)なお、本声明の発表にあたっては、厚生労働記者クラブにおける記者会見を10月18日に要請したところ、記者クラブの当番社より「協議の末、お受けできない」との回答を得たことを申し添えます。


何よりも驚きなのは、患者団体のフットワークの軽さです
41もの患者団体が、朝日報道の3日後にはすでに記者会見の準備をできていたという事実に、今回の騒動の恐ろしさを感じました
普段ばらばらに活動している団体が、これだけの短期間に手を組み厚労省で記者会見を行うというのは、患者会に関わってる人間だからこそ「異例」だと思います
そして、患者会と関わりのある人間だからこそ言えることがもう一つあります
それは、患者会というのは自分や大切な人の存在をかけて活動をしている人が中心メンバーであり、絶対に正当性もなく敵にしてはいけないと言うことです
今回の朝日の言いがかりとも言える不用意な報道が、患者に不要な不安を与えたことに対する患者会の怒りを感じます

しかし、気になるのは患者会の要請を断った記者クラブですね
結局、日比谷クラブで会見を行ったようですが、私にはどうもこの辺の力学は門外漢でわかりませんが、なにがあったのでしょうね?
その辺に詳しい人がいらっしゃいましたら、こっそりお教え頂けないでしょうか?


今回の朝日の最大の読み違えは、この41もの患者団体を敵に回してしまったことでしょう
殺一警百という言葉がありますが、警告を受けたのは医療機関ではなく、マスコミの方でした

ちなみに、現在までに私が確認している限りでは医科研、患者会、学会の反論に対してマスコミはいかなる反応も示しておりません

2010年10月17日日曜日

経営者中心型社会

四国新聞が非常に興味深い記事を書いて下さいました



10月15日付・コンビニ診療
2010/10/15 09:18

 政府が昨年発足させた行政刷新会議。「規制・制度改革に関する分科会」の作業部会に37歳の医師が起用されることになった。部会には医学界の大御所など、そうそうたる委員が名を連ねる。そこにほぼ無名の若手医師が選ばれた理由は、「コンビニ診療」だった。
 東京都内のJR立川駅改札からわずか30秒の「ナビタスクリニック立川」の院長、久住英二医師。2008年にJR東日本の要望で駅舎内にクリニックを開設、平日の夜10時まで営業しており、通勤帰りのサラリーマンなどがコンビニ感覚で利用できる。
 06年に仲間と新宿駅西口の雑居ビルで実験的に、夜間まで診療を行う小規模な診療所を開設。平日夕方6時から夜間3時間の利用者が1日平均20人にも上ったことから、「コンビニ診療」のニーズを実感したという。
 今年2月、同クリニックを行政刷新担当相就任前の蓮舫氏が視察。日本のワクチン治療が欧米より遅れており、硬直的な医療行政の問題点を指摘する久住医師に蓮舫氏が熱心に耳を傾け、作業部会入りにつながった。
 医師不足が深刻化する一方、市民の生活スタイルの多様化に伴い、医療サービスへのニーズが変容する現代社会。「医療資源の適正配分が不可欠」と訴える久住医師は「夜間でも待ち時間が少なく、嫌な顔ひとつされずに受診できるコンビニ診療」の重要性を力説する。
 ただコスト負担などの問題も絡み、前途は不透明。「消費者中心型社会」実現の試金石として、しばし注目したい。(K)



そんな、ジムストライカーみたいな超限定運用前提の診療所が経営的にやってけるのかという問題については、勤務医開業つれづれ日記様が指摘されてますが、私は別の方面から切り込んでみたいと思います。


行政刷新会議に参加されることになった久住様ですが、実はMRICの方で連載をされてます
http://www.dr-10.com/column/index.php?ccid=45&PHPSESSID=28656baa6fbdc079540c55ab86d336a6
これらの連載を拝見する限りでは、非常に見識のある方のようで、新聞記事にあるように単純に夜間診療の充実を力説されてるとは思えませんが、久住様にしてもこの記者にしても、一つ陥穽があるように思います。


確かに夜間診療の需要はあるでしょう
しかし、そこで見ることができるのは、ぶっちゃけ風邪くらいでしょう
その程度であれば、「夜遅くまでやってるドラッグストアでアスピリンでも買って飲んで寝てろ」と言いたいのが勤務医の本音ではないでしょうか?
大学病院などに夜間救急で来られる方に対してさえ、血液検査すら「命に関わるかどうかの最低限」しか検査できません
「命に関わるから即入院or明日の朝~科に来て下さい」しか言えないのが夜間診療の現実です
ちなみに会計すら後日ですので


夜間診療中心で利益出すなら、ちょっとがんばって、合併症がない高脂血症や高血圧の薬をルーチンで出すくらいでしょうか?
まぁ、そんな薬をどこまで院内に置いておくのかって突っ込みはありますがね
夜間は検査部だけでなく、調剤薬局も閉まっていることをお忘れなく
医師だけで医療ができる時代は、もう終わってます


医療とコンビニの最大の違いは、コンビニは1人の学生のバイトで短時間に何人もさばけますが、医療は一人の患者の治療をするために医師・事務・コメディカル・ナースと何人ものプロが必要と言うことです
医療を他の業種に当てはめるなら、コンビニではなく料亭か旅館です。ホテルですらないんです



「医療資源の適正配分」を言うならば、医師もコメディカルも不足している中で、「昼と夜のどちらに重点的に配分するか」「夜間診療中心の診療所と地域中核病院のどちらに医師が必要か」という問題に、議論の余地はあるでしょうか?



そして、もう一つ問題があります
病院に通わなきゃいけないような人間が、病院に行けないくらい日中働きに行かなければならないという前提に、なぜ誰も根本的な疑問を持たないのでしょうか?
そんな、オイル漏れしている車を時速180kmで走らせながら修理するみたいなことを、日本人は機械に対してはしないのに人間には平気でします
「夜間診療という需要」は、記者の言うような「消費者中心型社会」ではなく、「経営者中心型社会」の証明です
日本の労働環境が間違っていることの証であり、社会病です
その社会病を肯定することは正しいのでしょうか?


厚労省は相変わらず医療部門と労働部門が分裂しているようですが(http://lohasmedical.jp/news/2010/10/16182036.php)、労働改善なくして厚生の改善はあり得ません
ワークシェアリング進めて、そこそこの給料だけども人間らしい生活を送るようになるだけで医療費減ると思うんですけど?


PS:ロハスメディカルのリンク記事に中医協で「救急に従事する医師等の範囲は不明確」ってなってますけど、救急に関与しない勤務医なんているんですかね?w

2010年10月12日火曜日

これから「労働力」の話をしよう

厚労省の医師2.4万人不足報道から日も経ち、だいぶ落ち着いてきたところで日医と全国医師ユニオンが対称的な声明を出したので紹介したいと思います

まず日医ですが声明の原文はこちら
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20101006_11.pdf
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20101006_12.pdf

報道では、日医は偏在を強調という内容ばかりが目立ち、そのことについてネットで批判されてますが、このpdf見るとそれらの報道や批判はいささか的外れと思わざるを得ません
日医の主張を要約すると
1.現在、医師数不足と偏在の二つの問題がある
2.医師不足数は日医の調査と厚労省の調査はほぼ同じ
3.しかし、2万数千人程度の不足なら、既に増員された定員で2020年には充足される
4.故に医学部新設は不要
5.というわけで残る問題は偏在です

という理屈なので、一応、筋は通ってるんですね
厚労省と日医の調査結果が100%信用できるなら、ですが…(厚労省の調査者が調査の不完全性を認めてるので、自然と結論も間違ってることになるのですがw)
これについては、既得権益の保護という目的はもちろんあるんでしょうが、それよりは厚労省へのゴマすりのようにも見えますねぇ

