2013年2月17日日曜日

奈良県日当直時間外労働訴訟 決着

奈良県の産科医が、日当直とオンコールについて時間外労働として認めるよう求めた訴訟が最高裁までもつれこみ、とうとう決着が出ました。



医師当直は時間外労働…割増賃金命じた判決確定
 奈良県立奈良病院の産婦人科医2人が県を相手取り、夜間・休日の当直勤務に対して割増賃金を支払うよう求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は12日の決定で県側の上告を退けた。 当直は労働基準法上の時間外労働に当たるとして、県に計約1540万円の支払いを命じた1、2審判決が確定した。
 同法は、時間外や休日に労働させた場合、通常より割り増しした賃金を支払うと規定。2人は2004~05年、各年100回以上の当直をこなしたが、県は「医師の当直は待機時間が多く、時間外勤務に当たらない」として、1回2万円の手当だけ支給していた。
 1審・奈良地裁判決は、原告らが当直中に分娩ぶんべんの取り扱いや救急医療を行うなど、勤務時間の4分の1は通常業務に従事し、待機時間も呼び出しに応じられるよう準備していたなどとして、県には割増賃金を支払う義務があると指摘。2審・大阪高裁も支持していた。
(2013年2月13日20時10分  読売新聞)

さて、新聞報道だとどうにも断片的な情報ばかりなのですが、他紙やm3、過去の報道をまとめてみると

奈良県立病院の産科医2名が2004年と2005年の2年分の未払いの時間外手当として、A医師が4427万9189円(2年間で宿日直155日、宅直120日)、B医師が4804万9566円(2年間で宿日直158日、宅直126日)の支払を求めて2006年に提訴。
(1審)
・2009年4月の奈良地裁判決では、2004年10月25日以前は消滅時効期間が過ぎている
・就業規則上は「宿日直」の扱いだが、実態は異なり、労働基準法41条3号の規定の適用除外の範囲を超える(「宿日直」に当たらず、時間外手当の支払い対象となる)
・救急患者や分娩などへの対応など、実際に診療に従事した以外の待機時間も、病院の指揮命令系統下にあることから、時間外手当の支払い対象になる
→2004年10月26日以降の宿日直に対する時間外手当を認め、A医師に736万8598円、B医師に802万8137円を支払うよう、奈良県に命じた。

オンコールについては、宅直勤務時間が「労働者が使用者の指揮命令系統下に置かれている時間」に当たるか否かによるとした。今回については
・産婦人科医の自主的な取り決めである
・奈良病院の内規では、宅直制度について定められていない
・産婦人科医が宅直の当番を決めたが、それは奈良病院に届けられていない
・宿日直医師が宅直医師に連絡を取り、応援要請をしており、奈良病院が命令した根拠はない
→「指揮命令系統下に置かれているとは認められない」と判断した。

(2審)
2010年11月の大阪高裁判決では、原告・被告の控訴のいずれも棄却、奈良地裁判決を支持した。

(3審)
上告受理申し立ての不受理を決定


というわけですが、裁判に詳しくないとわかりにくいと思いますが…ざっくりまとめてみると

地裁:病院が言うところの「日当直」は待機時間も含めて労働基準法では「時間外労働」であり、定額の当直手当ではなく割増賃金を支払うべき。今回のオンコールは病院命令ではなく医師の自主対応であり、病院の指揮系統下でない以上、時間外の支払い義務はなし。
高裁・最高裁:地裁判決は議論の余地なく正論

ということです。
業界的にはとんでもないインパクトの判決なのですが、高裁と最高裁はあっさりとしたものです
これに関しては、2002年に厚労省労働基準局がだした通達…というか、実質的に警告文があるのですよ

医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について


http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0303-10a_0009.pdf
宿日直勤務とは、所定労働時間外または休日における勤務の一態様であり、当該労働者の本来業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受、又は非常事態に備えて待機するものなどであって、状態としてほとんど労働する必要のない勤務である。

というわけで、「日当直か時間外労働か」という議論は、医師の「本来業務」はなにかというので決定されるわけですが…さらに同年に追い打ちがかけられます


医療機関における休日及び夜間勤務の適正化の当面の対応について
http://joshrc.org/files/20021128-001.pdf
宿日直勤務に係る許可基準(抄)

 医療機関において宿日直勤務を行う場合には、下記1及び2の許可基準に定められる事項に適合した労働実態になければなりません。

1 医師及び看護師の宿直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要
(1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。即ち通常の勤務時間終了後もなお、通常の勤務態様が継続している間は、勤務から解放されたとはいえないから、その間は時間外労働として取り扱わなければならないこと。
(2)夜間に従事する業務は、一般の宿直業務以外には、病室の定時巡回、異常患者の医師への報告あるいは少数の要注意患者の定時検脈、検温等特殊の措置を要しない軽度の、又は短時間の業務に限ること。従って下記(5)に掲げるような昼間と同態様の業務は含まれないこと。
(3)夜間に充分睡眠がとりうること。 
(4)上記以外に一般の宿直の許可の際の条件を充たしていること。
(5)上記によって宿直の許可が与えられた場合、宿直中に、突発的な事故による応急患者の診療又は入院、急患の死亡、出産等があり、或は医師が看護師等に予め命じた処置を行わしめる等昼間と同様態の労働に従事することが稀にあっても、一般的にみて睡眠が充分にとりうるものである限り宿直の許可を取り消すことなく、その時間について法第三十三条又は第三十六条第一項による時間外労働の手続きをとらしめ、法第三十七条の割増賃金を支払わしめる取扱いをすること。従って、宿直のために泊り込む医師、看護師等の数を宿直の際に担当する患者数との関係あるいは当該病院等に夜間来院する急病患者の発生率との関係等から見て、上記の如き昼間と同態様の労働に従事することが常態であるようなものについては、宿直の許可を与える限りではない。      例えば大病院等において行われる二交代制、三交代制等による夜間勤務者の如きは少人数を以て上記勤務のすべてを受け持つものであるから宿直の許可を与えることはできないものである。(6)小規模の病院、診療所等においては、医師、看護師等が、そこに住み込んでいる場合があ
るが、この場合にはこれを宿直として取り扱う必要はないこと。但し、この場合であっても上記(5)に掲げるような業務に従事するときには、法第三十三条又は法第三十六条第一項
による時間外労働の手続が必要であり、従って第三十七条の割増賃金を支払わなければなら
ないことはいうまでもない。
(7)病院における医師、看護師のように、賃金額が著しい差のある職種の者が、それぞれ責任
度又は職務内容に異にする宿日直を行う場合においては、1回の宿日直手当の最低額は宿日
直につくことの予定されているすべての医師ごと又は看護師ごとにそれぞれ計算した一人一
日平均額の三分の一とすること。

というわけで、「日当直か時間外勤務か」は議論の余地なく定義されてるのですよ?
そして、今回の最高裁判決は事実上、これを追認したことになります

奈良県も、どこかで示談に持ち込んでおけばよかったものを、これで労働基準局通達は最高裁判例となりました
要するに、当直代しか出していない病院は、医師が裁判所に訴えれば、ほぼ自動で勝ちます
グレーゾーンとしては、当直代+診療時間のみ時間外手当支給です。

繰り返しますが、当直代としての定額支給のみでは、アウトです
ちなみに、時給や日給、年俸制でも時間外手当や休日手当は払わなければいけませんからね?
(参考URL:http://www.hou-nattoku.com/consult/1179.php)
中核病院、救急病院、高度医療病院は、春までに対策を発表しないと、撃たれますよ?

2012年12月15日土曜日

医学部新設を推進する東大の欺瞞

衆院選を明日に控えた今日ですが、関係があるのか無いのかよくわかりませんが歩調を合わせるように、東大の医学部新設推進運動が展開しています




医師増えても「20年後も不足」 東大研究所が予測


  今の医師の増やし方では20年後も医師不足――。こんなシミュレーション結果を東京大学医科学研究所のグループが1日、米科学誌プロスワンに発表した。医学部増員により医師数は増えるが、高齢化で死者数も増えるため、負担は変わらない可能性が示唆された。
  国の人口推計や医師数調査のデータをもとに2035年の状況を解析した。医師数は39万7千人で、10年より1.46倍に増えるが、死者数も1.42倍に増加。3人に1人の医師が60歳以上になるため、年齢や性別を考慮した医師の勤務時間あたりの死者数は現在と変わらなかった。
  同研究所の湯地晃一郎助教は「死者の大半は病院で死亡している。現状では勤務状況が改善されない」と指摘する。12年度の医学部の定員は約9千人で、07年度より約1400人超増えている。


で、東大といえば当然出てくる上氏は、日経メディカルとケアネットの合同企画で、医学部新設推進は代表として登場しています
ちなみに、反対派は北里大の吉村氏ですが、全国医学部長病院長会議の顧問として登場しています

まずここで勘違いのないように説明しておくと、現状が医師不足であり、今後もそれが続くというところまでは両者共に認識は一致しています
その上で医学部「現行大学で定員増」か「医学部新設」かという方法論の議論です

で、吉村氏…というか、全国医学部長病院長会議の主張は、

・急速な定員増が既に行われており、このままでも2029年には人口対医師数はOECDレベルを超える 
・団塊世代の高齢化による医療需要ピークは2020-2030年→問題は今後十数年であって、長期的には医師過剰となる 
医学部新設では「間に合わない」。大学を潰すのは難しいので医師過剰を推進する


・全国医学部病院長会議は定員100名の大学に600名の臨床系教員が必要→教員がつとまるレベルの臨床医を地域から大学に引きはがせば、地域医療が崩壊する


→フレキシブルに対応できる現行医学部の定員調整で対応すべき

というもので、私が幾度となく主張していることとまったく同じ内容です
…というか、地方で医療やったことある人なら、自然とだいたい同じ結論に達するのではないかと思います

あとオマケですが、面白かったのは、入学定員増と18歳人口減による医師になる18歳人口の割合が、昭和41年は1/700だったのが、平成24年は1/130になっていて難易度は1/5になっている。もう少しで100人に一人は医学部に入れる時代になるということですね
…まぁ、そりゃ医学部生の学力低下しますわな
医師資格者の粗製濫造に懸念があるのは教員側としては自然なことでしょうね


で、東大側の主張ですが

・2035年には日本の人口は14%減少する
→その過程で医療需要は増大する

・増えるのは女医と高齢医師
→大して戦力にならない
・関東では2050年まで人口対医師数は悪化する
・地域で人口数と医学部数があってない
・医師不足には地域性がある
→医師が不足している地域に医学部を新設すればよい


という感じなんですが、「原因」への「対策」がまったく途中経過抜きで「医学部新設」という結論にバイパスされてしまっています
(高齢医師はリタイアが当然としても、女性医師を男性医師並みの労働力にする気はないのか?)
、医学部新設反対派の懸念に対して何一つ回答を示せていません