ちなみに医学部新設については、看護短大形式で各大学10名程度であればそれも可能でしょうが、日医の推測にあるような1学年120人とかはどう考えても無茶苦茶で、厚労省無視して強行しようとする文科省大臣は、ゴシップ見るまでもなく大学との「不適切な関係」を疑いたくなりますw
つーか、厚労省無視して医学部増やしても、国試合格者は絶対増えないのですがwここ、重要です


さて、一方のユニオンですが、原文はこちら
http://union.or.jp/30/2010107.html

言ってる事は前回の私の主張とほぼ同じですが、私が一つ見落としていたことが指摘されてます
今回の調査は、あくまで求人数ですので、
「すでに病院がない地域では必要医師数は0とされてしまう」
わけですね…いや、これは盲点でした
まあ、そういう地域に診療所はともかく病院を維持するべきなのかって別の議論はありますがw

で、日医とユニオンで対称的なのは、
日医:必要医師数は1.1倍 

VS 

ユニオン:必要医師数は1.5倍
ってとこですね。

これについては、私は明確にユニオンを支持します
理由ですが、皆さん以外と気づかれてないようですが、医師を1.1倍にしても労働力は1.1倍にならないですよ?だって、女性医師が増えますから
(という風に書くと勘違いされそうですが、別に私は女性蔑視ではありません。21世紀にもなって、子育てしながら働けない環境の方がおかしいのですが、それと計算は別問題として切り離します)
ちょっと計算しましょうか
日本の女性医師数は2004年で16.8%です。現在は、まぁ今は多少増えてるでしょうし、計算しやすいので下駄履かせて20%としておきます。しかし、今は医学生の男女比はそれどころではなく、半々に近づいています
現在の医師数をX、男性の労働力をA、女性の労働力を0.6Aとしましょう
現在の労働力はX×0.8×A+X×0.2×0.6A=0.8XA+0.12XA=0.92XAです

では将来、医師数が1.1Xになったとしましょう。男女比はもちろん半々です
1.1X×0.5×A+1.1X×0.5×0.6A=0.55XA+0.30XA=0.85XA

…おや?医師数は1.1倍になったのに、医師の労働力は低下してますね?

ではOECD並に医師数を1.5倍に増やしましょう
1.5X×0.5×A+1.5X×0.5×0.6A=0.75XA+0.45XA=1.2XA
これでやっと労働力が1.2倍になり、現在不足している労働力を何とか補えるレベルになりましたね


不足しているのは労働力です。単なる数の問題ではありません。それは決して間違えてはいけないのです
 そこのところに言及する医師組織が見当たらないのが非常に気がかりです…

2010年10月3日日曜日

これから「医師数」の話をしよう

マスゴミの方もあらかた沈静化したようですが、先日発表された「病院等における必要医師数実態調査の概況」について、落ち着いて原本を使って分析してみましょう
今回はレトリックが多用されてますので気をつけて下さい

まず、アブストラクトですが

病院等における必要医師数実態調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000ssez.html

本調査は、全国統一的な方法により各医療機関が必要と考えている医師数の調査を行うことで、地域別・診療科別の必要医師数の実態等を把握し、医師確保対策を一層効果的に推進していくための基礎資料を得ることを目的としたものであり、厚生労働省が実施した調査としては初めてのものです。
調査の概況は以下の通りです。今後、「病床規模別の必要求人医師数」などを分析し、年内を目途に詳細な調査結果を公表する予定です。
なお、本調査の結果は、医療機関から提出された人数をそのまま集計したものです。

【調査対象】
全国すべての病院及び分娩取扱い診療所  計10,262施設(回収率84.8%)(P.1)

【調査結果のポイント】
○ 必要求人医師数は18,288人であり、現員医師数と必要求人医師数の合計数は、現員医師数の1.11倍であった。また、調査時点において求人していないが、医療機関が必要と考えている必要非求人医師数を含めた必要医師数は24,033人であり、現員医師数と必要医師数の合計数は、現員医師数の1.14倍であった。(以下の倍率は、すべて「現員医師数に対する倍率」である)。(P.3)
  ・必要求人医師数 18,288人〈現員医師数 167,063人〉(1.11倍)
  ・必要医師数   24,033人〈現員医師数 167,063人〉(1.14倍)
○ 必要求人医師数、必要医師数ともに都道府県の現員医師数に対する倍率には地域差が見られた。(P.4~6)
○ 必要求人医師数、必要医師数ともに診療科の現員医師数に対する倍率には差が見られた。(P.8~10)
○ 必要求人医師の求人理由・求人方法で回答数が多いものは、次のとおりであった。(P.10~11)
・求人理由:「現員医師の負担軽減(入院又は外来患者数が多い)」27.8%、「退職医師の補充」17.5%、「現員医師の負担軽減(日直・宿直が多い)」16.2%
・求人方法:「大学(医局等)へ依頼」28.2%、「インターネットへ掲載」が24.1%、「民間業者へ依頼」19.0%

(注)本調査は、平成22年6月1日現在において全国の病院等が必要と考えている医師数の調査を行ったものであり、今後の医師確保対策のあり方については、本調査結果のほか、様々な制度のあり方、諸外国の状況等を踏まえ検討していく。


となっております。
なんであんなにメディアが騒いだのか理解できないんですが、この調査は要するに、医師の求人倍率を都道府県ごとに出したって言うだけの代物です

で、ここでまず一つ、落とし穴があります。それはタイトルです
「病院等における必要医師数実態調査の概況」
となってますが、この意味は文章中に何度も繰り返されており、ご丁寧に最後に注意まで書いてあります
重要ですので、もう一度転載しましょう


(注)本調査は、平成22年6月1日現在において全国の病院等が必要と考えている医師数の調査を行ったものであり、今後の医師確保対策のあり方については、本調査結果のほか、様々な制度のあり方、諸外国の状況等を踏まえ検討していく。


ここは絶対に勘違いしてはいけないところで、
この調査は「今の医療制度化で、今ある病院にとって、今この瞬間に経営上理想的な医師数」を求めただけです
「地域医療を維持するために必要な数」でもなければ、
「医師を労基法準拠させるためには後何人必要か」でもありません
それは「この調査結果をもとにこれから考えること」なんです。

そのことは、非常に単純な事実のみで証明できます
1年前の民主党のマニフェストをまだもっている方は確認して頂きたいのですが、
OECD平均並みの医師数にするには、2006年時点でさえ、日本は医師は13万人不足しているのです
たかが1~2割程度の医師不足だったら、こんな医療崩壊とか言ってません


今回の調査は、医師の求人倍率を調べたものであり、それ以上でもそれ以下でもありません
ですが、この結果を恣意的に利用しようとするいくつかの派閥がいます

まずは厚労省の方では、この求人倍率が最低が東京の1.08倍で、最大が岩手の1.4倍であったことを利用して「偏在」を叫び、医師の強制配置と天下り用の調整機関をつくろうとしてます(http://firstpenguindoc.blogspot.com/2010/08/blog-post_30.html)
これが欺瞞でしかないことは、pdfで公開されてる調査結果の原本みれば一発なんですけどね…
医師不足を求人「倍率」ではなく求人「数」でみると、最も不足しているのは東京の1656人です。次が大阪の1219人。ちなみに岩手は640人です。
1600人って、医学部2~3校分ですよ?
この状況で、じゃあ偏在しているから東京から岩手に医師を送れとか言う人、います?
この調査結果は「偏在」ではなく「医師不足は日本中に平等に存在する」と考えるべきでしょう
「医師確保対策」は「仁義なき共食い」でしかないのです


しかし、もう一つの派閥はちとやっかいです
文科省の医学部新設を叫んでる一派です…(つーか民主党内部の一派でもあるんですが…)
2.4万か13万かはともかく、医師は足りないんだから医学部増やせと言う(表向きは)単純な理屈なんで、非常に止めさせるのは難しいんですが
まぁ、医学部新設がいかに無謀であるかは過去ログ参照して下さい
http://firstpenguindoc.blogspot.com/2010/08/blog-post.html


なんにせよ、本調査には調査目的を離れた結論をつけられることで、以下の3つの危険性がつきまといます
1.医師不足数が2.4万人に過小評価されてしまう
2.「偏在」の根拠に使われてしまう
3.医学部新設の論拠にされる

これらは、官僚にとっての利益になっても、現場の医師には負担にしかならない結論です
途上国の医師を呼ぶという案が表に出てこないのが不思議ですが、看護師でコケてるから流石に自重したんですかね?


では、どんな結論なら妥当なのか?
これには、コペルニクス的な発想の転換が必要です


実は「医師不足」ではなく「病院過剰」ではないのか?


この結論は、福祉的思考ではアウトであり、官僚も政治家も絶対認めないでしょう
しかし、軍事的な思考ではこれが正解で、直近の問題に対処するにはこれしかあり得ません

本調査をもとに医師不足が存在すると言うには、「現在の病院数および病床数は妥当である」という前提命題が必要です
でも、その前提が成立しないことは調査結果の注意に婉曲的に書かれています

また、万単位の医師を充足させるだけの「医師過剰地域」は存在しませんし、今から育成機関つくって学生が一人前になるまで医師も患者も待てません
医師が後2.4万人いれば医療は守れるというのは、沖田総司が2.4万人いれば幕府は勝ったというのと同じくらいアホなことです



今すぐに必要なのは、病院数にあった医師数を確保しようとすることではなく、医師数にあった医療体制にすることです
医師を増やすのも調整するのも、その後の話です

2010年9月23日木曜日

捏造記事への反論

ここではマスゴミの論説にはあまりいちいち反応しないように努めているつもりなのですが、今回は明らかな嘘が書かれているので看過しません


小児科は52病院減…09年前年比、厚労省調査

 厚生労働省は22日、2009年の「医療施設調査・病院報告」の概況を発表した。09年10月現在、小児科を設置している病院は2853施設、産婦人科・産科は1474施設で、ともに1990年以降で最低となった。
 仕事の厳しさや訴訟リスクの高さが指摘される小児科や産婦人科・産科の減少傾向に歯止めが掛かっていない実情が改めて浮き彫りになった。
 調査結果によると、小児科は前年比52施設減少、産婦人科・産科も同22施設減った。90年と比べた減少率は、小児科が約30%、産婦人科・産科は約40%となっている。病院自体は、精神科病院と結核療養所を除いて7655施設で、前年比59施設減、90年比では約15%減だった。
 一方、人口10万人に対する病院の医師数を都道府県別で見ると、最多は高知県の218・3人で、最低は08年に続いて埼玉県の103・5人だった。
[解説]小児科減 医師偏在、対策手つかず
 今回の調査は、医師不足や医師の偏在問題を解消する対策がいまだ不十分で、なかなか効果に結びついていないことをうかがわせる。
 産婦人科や小児科といった激務の診療科を中心に医師不足が指摘されるようになって久しい。国は医学部定員を増員したほか、診療報酬を手厚くしたり、新人医師の臨床研修制度で都道府県ごとに募集定員の上限を設けたりするなど、ここ数年、具体的な対策を実行してきた。
 ただ、診療科や地域による医師の偏在を是正するには、どこにどれだけ医師が不足しているのか把握し、バランスよく人員を配置する必要があるが、その方策は実質的にはほとんど手つかずといっていい。厚労省は適切な医師確保策を具体化することが急務だ。(医療情報部 高梨ゆき子)
(2010年9月23日 読売新聞)

 
なかなか興味深い記事なのですが、この記事には致命的な間違いがあります。

小児科医は減ってませんよ?

若干古いデータで恐縮なのですが、厚労省のデータです
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0730-22b.pdf
7枚目のグラフがわかりやすいかと思うのですが、減少しているのは産婦人科と外科くらいです。小児科は横ばい~微増ですね
 

では何故小児科医が減ってないのに小児科病床が減ってるかですが、理由はいくつか考えられます

1.少子化
根本的に小児の数が減ってるんですから、病院の数が減るのは当たり前です。過疎の村に小児科入院施設は不要でしょう。
日本の年少人口は、90年はおそよ2250万人、09年は1700万人で、24%の減少です。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2010/22webhonpen/html/furoku07-10.html
小児病院の減少度合いは、小児の減少度合いに比べて目くじらたてるほど多いでしょうか?

2.医療裁判
こう書くと小児科医が裁判怖がって病院逃げてるように思われかねませんが、私はそうでないと思います。
これまでは町の診療所など、内科の先生が小児を診ることは多かったはずです。
ところが、ごくまれに発生する「地雷」のために、内科医が小児を診れなくなり、しかも高度医療病院への救急搬送が増えたことが原因としてあげられます。
実際、うちの大学の救急にも塀から落ちて手を切っただけで周辺の診療所からどんどん搬送されてきます。
小児専門医以外が小児を診れなくなったことが小児科医過重労働の一因として存在するのは間違いないでしょう。

3.医療の高度化
最近は抗菌剤などの進歩もあり、昔ほどそう簡単に入院することはなくなっていると思います。
裏を返せば、入院治療に対するハードルは上がっています。
これは小児科だけの問題ではなく、脳外科、小児心臓外科、小児外科との連携の問題も絡みます。
外科医の減少などの問題もあり、外科が集約化に走っている以上、小児科も影響を受け、今後病院の機能分化が進んでいくことと思います。
また、女性医師が増えていることもあり、流石に人権無視の労働形態では「病院が医師に選ばれない時代」になりました

女性医師の比率が高いと言われる産科や小児科は国ぐるみでこれの対策やってます
その為にはスタッフの集約化が必要であり、病院の選別は進んでいくでしょう
よく「○○病院が派遣を停止」とか記事に書かれますが、基本的には撤退される側に問題があると考えておくべきです


4.制度の問題
日本ほど小児病院が少ない先進国はそうそうないと思いますが、私の県(というか地方)には小児病院がありません。
この理由は、なんと、「採算がとれないから」だそうです
いったいどんな医療制度なら、専門病院が採算とれなくなるんでしょうね? 


また、社説でアホなこと言ってますが、医師の絶対数が不足しているのに、どこから医師を確保するつもりなんでしょうか?
読売が大好きな「医師の強制配置」は時代に逆行するものであり、強行すれば今ギリギリでもっている地域まで崩壊します。本当に必要な手段を選択する時間を奪い、医療崩壊地域を増やすだけです。
また、医師には基本的人権がないとするならば、医学部生そのものの減少を招く、みんなが不幸になる選択枝になります
実際、強制配置派が手本とするドイツでは、医学部は定員割れしています
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4110
しかし、だからといって日本の労働体系では移民で医師を補うという方法も採れません

医療崩壊対策に必要なのは、「医師の不足の把握」ではなく、 「必要な病院機能の選別」です
フリーアクセスという幻想は捨てて、欧米並みに医師と患者を集約化する必要があるでしょう


さて、ご飯が炊けるまでのひまつぶしで反論を書き並べてみましたが、いかがでしょうか?
記事(しかも記名)でここまで思い込みだけで記事を書けるというのは、某フロッピー改竄並にプロ失格だと私は思います

2010年9月5日日曜日

そして真実は闇の中へ

今話題のアシネトバクター、予想外の展開が出てきました

【帝京大院内感染】警視庁、業務上過失致死容疑で捜査へ
2010.9.4 01:45
 帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)で抗菌薬に耐性を持つ細菌「多剤耐性アシネトバクター」(MRAB)に患者46人が感染し、9人が感染の疑いで死亡した問題で、警視庁は3日、安全管理に問題があった疑いがあるとみて、業務上過失致死容疑を視野に医師らから事情を聴く方針を固めた。

さて、警察という方々は、過去の医療裁判からまだ何も学んでいないようですね?
まず第一に、裁判というのは警察官と裁判官が理解しやすい意見だけが採用される場です。
つまり、誰も真実なんて求めてません。

問われるのはtruthではなくguilty or not guiltyです。
この件が裁判に問われることになれば、全国の院内感染対策のアップデートの参考となる資料が警察の物となり、大きな社会的損失を生むことになるでしょう

また、みんなの頭からすっぽり抜けてしまっているような気もしますが、アシネトバクターは死因疑いであって、どうも確定してないみたいですね?
事件現場に指名手配犯がいたからって、そいつが犯人ってワケじゃないので、そこは慎重に調べないといけないところなんですが、そこのところわかっているのでしょうか?