注意深く読めばわかるように、実は結論部分以外の状況分析は両者ともまったく同じことを言っています


医師不足には地域性があります。私が「地方型医療崩壊」と「大都市圏型医療崩壊」と呼んでいるものがそれに当たります

戦前生まれが寿命を迎えるに当たり、現在高齢化率の高い、地方の医療需要は急速に増大します。これに対応するために、急遽、地域枠を含む医学部定員増が行われたわけです。

しかし、2035年にはその戦前世代は壊滅し、医療以前に地方は限界集落となりますので、コミュニティとともに地方の医療需要は消失します
人口は減るのに医師は増え続けますので、日本全体および地方の人口対医師数は飛躍的に増大します
一方で、今度は団塊の世代が寿命を迎える番になるので、大都市近郊のベッドタウンの医療需要が急速に増大します

問題は、これにどう対応するか、です


医学部新設反対派は、医学部新設ではこの変化に対応できないといっているわけです
それに対して、医学部新設推進派は何一つ回答をしていない


少々笑い話をすれば、上氏は神奈川の医療崩壊地域として厚木をあげました
神奈川県知事が医学部新設派だから神奈川県を出したのかも知れませんが、知事は厚木に医学部をつくるつもりは欠片もありません
そもそも、厚木が医療崩壊したのって、厚木にあった県立病院を経営問題で放棄したからでは?
(現在は厚木市立病院となっています)
神奈川に医学部つくっても、厚木の医師不足は解消されません


地方型医療崩壊の病巣は、土台となる地域コミュニティ自体の崩壊による結果ですので、正直言えばどううまく「撤退戦」をするかという次元です
一方で、大都市圏型医療崩壊は、急速な人口増に対するインフラ不足で純粋に箱となる病院がないことに起因しています。こちらはこれから積極的に「攻撃的な防衛戦」を行わなければならない次元です

2012年の今では、箱をつくってもそこに詰める医師をはじめとする医療者が不足しています
(地域医療振興協会の首都圏での状況を見れば明らかでしょう)
つまり、ただの高次医療機関すらつくれないものを、教育研究機関でもある医学部なんて、もっと無理です


しかし、20年後ならそこに入る医師は見込があります
ローコストな案を出すなら、2030年代から余りだす地方の医師を大都市に呼び寄せて、センター病院をつくるのが妥当ではないかと思います


必要なのは療養型施設と高次機能病院であり、教育機関の医学部ではないのです

2012年11月7日水曜日

犯人は見えないところにいる

ながらく更新せずにいましたが…まぁちょっと色々あって精神的に余裕がなかったのと、ちょうどいいネタがなかったのが理由ですが、最近また医療記事が増えてきたのでちょこちょこ復活したいと思います


さて、本日のネタですが、京大の透析機装着ミス事件です




医師ら3人書類送検 京大の患者死亡事故

共同通信社  11月6日(火) 配信
 京都大病院で昨年11月、脳死肝移植を受けた富山県の男性患者=当時(51)=が医療器具の装着ミスで死亡した事故で、京都府警捜査1課と川端署は6日、業務上過失致死の疑いで、医師ら3人を書類送検した。 同課などによると、書類送検されたのは、装着に関与した当時肝胆膵(かんたんすい)・移植外科の男性医師(37)と小児外科の女性医師(37)=退職、女性看護師(35)の3人。 送検容疑は、昨年11月12日夜、患者に透析治療をした際、看護師は本来取り付ける血液ろ過器ではなく、血漿(けっしょう)分離器を確認せずに誤って準備し、医師2人も確認せずに装着、患者をショック状態に陥らせ、翌13日午前10時50分ごろに、死亡させた疑い。
 府警は3人が誤装着を未然に防止する注意義務を怠ったと判断した。医師2人については起訴を求める意見を付けたとみられる。遺族は刑事告訴をしてないが、医師らへの処罰意識は強いという。
 京大病院によると、患者は昨年11月5日、脳死肝移植を受け成功。一般病棟に移り、腎不全の治療を受けていた。患者の死亡後に病院は装着ミスに気付いた。
 京大病院は今年9月、装着ミスと死亡との因果や病院の医療体制の不備を認める報告書をまとめていた。

この事件自体は既報だったのですが、まだ書類送検されていなかったことと、単に当直医としか表現されていなかったのであまり気にしていなかったのですが、この記事を見て問題が違うところにあると気づきました。

記事中から推測するに、肝移植は成功し、ICUから一般病棟へうつり透析治療を行っていた。
そこで、透析回路を主科の消化器外科で組んでいて事故が起きた…というところだと思います。

ここでの問題は、透析回路のセッティングや透析治療に、腎臓内科やME(臨床工学技士)の姿が見えないことです。
私は既報の「当直医」は腎臓内科医だと思っていたのです。

この事件はミリオタ的表現をするなら、戦車兵と海兵がバラバラの戦闘機をくみ上げて緊急発進したら整備不良で墜落した。
原因は戦車兵と海兵にあるので軍法会議にかける。というようなものです。
普通に考えれば、パイロットと整備兵はどこに行っていた!というべきところだと思いますが

私は初期研修で腎臓内科に3ヶ月ほどいましたが、腎臓専門医で透析オンコールというものが組まれていました
ICUなどで緊急透析などする場合でも、腎臓内科医とMEがセットで回路を組んでいましたが、それでも一つ一つ確認しながらの作業でした
透析機ではイメージしづらいかも知れませんが、例えば、バラバラの人工呼吸器を説明書みながら自分で組んで下さいといわれて、絶対に間違えずにできるという医師、います?
しかも透析機は目的に応じてパーツを変えるモジュール式なので、今回の事件の様なミスを工学的に防ぐことは難しいでしょう。慣れてない人間だけで透析組むなど、危険極まりないです


腹部外科だけで透析回路組んで透析治療をすると言うのは…少なくとも私が研修した病院ではあり得ないことです
ましてや、天下の京大で?
あるいは、旧帝大の京大だからこその組織的な問題があるのか?と邪推してしまいます

実際、京大は医療体制の不備を認める報告書を自ら出しています
まぁ、こんな状態放置してたら職員の士気低下は免れませんし、簡単ではないでしょうが組織改革の動き始めたのではないかと前向きに解釈します

さて、問題は、ここまで来てから警察が当直医と看護師を業務上過失致死で書類送検したことにあります

まずこれまでの流れからわかっていただけるとは思いますが、これは京大の組織的な問題が原因であり、肝胆膵移植外科と小児外科の当直医および当番看護師に責任の本体はありません
これは、構造的に起こるべくして起こった事故といえますし、責任の本体は病院そのものにあります
病院を訴えるならともかく、これは的外れです

また、もう一つの問題は、タイミング的に院内事故調の報告書を元に書類送検がされたと考えられることです
これでは、事故調など機能できなくなります

警察のしていることは、問題の解決と逆方向に進んでいる
そうとしか私には考えられません

2012年8月29日水曜日

「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わらない光が丘病院

練馬の光が丘病院問題。大勢の予想通り、まだまだ続くようです



医師・助産師 体制整わず 1日分娩開始 練馬光が丘病院

 地域医療振興協会が運営する練馬区の練馬光が丘病院は、今年3月の日大医学部撤退後に受け付けていなかった分娩(ぶんべん)を9月1日から再開する。ただ、産科医や助産師の当初予定数を大幅に下回ったままで、28日には市民団体が病院などに診療体制の改善を訴える要望書を提出した。 (宮畑譲)
 光が丘病院は現在、二十人の妊婦が産婦人科を受診し、分娩の予約をしている。九月以降の分娩は、当面この二十人を対象としたもので、救急などを含めてそれ以外は受け付けない。九月に出産予定はなく、十月に三人が出産予定となっている。
 日大が運営していた当時は、助産師が約二十人おり、年間四百~六百件の分娩が行われていた。当初、協会が区に提出した企画提案書では、産科医六人、助産師三十人で体制を組む予定だった。しかし、産科医は現在二人で、九月一日以降も一人増えるだけ。助産師も四月に九人いたものの、現在は七人に減った上、夜勤ができる助産師は三人だけ。
 このため、時間外に産科医や助産師が常駐できない。九月は時間外は自宅などで待機して必要な時に呼び出されて登院する「オンコール」と呼ばれる体制で対応する。
 要望書を提出した「練馬の医療を考える区民の会」の国枝さきの代表は「出産はいつ何が起こるか分からない。今の体制では妊婦は不安」と訴える。要望書では、助産師のオンコールをやめ、質の高い分娩ができる体制の確保を求めている。
 指摘に対し、病院の高瀬健事務次長は「九月は多くの分娩が発生する可能性は低く、安全に対応できると判断した。ただ、リスクの高い分娩も受け入れられるようドクターと助産師を増やすことは課題」と話している。

産科医6→3、助産師30→7って、いったいどんなザル勘定の企画書を出したんですか?
というか、最初から楽観論すら超越したあり得ない数で議会を騙したと言われても仕方ない

地域医療振興協会のマネージメント能力のなさが、言い訳のできないレベルで完璧に露呈しましたね


医師も助産師も、仕事のないところには来ません
一定の人員と機能を維持できないと、そこから先は突然崩壊して0に近似されます
この崩壊ラインから維持レベルまで持ち上げるのがどれだけ大変か…ということがわかってないんでしょうか?


そして、事務次長さん?
あなたは「安全」かもしれないけれど、周囲の医療機関がその煽りを喰らってると言うことはお忘れなく

2012年6月13日水曜日

期待を裏切らない練馬区長

練馬光が丘病院 日大撤退シリーズ、残念ながら続編です
過去編はこちら

日大の変
日大練馬 その後
地域医療振興協会への重大な懸念
続・地域医療振興協会への疑念
練馬区の一週間戦争

どうにかこうにかはじまった地域医療振興協会版ですが、まぁスタートから予想通りです
産婦人科は分娩・入院・夜間対応はおそくとも9月までには…ってかかれてますが、いまの時点で決まってないのはやばいのでは?

外来表も、毎週のように更新されているようですが…
医師の募集要項もみてみましたが、「年齢制限 不問」「採用人数 多数」「給与 面接時にご説明いたします。」ってはじめてみましたよ、こんなの…

まぁ、今回は協会をいじるのはメインでないのでこの辺でやめときますが、とりあえず、予想通りに人手不足で、まかりまちがっても
「日大と同程度」「区民に迷惑はかけない」
病院機能ではないのは明らかです