さらにアシネトバクターに感染していたとしても、別の問題があります。2年前のAFPの記事から抜粋しますが


 アシネトバクター・バウマニは健康な人を襲うことは少ないが、入院中の重症患者らの間でよく発見される。高齢者や重篤な基礎疾患を持つ患者、免疫システムの衰弱している人、大きな外傷性障害ややけどのある人などが感染しやすい。また、手術後の人やカテーテルや人工呼吸器の使用者も感染する可能性が高いという。(c)AFP 

というわけなんですね。
つまり、こいつは「合併症」なんですね
「医療過誤」ではなく「医療事故」です


医療者が意図的に感染させたというならバイオテロですが、偶発的に感染したものを「業務上過失」ってどれだけ無茶苦茶いってるかわかってるんでしょうか?


軍隊でいえば、市街戦で民間人一人でも守れなかったら銃殺刑と言っているようなものです
この理屈通るなら、COPD患者が肺炎で死んだら呼吸器専門医全員逮捕になりますよ?
高度医療やるだけで刑事訴訟リスクなんて無茶な先進国は、日本以外どこにもないでしょう

こうなると、医療者と病院が身を守る方法は、 地雷原に入らないことしかなくなります。

また医療が衰退するようなマネをされないことを心から祈るばかりです

2010年8月30日月曜日

官製医局の行き先

1週間前のネタですが、重要なことなので取り上げさせていただきます


医師不足解消へ、都道府県に派遣センター 厚労省が構想
2010年8月22日3時5分
厚生労働省は医師不足に悩む病院に医師を派遣する「地域医療支援センター」(仮称)を各都道府県に設置する構想をまとめた。事業費約20億円を来年度予算の概算要求に盛り込む。医師不足の病院に医師を送る仕組みを国が全国的に整えるのは初めて。
医師が不足している地方では、地元大学の医学部に、卒業後に地元で一定期間働く意思を示している人を対象にした「地域枠」を設ける動きが広がっている。そこでセンターは、地域枠出身の新卒の医師らを病院に派遣する。地域枠出身の医師に10年近く残ってもらう地方が多く、多数の若手医師を効果的に配置するには、派遣先を一元的に調整する必要があるためだ。 
同省は全国約8800の病院を対象に、不足している医師数を調べている。結果をセンターに提供し、効果的な派遣に役立ててもらう。
また、センターは傘下の若手を長期的に育てるため、指導できる医師が多い病院に支援を求めたり、若手が仕事を休んで学会や研修に出席しやすいよう代わりの医師を確保したりすることも検討している。指導できる医師の養成にも力を入れる。
都道府県によるセンター直営や外部委託が想定されている。派遣とは別に、地域での就職を希望する医師を病院に紹介する事業も手がける。
医師不足は2004年に新卒医師に2年の臨床研修が義務づけられたのを機に深刻化した。様々な病気の患者を診療できて経験を積める都市部の総合病院が人気を集める一方、大学病院は敬遠され、周辺の病院に派遣していた医師を引き揚げて医師不足を招いた。(月舘彩子)



とんでもないことを次々とさらっと言われてて突っ込みどころに困るのですが、要は官製医局をつくりたいと判断して良さそうです。
しかし、これ、医師のキャリア形成を知っている人間がつくったとはとても思えないPlanです。

まず根本的に、地域枠出身者はこのセンターとやらに強制加入させられるのでしょうか?
法的に問題があると思わざるをえません。

そもそも法的な問題以前に、医師不足の病院に新卒医師を派遣するという発想がまともとは思えません。
まずそういうところには指導医が不足しています。他の病院だって、他病院に指導医クラス派遣できる余裕はありません。そんな余裕があれば地域医療は崩壊してません。はたして地域枠出身者に、まともな教育ができるのでしょうか?
また、そうした病院であれば、学会認定を得ていない事も容易に予想されます。
そういう病院を卒後10年間回らされた地域枠出身者は、その後、果たしてどんな医師になっているのでしょうか?どんな病院に就職できるのでしょうか?彼らは、次世代の地域枠出身者の指導医たり得る能力を得ているのでしょうか?
内科認定医もとれず、総合医としか名乗れない医師が量産される可能性も充分にあり得そうです。

また、この辺をクリアできたとしても、「一元的に管理」など不可能です。病院の人事権については、今でさえ古い隣の医大とその県の新設医大で摩擦とか発生しているのに、 さらに火元を増やすだけになりかねません。
地域枠出身者にどんなポストが用意されるのか、想像するだけでも恐ろしいです。



結論から言って、これは地域枠出身者をどこにも行けなくして死ぬまで飼い殺しにする制度としか私には思えません。
これは、地域枠の本来の目的に反する結果しか生まないでしょう。



そもそも、地域や大学にどうして医師がいなくなったかという根本原因解決せずに、強制労働でどうにかしようという発想が私には信じられませんが…
病院に人を増やしたいなら、過労死ライン余裕越えの労働時間とか、大学研修医の給与を実労働時間で時給換算すると、一般職のアルバイト並(助教でも看護師以下?)の給与という現実をどうにかする方が正道であり、それ以外の道はないと思うのですが…





アルバイトの平均時給額が上昇傾向、7カ月連続で前年同月比を上回る - 10/08/30 | 12:15
 求人情報サービス「an」を運営する株式会社インテリジェンスは、PCサイト、モバイルサイト、有料求人誌、フリーペーパーの掲載情報をもとに、毎月、アルバイト(人材派遣・接客を含む酒類提供職種を除く)の平均時給額を調査している。
2010年6月の調査結果は、以下のとおりとなった。 全国平均時給額は998円で、前月から8円のプラス。また、前年同月比では25円プラスとなり、7カ月連続で前年同月比を上回る結果だった。
 これらの結果について、「an」担当者はこう話す。
 「この数ヶ月は求人数も堅調。リーマンショック以降は、2009年6月まで10ヶ月連続で前年同月比が下回ることもあったが、景気回復に伴った基調の改善と言えるだろう」。

上位を占める三大都市圏、他エリアと格差
 全国をエリア別に比較すると、関東エリアが1,071円で最も高く、東海エリアが980円、関西エリア970円、北海道エリア816円、九州エリア813円、と続く。
 三大都市を擁する上位3エリアは、2008年1月以降、1000円前後を推移しており、関東エリアにおいては1000円以上をキープ、対前年増加率は全職種がプラスになった。一方、九州エリアと北海道エリアはやや低く、800円前後を推移している。

  医療・教育関連の強さが浮き彫りに
 職種別(事務系、販売系、フード系、サービス系、運輸職系、技能・労務系、専門職系、の7職種に分類)の比較では、2位の運輸職系1,042円、3位の事務系1,021円に差をつけ、専門職系が1,212円でトップだ。
 専門職系の中でも全国的に高額なのは、1位から順に、薬剤師(1,769円)、家庭教師(1,765円)、看護師(1,555円)、塾講師(1,445円)などで、「専門的知識に対しての評価はもちろん、ニーズの絶えない医療・教育の分野はやはり強い。」「an」担当者)。
 対前年増加率で見ると、販売系6.5%、運輸系6.2%、事務系5.3%が特に伸びており、全体の増額につながった。なお、営業系はサンプル数が一定に達していないことから、今回は調査対象外としている。
 今後も経済情勢をにらみながらの動きとなろうが、派遣法改正議論による影響なども注目される。
 (フリーライター:児玉磨由子=東洋経済HRオンライン)



どうやら、この調査結果には「ただし医師は除く」という注意書きが足りないようですね?(笑


とりあえず、地域枠に既に入っている方にはこれだけは言っておきます。
いざというときに奨学金を全額叩き返せるようにお金貯めておいた方がいいかも知れませんよ?

2010年8月22日日曜日

責任者不在の臓器移植法

このご時世に脳死移植反対を公言してる私ですが、中でも小児脳死移植に反対する理由として「少なくとも現時点では絶対に認められない道義的理由」として以前より指摘していた問題があります
それは、「そもそも虐待防止、早期発見、虐待児保護の国家的体制がない。また、一件の脳死ドナー候補がでるだけで、ただでさえ先進国最低クラスと絶対的にリソースが不足している小児三次救急が一時的に崩壊するのではないか?脳死移植は、小児救急を整備して脳死になる子どもを最小限にした上で議論されるべき問題ではないか?」ということです。
私がこのことを某所で指摘してから1年以上経って、法施行から一ヶ月経ちましたが、果たして今どんなことになっているでしょうか?
キャリアブレインの記事から抜粋させていただきましょう。

改正臓器移植法施行1か月(上) 医療現場になお不安

 改正臓器移植法の完全施行から1か月がたった。この間には、書面での意思表示がない男性2人(いずれも18歳以上)から臓器提供が実施されたが、提供者(ドナー)からの臓器提供を担う提供施設では、今も不安を抱えたままだ。(池島貴裕、田上優子、兼松昭夫)

■避けられない負担増
 脳死判定を行い、臓器の摘出手術を行う脳死下臓器提供施設の1つ、川崎市立川崎病院(神奈川県川崎市)。同病院で脳死判定を担当する野﨑博之・神経内科部長は、改正法に不安を感じている。最大の懸念が、脳死判定の見直しに伴う提供施設の負担増だ。
 脳死の判定は、▽深い昏睡(こんすい)▽瞳孔の散大と固定▽脳幹反射の消失▽平坦な脳波▽自発呼吸の停止-などが基準で、2回にわたって実施する。
 1回目と2回目の判定の間隔は「6時間以上」とされていたが、改正法で新たに臓器提供が認められた15歳未満のうち、6歳未満については「24時間以上」に延長された。6歳未満の小児では、脳死判定後も心臓が長期間動き続ける「長期脳死」になることが成人より多いためだが、判定が長引けば病院や担当医師への負担増は避けられない。
 「忙しいから対応できないでは通らない。やるしかない」と野﨑医師は話す。ただ、その胸中は複雑だ。
 01年に行った臓器提供では、金曜日の夜から脳死判定の作業が始まり、担当したスタッフらは搬出作業が終了した日曜日の正午近くまで対応に追われた。新たに認められた小児では、脳死判定時のスタッフの拘束時間が一層長くなる。脳死した小児の臓器を摘出する上では、虐待の有無の判定などの作業も加わる。さらに、遺族への手厚い対応も求められる。
 川崎市立川崎病院は、県内全域からの救急搬送を受け入れる三次救急医療機関。200人近い勤務医がいるが、脳死の判定に携わる脳外科などでは、今でも「ぎりぎりの労働環境」で勤務しているのが実情だ。
 今後、小児の脳死判定に対応する場合には、緊急手術を近隣の病院に任せることも検討せざるを得ないという。
 野﨑医師は「よほどスタッフがそろった病院でないと円滑な対応は厳しい。脳死判定に対応するために救急患者の受け入れをストップする病院が出るかも知れない」と話す。

 仮に病院側の対応が国のガイドラインから逸脱すれば批判の的になりかねず、これが提供施設の負担につながるという関係者も多い。
 日本医科大付属病院の横田裕行・高度救命救急センター部長は、「改正法では、判定に前後する虐待の有無の確認や遺族へのオプション提示のタイミングが、すべて厳格に決められている。提供病院の負担を軽減するため、現場の裁量を認めてほしい」と訴える。

( 2010年08月19日 18:55 キャリアブレイン )
改正臓器移植法施行1か月(下) 小児の臓器移植に壁
 ■虐待の確認 どこまで可能?

 改正法では、18歳未満の人が虐待を受けていたことが明らかになった場合には臓器提供を認めていない。虐待の有無を判定するため、提供施設は「虐待防止委員会」を設置し、虐待が疑われるケースは警察や児童相談所などに届け出なければならない。
 しかし、捜査に関するノウハウもない医師らによる虐待防止委員会が、虐待の有無を本当に判断できるのかを疑問視する声が多い。

 日本移植学会の寺岡慧理事長は、虐待の有無の確認が医療現場に委ねられたことで、「小児の移植は慎重にならざるを得ない。虐待防止委員会で止まってしまうのではないか」と危惧(きぐ)する。
 実際、日本脳神経外科学会が会員施設を対象に実施したアンケート調査では、「虐待への対応が不可能」などの理由から、小児の脳死判定や臓器提供の体制を「未整備」とする施設が回答した施設の7割以上占めた。

 日本移植学会が改正法の施行前に開いた記者会見で、阪大病院の福嶌教偉・移植医療部副部長は、「本来は警察が行うべき犯罪かどうかの見極めが医療者側に委ねられた。院内にそのための仕組みをつくるのは非常に大変」「虐待の有無の判断には、国レベルでの“お墨付き”に近い仕組みづくりが必要。病院の責任だけで確信を持って判断するのは難しい」などと困惑を隠さなかった。
( 2010年08月20日 16:35 キャリアブレイン ) 



キャリアブレインにしては見出しがイマイチなんですが、不安も壁もつくったのは国会です
しかも、これらの問題は法案成立以前から指摘されていたことです。
第一ですね、医師は虐待の「捜査のノウハウがない」のではなく、根本的に「そもそも捜査権限がない」ということを皆さん忘れていないでしょうか?

新法が法案となる以前からあちこちで既に指摘されていたリソースや虐待発見、情報公開と行った問題が、法案が成立して1年以上経っても放置されているのが現状なんですが、マスコミはこのことを垂れ流しはしても「じゃあどうする」って話は全くなしです
結局のところ、この新臓器移植法もマスコミの話題作りと政治家のゲームの一つでしかなかったと言うことでしょうか?


既に導火線に火はついてしまいました
このまま放置すれば、いつか、どこかで爆発するのは確実です
その時、いつもの医療過誤報道のようにまた病院や医師が生け贄になるのでしょうか?
そんなことになれば、その日が日本の移植医療の最後の日となるでしょう


日本の医師が、臓器移植になぜここまで徹底的に安全走行を求めるかというと、日本初の脳死移植におよそ考え得る限りの問題が凝縮されていたからです。
和田心臓移植事件という二度と繰り返されてはならない疑念があるからこそ、臓器移植には透明性と慎重さが重要なのです。
脳死というものは、一病院や、ましてや医師個人に背負えるものではないのです。


国が全ての責任を負うようにしない限り、日本で小児脳死移植は進みませんし、進めてはならないのです。

2010年8月15日日曜日

敢えて終戦の日に問う

もはやNHKですらまともに扱われない終戦の日ですが、植民地支配や核爆弾だけがあの戦争の非人道性ではありません。
先の大戦は、医学や軍事の名の下に人体実験が平然と行われ、現代の生命倫理の発端となったものである事は忘れてはならないと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニュルンベルク綱領
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヘルシンキ宣言


今の時代のこの日本においてすら、脳死、病気腎移植、代理母、iPS細胞、延命治療と言った生命倫理上の問題があり、社会的議論ないままに現場でそれらが進められています。
人命とはなんであるのか、人体とはなんであるのか、医学はどこまで医療に踏み込むべきなのか、
それをもう一度考え直すべき時ではないでしょうか?