…ですけど、ここで、予想通りに居直った人が出てきました



光が丘病院問題 “最初から同等は無理”の区長発言の波紋 区議会委員「真意確認を」


(略)
委員会では土屋俊測委員(オンブズマン)が「区は当初から同等の医療を提供すると説明し、委員会はそれを前提に審議してきた。後から区長が『リップサービスだった』と述べるのは許し難い」と区に釈明を求めた。
(略)
志村区長 情報提供の見方は分かれるだろう。私どもは、日大は平成3年から21年間やってきた成果を見れば技術、医療の内容、高く評価していいと思う。
ただ日大だって20年の時間をかけて大きく成長してきた。だから、新しい病院、後継がすぐにそれと同じ規模、イコールでいけるはずが本来ない。
「約束したじゃないか」とよく言われる。新しい病院は日大に遜色ないものを設けますと、最初っから無理な話。日大と同等の医療はできるはずがないけれども、なんて言ったらば、これはどうしようもないこと。
後継の病院として、区民に対しても一生懸命やるからということで、ひけをとらないようにしますと言わざるを得ない。それでないと、お医者さんも集まらない。先行きどうなるか分からないような病院には就きたくはないというのが人情だ。希望は大きく、「日大に匹敵できるような病院にしたい」。こういうふうに思うのが当然だろうし、それを求めてわれわれも後継を選んできた。そんなところでご理解をいただきたい。
 記者 確認ですが、新しい病院は、当初から日大と同じレベルでいくのは難しいだろうと、区長としては思っていたということですね。
 区長 まあねえ。それもまたそうなんだと。努力義務というものがあるでしょう、行政には。だれにでも努力義務はあるんですよ。努力して全うできれば一番いい。だけどほとんど難しいかな。さっき副区長が申し上げたように、私だって日大の医者は少しでも残ってくれると思っていたし、そういう情報は持っていた。だが、日大は頑なに全部引き上げだと、総引き上げだと。
私は1月の会見で日大は区民、病人を捨てていくのかという言い方をしました。医者に聞いてくださいとつけた。でも報道されなかった。聞いてくれれば、医者も本当は残って手伝うと聞かされたはず。でも一つも受けてもらえなかった、記者さんたちにね。私どもは日大の医者に直に聞くのは立場上難しい。医者・看護師に記者さんから聞いてくださいという意味だった。聞いてくださいが省略されちゃって、私が、日大は不人情だと、診療をお願いしている区民を裏切るととられちゃったんで、非常にがっかりした。
(略)
記者 区長にうかがう。話が戻って申し訳ない。新しい病院を維持するとき、日大と同等規模というのは努力義務という認識だったということだが、これを区民に発表せず、あくまで同等の規模ということを一貫して述べてこられた。混乱をきたすからという考えは分かるが、一方、本当のことを知りたいという思いも区民にあったと思う。説明会の席上でどうなっているのという意見がかなりあったのも、一つの根拠としてあったと思う。耳に届いていたと思うが、どうご覧になっていたか。
区長 私が思うのは、同等にするということ自体が素人だと、さっき申し上げた。医療のあり方、中身、これについてだれが判断するんですかということ。同等というのはおおよその同等ですよ。厳密にきっちりと数学の方程式みたいにちゃんと言えって言ったって、言えない中身だ。ぼくはそう思う。
もう一つ、いちばん大変なことは、大卒・高卒の就職試験と、今度の病院の跡継ぎを決めるのは、全然違う。医者は、空白のままたくさん大挙している、待っている状態ではない。それぞれどこかに勤務して、全国に散らばっている。これを拾い集めてくるのは大変。これをよく協会は引き受けてくれたなと思う。協会とて神様じゃないから、そんな多くの職員を集めることは不可能だったんじゃないかな、最初から。だけどやってみなければ分からないというところはあります。やってみた結果、最終的には、日大の現況と今度の協会が集めてきたあれ(人数)には差異が出てきた。これは致し方ないことじゃないか。
(略)
記者 今の質問に関連するが、もし最初から「日大と同等はなかなか難しいと思うが」と言った場合、区長としてどんなことを危惧された、ということなのか。
区長 最初から「後継は日大には及びませんよ」「とても医者も集められないよ。だけども」と、その「だけども」は使えないですよね、区民に向かって。だから「最大の努力をする」ということで、ご理解いただくほかないですよ。
記者 もし言った場合には、区民に伝わらならない…、どうして言えないと判断されたのか。
区長 最初から、そんな100%埋めることはできません、そういうことは言えませんよ。
 記者 なぜそれを言えないか、ということなんですけど。
 区長 だって混乱しちゃうじゃないか。信用されなくなっちゃうでしょ、新しい病院が。そういう心の機微はご理解いただけるんじゃないか。
 記者 今回、言っていることと現実が違うから信用されてなくて、運動が大きくなっていったという印象を持っているんですけれど。
 区長 そういうことはないですね。
琴尾副区長 そもそも公募のときに、区として4事業、重点医療、今まで日大がやってきたことはちゃんとそろえてください、そのためにスタッフも揃えてくださいということで募集をした。提案書の中で、98人の医師を揃えますと、振興協会からでてきた。私どもとしてはそれちゃんとやってくださいと要請はしてきた。
ただ先ほど申し上げたように、協会としては日大の医者が残ってくれることを期待して織り込んでいた。それが日大さんのご事情でできなくて、こんな事態になってしまった。そういう意味では、結果として約束した通りにならなかった。それは協会としても区としても、区民の皆さんには申し訳ないと思っています。
だからといってダメだというわけにはいきませんので、とにかく一日も早くスタッフを揃えて充実した医療をできるように、協会さんにお願いしていただくということが、区の立場です。
区長 私は冒頭申し上げたように、練馬区は医療資源に非常に恵まれてない。そう危惧していながら、後釜がいないからって空白ができて、そうなると継続でなくなる。病院の継続でなくなる。新規病院を設立するとなると、そうすると別の扱いになる。都庁との話し合いでも、別の話になる。医療機関といっときも空白を置けない。そういう仕事だった。ウソ言ったんじゃないか、公約違反じゃないかと言われるけれど、継続・承継する病院がなかったと思われたら、新規の病院をつくることもおぼつかない。空白が完全にできてしまう、何カ月もね。