8/4号 「2.5人称の視点は、臨床の知」、柳田邦男氏
2010年08月04日 

「それまでの私は脳死を受け入れることに傾いていたが、脳死状態にある息子を目の前にした時、それを受け入れることができなかった。頭で考えていた死との相違をどう捉えていいのか、自分の中に“分裂状態”が生じた。それから、『生と死の人称性』を考えるようになった」
7月31日に開催された第42回日本医学教育学会大会の特別講演で、ノンフィクション作家の柳田邦男氏は、「医学の急速な進展と対患者関係 - 2.5人称の視点の提言 - 」と題して講演しました。「2.5人称の視点」は柳田氏の造語で、「医師だけでなく、行政官、法律家などの専門家で、専門分化が進む中で、見落としがちな視点について話をする」と柳田氏は講演の趣旨を説明。
柳田氏は、医療者には『ガン回廊の朝』などの著書で有名ですが、ご子息の話は『犠牲(サクリファイス - わが息子・脳死の11日』として上梓しています。柳田氏は、その後、哲学者のウラジーミル・ジャンケレヴィッチの著書や、心理学者の河合隼雄氏との出会いを通じて、「生と死の人称性」についての考えを深めていき、講演スライドでは、以下のようにまとめています。

【生と死の人称性】
1.1人称の「生と死」
医療の選択、リビング・ウイル、人生の最終章の生き方
2.2人称の「生と死」
ケア、介護、グリーフワーク
3.3人称の「生と死」
専門的かかわり合い(医療行為)、距離を保つ(冷静、客観性)

医療者にとっては、患者さんの死は3人称。豊かな経験と専門性を発揮するためにも、「感情に流されず、冷静さが求められるが故に、時に科学主義、視野狭窄になる」とする柳田氏は、「『乾いた3人称』の視点から、『潤いのある2.5人称』の視点が求められる」と説きます。「2.5人称とは、足して2で割ったのではなく、3人称の立場を保ちながら、1人称、2人称の視点を併せ持つこと」(柳田氏)。
<略>
そのほか、柳田氏は、哲学者の中村雄二郎氏の著書『臨床の知とは何か』にも言及。「科学の知」と「臨床の知」には違いがあり、科学的は普遍性、論理性、客観性を重視し、研究の対象を客観化しますが、臨床で人間を見る際にはそれだけにとどまらず、個別性を大事にすることが大切で、そこに大事なものが隠されている、などと柳田氏は指摘。「2.5人称の視点は、臨床の知の一つの視点になる」(柳田氏)。
最後に柳田氏は、「専門家に求められるもの」として以下の4点を挙げ、特別講演を終えました。

専門家に求められるもの】
1.科学主義、制度化、標準化の「落とし穴」に気づく。
2.「生と死」の人称性を理解する。
3.人間が生きている個性豊かな物語に興味を抱く。
4.人間を愛する心で、その身になって考える。

2010年8月8日日曜日

疑わしきは提供せず

3週間ほど前に施行された改正臓器移植法ですが
小児からの臓器提供も可能になったハズですが、今のところまだ1件も行われていないのは何故でしょうか?
今回はそこのところにスポットを当てたいと思います

子ども提供で手続き断念複数 虐待有無の判断理由に

改正臓器移植法で可能になった15歳未満の子どもからの臓器提供について、家族に提供意思があっても移植に向けた手続きが断念される事例が同法が全面施行された7月17日以降、複数あったことが分かった。日本臓器移植ネットワーク西日本支部の移植コーディネーターが2日、高知県内の勉強会で明らかにした。
虐待を受けた18歳未満からの臓器提供はできないと定められているが、虐待の有無の判断は個々の病院内の虐待防止委員会に任せられている。
このコーディネーターは、詳しい状況は明らかにしていないが、虐待の疑いの有無を病院が判断し切れないことが原因という。
改正臓器移植法の全面施行後、子どもからの提供、移植に向けた手続きが断念された事例が明らかになったのは初めて。
臓器移植法の改正に当たっては、運用指針を検討する厚生労働省の委員会で、虐待を受けた子どもの扱いが焦点となった。だが、全国の提供病院では虐待を受けた子どもからの提供を防ぐための院内組織やマニュアル整備が進んでいない。また虐待を見逃さないため、医療機関や児童相談所、警察など多機関の連携体制の構築が不十分との指摘もある。
勉強会では、医師から「提供施設が虐待の判断をするのは負担が大きすぎる」との声も出た。
2010/08/03 01:00 【共同通信】


いきなり正にその通りで、私の言いたい事を要約してくれまくったような記事なんですがw、
どうやら、同日にこの記事の続きネタがあったようです
今回問題にしたいのはそっちの方です


厚労相「詳細把握し議論したい」 子どもの臓器提供断念で

脳死状態になった子どもからの臓器提供が可能となった7月の改正臓器移植法全面施行後に、虐待の疑いの有無が判断できないとして子どもからの提供に向けた手続きが断念される事例が複数あったことについて、長妻昭厚生労働相は3日の閣議後の記者会見で「どういう状況で医師がどう判断したか詳細を把握したい」と述べた。
医療機関や警察など関係機関の連携など、虐待された子どもからの臓器摘出を防ぐための体制づくりが遅れているとの指摘もあり、長妻厚労相は「(実態把握の上で)改善すべき点があるか省内でも議論していきたい」との考えを示した。
2日に事例を報告した日本臓器移植ネットワーク西日本支部(大阪市)の易平真由美主席コーディネーター代理の説明によると、生後15週間の子どもの両親から臓器提供の申し出があったが、虐待防止の観点などから判断ができず断念。また、3カ月の子どもが車から転落する事案については、母親が故意に投げたのではないとどう判断するのか難しいとして断念したという。
2010/08/03 13:31 【共同通信】



えーと、長妻大臣よ、
この改正法は、改善すべき点があるとかそういう次元ではなく、
何も決めない事を決めた法律
である事を知らないのか?

知ってて言ってるなら大したタヌキ寝入りだが、知らずに言ってるならただの阿呆だ

何で私がここまでぶち切れてるかというと、先日あった
「小児からの臓器提供に必要な施設体制」
とかなんかそんな感じのタイトルの医療機関向けの臓器移植ネットワークの講演会が原因である

私のいる大学病院は、まだ小児からの臓器提供はできない
何故かというと、その為に必須とされている虐待発見委員(仮)が組織されてないからである
なぜ組織されないかというと、その委員会にどんなメンバーを集めてどんな議論をすればいいのか、国が指針を示していないからだ
共同記事にもあるように、普通に考えれば他の医療機関や警察、学校、児童相談所との連携が必要なのだが、そんなものを1病院が作れるわけないのである
(つーか、理想を言うなら虐待発見と脳死判定はそれぞれ各県に1つ第三者委員を作るべきなのだが

で、当然ながらどんな虐待対策をすればいいかという質問がネットワークに殺到したわけだが、彼らの回答は非常に単純明快であった

「それらは全て、各病院の裁量に任されています」

つまり、どんなメンバー集めるかも、どんな議論するかも、各病院が勝手にやれというのだ


これには呆れるほかなく、そうなると、次はトラブった場合に誰が責任とるのかが問題になるが、これもまた素晴らしい官僚的答弁が待っていた


「非公式見解ですが、提供を決めたのは各病院という事になりますので、後はご想像の通りです」


普通ならこれでキレても十分許されるレベルだが、そこを抑えて別の手で行くのがチーム戦の素晴らしいところである
まぁ、単にこいつらに権利と責任の話をしても通じないとみんなが一瞬で悟っただけなんだけどさw
しょうがないから各論にいったら、これもまたとんでもない

今回の法改正で、本人が拒否を示していなければ、親族の判断で臓器提供できる事になったのだが、例外規定がある事は意外と知られていない
『知的障害などで拒否の意思を表明できないものは脳死の対象ではない』のである

で、当然ながら理系人間である医師は突っ込む
何を持って、『知的障害』と判断するのか
そして、この解答から地獄が始まった


「知的障害の定義はありません。そもそも、この文面は『拒否の意思を表明できない』がポイントですので。先生方が家族の話から判断して下さい」


なんと、なにをもって「拒否の意思を表明できない」とするのか、科学的な定義はないそうなw
(まぁ、れを言い出せば何を持って虐待というかがこの国でまだ定義されてないんだけどさwww)