一般企業が株主総会でこんな事やらかしたら、クビどころか個人訴訟も避けられない問題発言なんですが、そういう意識は全くないようですね?
こんな真っ赤な嘘が「努力義務」の一言で踏み倒されるなら、東電の想定外すらかわいく思えてきます


あえて繰り返しますが、日大の練馬撤退は決して避けられない事件ではありませんでした
…練馬区が、20年踏み倒してきた50億円の返還を決めれば、ね。
区長と副区長のいう「日大の事情」というのは、「練馬区が50億円を踏み倒していること」であることは決して忘れてはいけません


しかも、日大の後継には4法人(最終段階では2法人)が手を上げていたわけで、日大と同等は無理であると最初から認めていれば、各地の新設病院で当初予定の医師数を割り込んでいる地域医療振興協会以外に受け皿がありました

そういうことを完璧スルーして責任転嫁も甚だしい


ちなみに協会のいう「98人」は、スタート時点では70人程度であったことから守れていないのは明白で、そもそも本当にそれだけ集められる予定があったのかも疑問ですが、
仮に協会のいうとおり98人集まっても、日大に比べれば24人も少ないわけで…日大の医師が自治医大系列病院に24人(日大練馬の20%)も残るなんて、あり得ないって事くらいわかります
つまり、協会も最初から日大と同等は無理という認識はあったはずです

T県の某市立病院をKI大が附属病院化した際の大騒動を全く知らないのか知ってて無視しているのか… ここまでくると、不適切な関係があるのではないかと勘ぐりたくもなります


とどめに、練馬区が医療資源に非常に恵まれていない???
どっかの神奈川県知事と同じこと言ってますが、
埼玉と千葉に謝れ!


この人、区長なので、医学部新設要請を出した全国市長会にも当然名を連ねているわけで

こういう人たちが要求する「医学部新設」なんて、絶対認めてはいけないでしょう

2012年6月10日日曜日

医学部新設は僻地の医師を増やさない

前回に続いて医学部新設ネタです




全国市長会、大学医学部新設を決議 地域医療の充実求める
全国市長会(会長・森民夫新潟県長岡市長)は7日までに、大学医学部の新設による地域医療体制の充実などを求める決議を採択し、政府・民主党と自民、公明両党に実現を要請した。
決議は、医師の不足や地域・診療科間偏在の実態を踏まえ、安心で質の高い医療サービスを安定的に供給するよう強調。そのために「医学部を新設して地域に根差した医師を養成するなど、医師の絶対数を確保するべく、即効性のある施策と十分な財政措置を講じる」ことを求めた。
社会保障制度の充実強化に関する決議に盛り込んだ。ほかに東日本大震災の復旧・復興など五つの決議も採択した。
東北75市でつくる東北市長会(会長・奥山恵美子仙台市長)は5月の総会で、同様に医学部新設を求める特別決議をしている。5日には、奥山市長らが関係省庁への要望活動を行った。
東北市長会事務局の仙台市は「全国市長会はこれまでも医師不足解消を要望してきたが、医学部新設が盛り込まれたのは初めて。東北の特別決議も反映された結果と受け止めている」と話した。
河北新報社は、東日本大震災からの東北再生に向けて「地域の医療を担う人材育成」を提言。その中で、仙台に臨床重視の医学部を新設し、慢性的に不足している病院勤務医の養成を推し進めるよう促している。



さて、現地の医学部新設推進派はこう言っているわけですが…反対派が何故反対するかというと、そもそもこの推進派の主張に懐疑的だからです



1.医学部新設は地域医療体制を充実させる

まずここが問題になるわけですが、これには先例がありましたね?
35年ほど前の一県一医大考想と、10年弱前から始まった地域枠の評価が必要です

かつて、一県一医大考想があり、このため、全ての県に医学部(主に単科大)ができました

医学部新設が地域医療体制を充実させるかどうかには、まず一県一医大考想がその目的を果たしたのかどうかを検証しなければなりません
しかし、その検証はされてません…というより、現在も医師不足が続いている以上、少なくとも一県一医大考想は成功していないということになります
ぶっちゃけ、県の面積の半分くらい放棄している医大なんていくらでも思いつきます
そうなった原因は、元医学部長様が説明してくれています

「東北再生 あすへの針路」
2012年06月08日金曜日
<交付金減少、危機感が本音>
秋田大の医学部長を6年間務めた。
在任中、最大の課題は「いかに地域に定着する卒業生を育てるか」だった。
「地域枠」を設けたにもかかわらず、卒業生はなかなか地元に定着しなかった。
問題は今の医学部が「医療職人」の養成場になっているからではないか。
職人養成なら「総合病院の方が症例数も充実している」と学生が考えるのもうなずける。
全国医学部長病院長会議が「教育者の引き抜き」などを理由に医学部新設に反対している。
本音は大学が増えれば自分の大学に配分される運営交付金が減らされることへの危機感以外にない。
(仙台市青葉区・精神科医・飯島俊彦・68歳)


なぜここまでしっかりと現状把握されていながら、ゲスの勘ぐりとしか表現できない結論に至るのか理解に悩みますが…だからこそ定着しなかったのではないかと…
要は、医師免許というフリーパスを得てしまえば、症例の限られてる僻地に永久就職を希望する若手はいないということです
もっとはっきり言ってしまえば、限界集落には医師も近寄らないということです


結局、「医学部新設」も「地域枠」も地方の医師不足対策には特効薬なり得ないということです

僻地医療対策として医学部を新設するならば、地域限定医師免許を発行する意外にないでしょう
ただ、これには色々法改正が必要なので簡単にはいきません
現行法の枠内で、地域枠では卒後10年程度の病院を拘束している県もあります


しかし…まぁ、医師過剰のアメリカですら僻地や貧困地区は医師不足にあえいでいるらしいと聞いていますし、日本の病院限定の地域枠の1つは、しばらく前の卒業時に大量離叛を招いていることが報道されてますので、それで日本の僻地に若手が増えるかというとものすごく疑問ですが

また、新設にしろ就職先限定地域枠にせよ同じ欠点を抱えています
それは、来春から始動できたとして卒業までに6年、研修終了までに8年かかるわけで…

2.医師数増員は速効性のある施策か

という点においては明確にNoなわけです
こればっかりは単純な算数なのでどうしようもありません

医師数増員は、あくまで長期策でしかないのです
また、今から地域枠に手を加えたしたところで、初期研修が終わるまでにはどんなに最短でも、2020年になっています
医学部新設などしたら、2025年くらいになるでしょう

そのころには、日本の人口構造は今と全く変わります
地方は高齢化率は減少に向かい、逆にベッドタウンは激増します

つまり、今から10-20年後の医療事情に対処するために医学部新設をするなら、つくるのは僻地じゃなくてベッドタウンなのです




人口動態変化を無視した医学部新設には全く理はありません

2012年5月30日水曜日

医学部新設議論各論

気がついたら年度あけて引っ越し後に一度も更新してませんでした(^^;)

新生活も落ち着いたのでこれからはちょいとペースを戻していきたいと思います


さて、今回は医学部新設議論です


これについては、国がパブコメで医学部新設意見募集したら6割賛成意見
ただし、その多くは「特定地域」からの「テンプレ投稿」だった


というわけで、首長が医学部新設要望書を出したら今度はそこの県医師会が反対意見表明という感じでその後の場外戦が半年近く続いている状態です




被災地では仙台厚生連がねばってるようですが、どうにも突っ込み満載です



目黒泰一郎・仙台厚生病院理事長に聞く


――そのほかの状況はいかがでしょうか。東北大学との話し合いはされたのでしょうか。
 まだお話はしていません。
<略>
――これまで県医師会と直接話し合いの場を持たれたことは。
 そのような提案はしていますが、結局、声がかからないまま、医学部新設の反対決議をされました。
 東北大学はこの4月に医学部長が代わったばかりだったので、話し合いは少し落ち着いてからでいいのでは、と考えていました。また我々には、「県医師会は、医学部新設については当面は、イエスともノーでもない」という中立の立場を取る期待があったことは事実です。

――それは何らかの根拠があるのでしょうか。
 はい、ある程度の理由はあります。そのように主張される理事の方もおられ、そうなっていくようにも聞いていました。このような早さで、県医師会が見解を出すとは考えておらず、我々の読みが甘かった。また東北大学についても、3大学がまとまって、行動に出ることは、残念ながら予測していなかった。

――先生方は、文科省の検討会が一定の方向性を打ち出した後に、関係者などと話し合うというスケジュールを考えておられた。
 そうです。パブコメも募集したので、今年3月くらいまでに何らかの方向性が出るのかとも考えていた。それにより、世論も動いてくると思っていました。しかし、結局、その前に東北大学、県医師会が動いたわけです。その意味では、遅れを取ってしまった。


――医学部新設への反対理由として、「地域の病院の医師が、教員として集められるので、医師不足が加速する」ことが挙げられます。
全く新規に病院を作ることになれば、大学病院でなくても、地域の医療機関から医師を招くことになるので、そうした現象は起こり得るでしょう。しかし、今は病床規制が非常に厳しく、それはできません。したがって、結論としては、既存病院を生かして大学附属病院を作るしかないのです。新たな病院を作るわけではないので、周囲から医師を吸引することはありません。
また当院および協力病院の西日本の病院は、今でも臨床実習ができる体制になっています。医師を新たに確保する必要はない。一方、大学で座学を含めた教育を担当する教員は、最低で140人という設置基準になっています。この基準が、医学部が新設される際に、そのまま適用されるかどうかは分かりませんが、現在はこの基準であり、少ない大学でも200人を超す教員がいます。
こうした大学の教員陣が今いるのは、地域の病院ではなく、大学医学部あるいは大学病院。東北大学が最終的には一番多くなるかもしれませんが、全国の大学などから教員を募集すれば、医学部を新設する地域では、100人、200単位で医師が増えることになります。


えーと、この理事長様は「根回し」って言葉をご存じないのでしょうか?
しかも、他大学の医師は吸い取るって思いっきり言ってるんですが、その後いなくなった医師を補充するために地域から大学に医師を呼び戻すから結果的に地域の医療崩壊が進むってみんなずっと言っているのを全く理解してないんですね
なんか、医師会がまったく相手にしない理由が想像できてしまいますが…


どちらかというと被災地よりも最近ホットになりつつあるのが関東です





医学部新設反対派に反論、黒岩知事と高木理事長

シンポで神奈川県と国際医療福祉大学の構想語る

2012年5月20日 橋本佳子(m3.com編集長) 