そう言われれば、誰もが同じ疑問を持つ
小児や認知症患者は『拒否の意志を表明できない』のであるから、臓器提供の対象外になるのではないか?
さらに広義にとるなら、脳死者は拒否の意思を表明できないのだから、そもそも臓器提供者になり得ないというパラドックスをきたすのだがwww   


それに対する解答は、もう法律の精神を根本から否定するものであった

「矛盾は承知の上です」


呆れる意外に何ができようか?
恣意的に運用できる法律、矛盾した法律というのは、政情不安国の専売特許だ


つまり、あの講演の全てを要約するならば
「臓器を提供するのも、誰をドナーとするのかも、各病院が勝手にやれ。全て自己責任でな」
ということです


………誰か、こいつらに法治国家の意味を教えてやって下さい

脳死者は、社会的に死とされうる生物学的な生者です
これの権利を最大限守ろうとする事は、医師と法律家の唯一の共通点であると私は勝手に信じてますが、
この法律は、文系的にも理系的にもアウトでしょう

こんな法律で早々に小児からの臓器提供が始まらなかった事は、この国の医療機関に生命倫理と道徳がまだ生きている証だと胸をはるべき事だと、私は思います

2010年8月1日日曜日

医学部新設の現実性

現在医学部新設に手を上げている大学は3つありますが、日本医師会および既存の医学部はこれに反対しています。
その理由は、医学部新設時に現在一線の医師が引き抜かれて、医療崩壊地域が拡大するのではないかというものです。
これについてはネットでは反対意見の方が多いのですが、実際どんなものなのでしょうか?

医学部新設の最有力候補と思われる、民主党政権になってから突然存在感を増してる国際医療福祉大学の現有戦力をみてみますと、

総病床数211床(一般病床 146床、特定病床65床)
医師数 常勤75名 非常勤70名 うち指導医数54名
1日平均入院患者数 181名(2009年度)
1日平均外来患者数 725名(2009年度)
1日平均救急医療件数17.1件(2009年度)

となっています。
仮にも医学部附属病院で働く人間としては、これはいくら何でも少ないだろうと思いますので、同じ地域にあるJ大学附属病院を見てみましょう


病床数    1,130床
■ 医師数    679名(2010年4月1日現在)
■ 指導医数   372名(2010年4月1日現在)
■ 1日平均入院患者数    899名(2009年度) 
■ 1日平均外来患者数  2,649名(2009年度)
■ 救急患者数      23,209名(2009年度)→1日平均63.6名


ええと、正直言って、ここまで戦力差があるとは思ってもいませんでした…
指導医数なんて、6~7倍差があります。
病床数などから見るに、J大は予想以上に規模が大きそうなので、とある地域新設国立大学を見てみましょう


□病床数:612床
□医師数(医員を含む):262名
□ 1 日平均外来患者数:1,226名
□ 1 日平均入院患者数:499名


まぁ、新設国立大はこんなもんでしょう
現状の新設国立大と、国際医療福祉大学は1.5~2倍の人数差があると見ていいでしょう。
この戦力差から見るに、国際医療福祉大学が引き抜きをせずに現有戦力で教育可能な学生数は1学年60~70人というところでしょうか?
入院患者数で考えるなら20~30人程度になりますか?


その程度でしたら、現状の80医学部の定員を1人増やせばおつりが来ますね(笑
医学部1つ新設するのと、現状の医学部の定員を1人増やすのと、どちらが対応が容易であるかは考えるまでもないでしょう。

正直言って、医学部新設は話の大きさの割には、実質的な医師増員のインパクトは期待できないと見て良さそうです
また、これから新設される医学部は全て「私立大学」になりますので、既存の私大ですら授業料値下げする時代に1学年50~60人で収益が得られるのかという疑問も微妙についてきます。

では、新設医学部の1学年を100人にすればいいのか?となると、また話がとんでもない事になります
1日の入院患者数が181人では、患者の2人に1人以上はBSLの学生がつく事になります(笑
いうまでもなく、そんなことになれば現場の医師の教育の負担もえらいことになります
しかし、だからといって現存医学部と同等の医師数にするとなると、医師も100人増やさなければならなくなります(爆


ここまで来ると、すでに80も医学部があるのにこの上さらに新設する事は、本当に意味不明になってきます


では仮に新設され、指導医のヘッドハンティングがおきれば地域医療はどうなるでしょうか?
先に行われたロースクール新設では、優秀な先生のヘッドハンティングが行われ、既存の法学部が苦労したと聞いています。
戦争映画で、「前線での兵士の死は戦死だが、指揮官の死は全滅だ」という趣旨のセリフがありますが、指導医の引き抜きは「前線での指揮官の死」に匹敵します。
チームリーダーがいなくなれば、その診療部門そのものが病院から消えかねない事はこれまでのサボタージュ型医療崩壊で示されています。


どうやら、シミュレーションすればするほど、医学部新設は単純な話ではなさそうです。


少し、頭冷やそうか 

2010年7月25日日曜日

病と共に生きるという事

病院というのはどういうところですか?
と聞くと、恐らく10人中9人以上は「病気を治すところです」と答えるでしょう。

いわゆる患者のほとんどはそれでいいんでしょうが、では、
「治らない病気」や「病気は治ったけど、健常者でもない状態」にある人をどうすればいいのか?
という問題に答えられる人はどれだけいるのでしょうか?


以前、ある慢性疾患の患者さんが
「病院に来ると、病人になる気がする」
といわれた事があります。
とんでもない名言だと私は思います

徐々に進行する慢性疾患なんかの人はよく似たような事を言いますね
本人にとっては、それは当たり前だから、自分が異常である事に気づかない
では、そこで「お前は病人だ」とラベリングする以上のものを、その人のこれまでの生活と、これからの人生観を破壊した先のものを、ちゃんと責任もって渡してやれるのか?
っていうのは、長寿化するこれからの医療に、大きな問題としてのしかかってくると思います


また、がん患者においては治療後の問題もあります
国は「がん征圧」とか言ってますけど、そんな簡単な相手なら誰も苦労してないわけで…

小児がんにおいて、治療の副作用による危険性の上昇は指摘されていましたが、
「英国で1940-1991年にがんと診断され5年生存した17,891人を2006年末まで最長66年間追跡したところ、その後の死亡率は診断後5-14年は28.5倍、15-24年は6.8倍、25-34年は4.9倍、35-44年は3.2倍、45年以上は3.1倍」
という論文が先日発表されました。
原因は14年以内は再発・転移が多いですが、以降は主に二次がんと循環器系ということなので、抗がん剤と放射線療法の予想された副作用ではあります。
調査対象は抗がん剤や放射線を大量に使ってた時代の元患者が多いので、今の治療を受けている子たちはここまでではないはずですが、それでも有意な差はあると思います。

患者会の方が
「小児がんは死ぬのも地獄、生き残るのも地獄」
と言っていたのが、その数字には表れない重さを明確に示しています。
そして、長期予後が改善した成人のがんにおいても遠からず同じ問題が来る事が来る事は、容易に想像できる未来です


「医師は聖職」なんてほとんどブラックジョークの類ですが、こういった分野に至ってはそういう能力も必要とされる時代が再び来ているのかも知れません
もっとも、今の日本の医師にそんなのを求めるのは物理的に不可能なので、そういう異業種の血をいかにうまく取り入れていくかが、これからの病院に求められる能力かも知れません


お国は病院周辺の医療分野をビジネスマーケットとして見ているようですが、
私には、それはハゲタカが増えただけにしか見えません

2010年7月19日月曜日

Quality of Death

共同が変な訳をしたおかげで、某医師専門掲示板で変に炎上してしまったイギリス初の調査結果(http://www.eiuresources.com/mediadir/default.asp?PR=2010071401)をAFPから抜粋したいと思います


死に場所なら英国が一番、英調査
2010年07月15日 18:00 発信地:ロンドン/英国

【7月15日 AFP】死を迎えるのに最適な国は英国――英誌「エコノミスト(Economist)」の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit、EIU)」が14日、このような調査結果を発表した。
 EIUは、経済協力開発機構(OECD)加盟30か国とその他10か国の医師・専門家などを対象に、終末期医療に対する国民意識、トレーニングの有無、鎮痛剤の使用状況、医者・患者間のコミュニケーションの透明性などを基準とし、「クオリティー・オブ・デス(QOD、死の質)」を評価した。
 英国は、政府による終末期医療サポートや、ホスピス間のネットワークが充実している点が評価され、40か国中トップに立った。2位にはオーストラリア、3位にはニュージーランドがランクイン。アイルランド、ドイツ、米国、カナダもトップ10入りした。
 デンマーク22位、フィンランド28位など、富裕国とされる国の複数がランキング下位20位と低評価を受けたほか、ワースト10にはポルトガル、韓国、ロシアが入った。最下位はインドだった。

■富裕国での終末期医療整備が急務
 EIUは、「最先端の医療システムを有する富裕国」でも医療制度に終末期医療を組み込んでいない国が多いと指摘。人の寿命が延び、高齢者が増え続けるなか、こうした国々で終末期医療の需要が急激に高まるとの見通しを示した。
 また、緩和医療は病院だけで行われるべきものではないこと、自宅での死を選ぶ人が多いことを挙げ、自宅介護士の育成を強化するよう薦めている。(c)AFP/Charlotte Turner


この調査結果の日本における分析については、シンガポール版の分析が参考になります。


「死の質」ランキング低いアジア諸国、日本は40か国中23位
2010年07月16日 08:44 発信地:シンガポール

【7月16日 AFP】アジアでは全般的に生活水準が向上しているにもかかわらず、死を迎える人に対し、適切なケアが提供されていないと指摘する報告が14日発表された。
 英誌「エコノミスト(Economist)」の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit、EIU)によると、世界的に高齢化が進む中、終末期ケアや終末期医療の充実は、各国政府や機関などに求められる急務となっている。
 しかし、シンガポールの慈善団体リーエン・ファンデーション(Lien Foundation)の調査に基づき、死を迎える人に施されるケアの質を評価した「クオリティー・オブ・デス(QOD、死の質)」インデックスで、アジア各国の順位は低い。

■死の質1位は英国、日本は23位
 比較された40か国中の最下位はインド。下位10位には中国、マレーシア、韓国が並んでいる。経済大国の日本も、台湾14位、シンガポール18位にも劣る23位にしかランクインできていない。
 一方、トップは「ゆりかごから墓場まで」の英国。2位以下はオーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、ベルギー、オーストリア、オランダ、ドイツ、カナダ、米国と続く。
 報告書は「クオリティ・オブ・ライフという言葉は広まったが、クオリティ・オブ・デスは別問題。医療政策に緩和ケアを組み込んでいる国は、最先端の医療システムを要する富裕国を含めてほとんどない」と批判している。また「緩和ケアおよび終末ケアに特化した施設」が国の医療制度の一部になっていない点や、ドラッグの違法取引や医療従事者への訓練不足が足かせとなって、世界的に鎮痛剤が適切に行き届いていない点が指摘された。
 さらに文化的側面として、死に対する認識やタブーが、緩和ケアの障害になっている点も挙げられた。

■緩和ケア必要な患者は年1億人、受けているのはわずか8%
 世界で65歳以上人口は2030年までに8人に1人、合計で10億人に達する。毎年、緩和ケアを必要とする患者は1億人を超えるが、実際にそうしたサポートを受けることができているのはそのうち8%に満たないというデータも報告では引用している。
 医療の発達とともに先進国ほど寿命は延びたものの、少子化と相まって高齢化も進み、また疾患を抱えて長生きするという新たな難題に終末ケアの現場は直面している。(c)AFP/Martin Abbugao


一言で言って、これでもかっていうほど全く反論できませんね
死に対する認識やタブーってってのは、日本だと病院の方にも重大な問題があるように感じます 
 
医療崩壊が叫ばれてからQOLという単語すら死語になりつつある日本の医療現場ですが、QODにいたっては言うまでもありません。
まぁ、死を生と対立するものととらえるか、生の最終段階ととるかは議論の余地がありますが、
そもそも、そんな「死にゆく人をどうするか」という概念が認知されてない現状では、この調査に何言っても反論にはなってません。

とはいえ、この原因については、日本に関しては歴史的な影響ってあると思うんですよね…
欧米では医療もキリスト教の影響下にあったわけですし、ホスピスなんてのはもろに教会の仕事だったわけです。
そんなわけで、治療期と終末期の壁って言うのはほとんどないと思われます。
また、国民の方もDeath Educationが日本よりはるかにできてますから、心理的抵抗が少ないのでしょう。

ところが、日本では治療期と終末期は隔絶しています。
患者が死亡する確率の高い高度医療機関においてすら、スタッフに終末期や「その後」のグリーフケアについてまともな知識がありません。
本来であれば、終末期専門のコメディカルなどが常駐しているのが望ましいのでしょうが、
在宅にするにしても、比較的健康な人の介護すらまともに回っていない状況で、終末期など夢のまた夢です

超高齢化社会の日本では、あと10~20年もすればまずは地方で、さらに10年ほどして次はベッドタウンで、間違いなく死のラッシュが始まります
その時まで、医療機関はノーガード戦法をとり続けるつもりでしょうか?
恐らくは、5年以内に動かないと、手遅れになり現場は混乱すると思われます

まぁ変な話、慢性疾患については、これから激増するターミナル患者と共に医療者が学んでいくって言うのはある程度期待できると思いますので、それなりにどうにかなるかも知れません
でも、そんな悠長なことを言ってられない現場があります
それは、脳死です

とうとう、改正臓器移植法が施行されました
もう、家族の同意だけで脳死が人の死となります


臓器提供というとレシピエントのQOLばかりが注目されますが、
私たちが本当に向き合わなければいけないのは、ドナーのQODと、その家族のこれからのQOLではないのでしょうか?


小児においては、医療機関が対応不能とはっきり言うところも出てきています
一方、成人の方はそういう話は聞きませんが、全ての施設が改正臓器移植法に対応できているなどとはとうてい思えません
だというのに、国の方はもうヤリ逃げ状態です


脳死移植32例の検証宙に浮く 国の検討会“休眠状態”

 脳死移植が適正に行われたかどうかを調べる厚生労働省の「検証会議」(座長・藤原研司横浜労災病院名誉院長)が昨年3月から1年以上開かれておらず、2007年5月以降に国内で実施された計32例の検証作業が宙に浮いていることが17日、分かった。このうち2例は臓器提供日から3年以上放置されている。
 厚労省の臓器移植対策室は「改正臓器移植法施行に伴う準備で忙しいため」と説明、当面は開催する予定もないとしている。会議の委員からは早期再開を求める声が上がっており、移植医療に詳しい生命倫理学者は「脳死移植をめぐる手続きの透明性が損なわれている」と指摘している。
 臓器提供の大幅増を目指す改正移植法が17日に全面施行され、15歳未満の子どもからの臓器提供も可能となったが、移植医療の信頼確保に向けた国の姿勢があらためて問われそうだ。
 厚労省によると、国内でこれまでに法的脳死と判定されたのは87例(うち1例は臓器提供に至らず)で、55例目まではすでに検証が行われた。このうち金沢大病院(金沢市)で行われた46例目の検証では、同病院が脳死判定時の脳波検査の記録を紛失したことが明らかになった。
2010/07/18 02:04 【共同通信】


医療現場の対応能力を無視した法改正のツケは、必ず出てきます
遠からず、脳死判定から逃散する施設も出てくるかも知れません

国や病院がアテにできないなら、医療者は自分で自分の身を守るしかありません
患者もいつか必ず死ぬ。そういう前提に立った上で自分とスタッフと患者を守る手段を模索する時代が、もう来ていると思います
その上で、現場から問題を発信する必要があるかと思われます