 神奈川県では今年4月、「神奈川県医療のグランドデザイン(案)」を公表(案は、県のホームページに掲載)、5月17日までパブリックコメントを求めていた。黒岩氏は、「報告書では、医学部新設については両論併記になった。しかし、県の方針としては新設を目指す。県医師会が最も抵抗を示さずに医学部新設ができるかを、知恵を絞り、今動いている」と説明。2011年12月に国に指定された「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」で、「開かれた医療のショーウインドーのような医学部」を作り、例えば英語で教育し、附属病院も外国人医師や看護師が働く、自由診療を行うなどの新しいタイプの医学部を目指すとした。
略>
 長年、ジャーナリストとして仕事をしてきたが、救急救命士の業務範囲の拡大や准看護師の廃止など、医療の様々な問題を訴えると必ず医師会と全面戦争となった。医師会が反応することは、患者さんにとってはいいことだということ。しかし、神奈川県の知事となったからには、そうはいかない。神奈川県の医師会とは仲良くし、日本医師会とは戦うということでやってきている。  




という風に最初は医師不足対策ということで医学部考想上げていたはずなのですが、被災地での医学部新設議論が事実上ポシャったあたりから 「医学部教育改革」をおりまぜたりして搦め手を入れています
が、そもそも、首都圏で複数の医学部を持つ、地理的に非常に恵まれたはずの神奈川に「医学部が足りないから医師不足」という論調は成立しないわけで、県の無策と魅力のなさを全国に喧伝しているだけです。神奈川県知事は千葉県と埼玉県に謝れとまで書いてる人もいましたねw


まぁ、どう考えても新設ありき論調で、新設にしなければけない理由は全くなくしかもまともな医師からすればあまりにも非現実的なプランでありどの掲示板やブログみてもまともに相手をされていません



ちなみにこの神奈川県のパブコメですが面白いオチが付きました





医学部新設、医師会が反対投稿要請…神奈川県の意見公募で

 国の特区制度を活用した医学部の新設などを柱とする神奈川県の「医療のグランドデザイン」をめぐり、県が意見を公募した「パブリックコメント」に対し、医師会側が反対意見の提出を会員に文書で求めていたことが29日、わかった。黒岩知事は反対意見が大半を占めた結果に「あまりにも偏り過ぎで、大変な違和感を持っている」と反発しており、知事と医師会の関係に影響を及ぼしそうだ。
<略>
 県によると、17日で募集が締め切られた意見の総数は634件で、医学部新設に関する意見446件のうち、反対は424件、賛成は15件、その他7件だった。
 これに対し、知事は29日の定例記者会見で「反対意見のうち、同じ様式のものが3パターン、計196件あった。幅広く県民の意見を聞く中で、非常な違和感を覚える」と批判。「医師会」との名指しは避けたが、「何かあったんじゃないかなと思わざるを得ない」と述べた。
(2012年5月30日 読売新聞)




とまぁ、完全に国のパブコメの意趣返しですなw

まったく、県医師会と仲良くできてないじゃないですかwww

しか同じ様式のものなかったことにしても、250228件反対なのは変わらない事実なワケでそこについて素直に言及していないのは為政者失格かと



あと、妙に熱心な栃木国際医療福祉大ですその現実性に疑問符が掲げられています



【高木邦格・国際医療福祉大学理事長の発言概要】
 私は本当に(医学部新設に反対する理由が)よく分からない。今、私どものグループには、まず附属病院(4カ所)に400人近い医師がいる。そのほか、山王病院や高木病院など、私どもの関連病院を含めると、八百数十名の医師がおり、非常に健全な経営で維持している。
200人前後の教員を増員すれば、それこそ旧七帝大以上の充実したスタッフになるのではないかと想定している。
 4カ所の附属病院は一応、黒字で動いている。平均年収1200万円で200人の教員を確保する場合、24億円程度が必要。そのほか、医療機器など(の購入費)も想定していくと、私は年間授業料200万円で十分にやっていけると考えている。私立医大は、平均で20億円の私学助成を受けている。
 またこれは地方の問題。民主党政権ができた時に、地方分権とあれだけ言われた。私が不思議なのは、神奈川県知事が作りたい、神奈川県には医師が不足していると言っているのに、国が規制するというのは何なのか。新潟県の知事も、一生懸命に活動されている。地方自治体の関与、授業料の問題、いろいろなことを条件にして、できるだけ早く新しい医学部を認めてほしいと思っている。私は授業料は200万円くらいの水準で十分にできることを確信している。


まず根本的にこの200人増員をどこから持ってくるつもりなのか?
当然外からまかなえる人数ではありませんしだからといって関連病院から引きはがすのは非常に健全な経営ぶちこわす恐れがありますなにせ、病院は医師が収入源なのですからそこまで計算しているのかどうか疑問です

そもそも、歴史ある私立を見るに授業料200万で医学部が成立するのかどうかという基本的な疑問がありますなにせ、あの莫大な資金源を持つ慶応ですら300万ですからね

また、地方自治訴え国の関与を求めながら補助金きっちりもらうつもりというのも不評の一因でしょう








とまぁ、こんな感じで既存医学部勤務医どころか地元医師会開業医からさえも絶賛反対中医学部新設ですが、決して合理性なく反対しているわけではありません


また仮にこの反対を無視して強行的に新設することは可能なのかという問題はこれまで全く触れられていないように思いますが、正直言ってこれは無謀です

今どき紹介逆紹介ない中核病院は存在せずぶっちゃけ、どれだけ困ったちゃん地元医師会でもビジネス上のつきあいくらいはうまくできてないと経営自体影響します



また、大学病院でも自分の手に負えない症例なんていくらでも出てきますが、そういうときに他の医学部と良好な協調関係を築けているかどうかは重要です


つくる前から没交渉の新設医学部附属病院なんてハイリスク以外なにものでもありません