2012年6月13日水曜日

期待を裏切らない練馬区長

練馬光が丘病院 日大撤退シリーズ、残念ながら続編です
過去編はこちら

日大の変
日大練馬 その後
地域医療振興協会への重大な懸念
続・地域医療振興協会への疑念
練馬区の一週間戦争

どうにかこうにかはじまった地域医療振興協会版ですが、まぁスタートから予想通りです
産婦人科は分娩・入院・夜間対応はおそくとも9月までには…ってかかれてますが、いまの時点で決まってないのはやばいのでは?

外来表も、毎週のように更新されているようですが…
医師の募集要項もみてみましたが、「年齢制限 不問」「採用人数 多数」「給与 面接時にご説明いたします。」ってはじめてみましたよ、こんなの…

まぁ、今回は協会をいじるのはメインでないのでこの辺でやめときますが、とりあえず、予想通りに人手不足で、まかりまちがっても
「日大と同程度」「区民に迷惑はかけない」
病院機能ではないのは明らかです

…ですけど、ここで、予想通りに居直った人が出てきました



光が丘病院問題 “最初から同等は無理”の区長発言の波紋 区議会委員「真意確認を」


(略)
委員会では土屋俊測委員(オンブズマン)が「区は当初から同等の医療を提供すると説明し、委員会はそれを前提に審議してきた。後から区長が『リップサービスだった』と述べるのは許し難い」と区に釈明を求めた。
(略)
志村区長 情報提供の見方は分かれるだろう。私どもは、日大は平成3年から21年間やってきた成果を見れば技術、医療の内容、高く評価していいと思う。
ただ日大だって20年の時間をかけて大きく成長してきた。だから、新しい病院、後継がすぐにそれと同じ規模、イコールでいけるはずが本来ない。
「約束したじゃないか」とよく言われる。新しい病院は日大に遜色ないものを設けますと、最初っから無理な話。日大と同等の医療はできるはずがないけれども、なんて言ったらば、これはどうしようもないこと。
後継の病院として、区民に対しても一生懸命やるからということで、ひけをとらないようにしますと言わざるを得ない。それでないと、お医者さんも集まらない。先行きどうなるか分からないような病院には就きたくはないというのが人情だ。希望は大きく、「日大に匹敵できるような病院にしたい」。こういうふうに思うのが当然だろうし、それを求めてわれわれも後継を選んできた。そんなところでご理解をいただきたい。
 記者 確認ですが、新しい病院は、当初から日大と同じレベルでいくのは難しいだろうと、区長としては思っていたということですね。
 区長 まあねえ。それもまたそうなんだと。努力義務というものがあるでしょう、行政には。だれにでも努力義務はあるんですよ。努力して全うできれば一番いい。だけどほとんど難しいかな。さっき副区長が申し上げたように、私だって日大の医者は少しでも残ってくれると思っていたし、そういう情報は持っていた。だが、日大は頑なに全部引き上げだと、総引き上げだと。
私は1月の会見で日大は区民、病人を捨てていくのかという言い方をしました。医者に聞いてくださいとつけた。でも報道されなかった。聞いてくれれば、医者も本当は残って手伝うと聞かされたはず。でも一つも受けてもらえなかった、記者さんたちにね。私どもは日大の医者に直に聞くのは立場上難しい。医者・看護師に記者さんから聞いてくださいという意味だった。聞いてくださいが省略されちゃって、私が、日大は不人情だと、診療をお願いしている区民を裏切るととられちゃったんで、非常にがっかりした。
(略)
記者 区長にうかがう。話が戻って申し訳ない。新しい病院を維持するとき、日大と同等規模というのは努力義務という認識だったということだが、これを区民に発表せず、あくまで同等の規模ということを一貫して述べてこられた。混乱をきたすからという考えは分かるが、一方、本当のことを知りたいという思いも区民にあったと思う。説明会の席上でどうなっているのという意見がかなりあったのも、一つの根拠としてあったと思う。耳に届いていたと思うが、どうご覧になっていたか。
区長 私が思うのは、同等にするということ自体が素人だと、さっき申し上げた。医療のあり方、中身、これについてだれが判断するんですかということ。同等というのはおおよその同等ですよ。厳密にきっちりと数学の方程式みたいにちゃんと言えって言ったって、言えない中身だ。ぼくはそう思う。
もう一つ、いちばん大変なことは、大卒・高卒の就職試験と、今度の病院の跡継ぎを決めるのは、全然違う。医者は、空白のままたくさん大挙している、待っている状態ではない。それぞれどこかに勤務して、全国に散らばっている。これを拾い集めてくるのは大変。これをよく協会は引き受けてくれたなと思う。協会とて神様じゃないから、そんな多くの職員を集めることは不可能だったんじゃないかな、最初から。だけどやってみなければ分からないというところはあります。やってみた結果、最終的には、日大の現況と今度の協会が集めてきたあれ(人数)には差異が出てきた。これは致し方ないことじゃないか。
(略)
記者 今の質問に関連するが、もし最初から「日大と同等はなかなか難しいと思うが」と言った場合、区長としてどんなことを危惧された、ということなのか。
区長 最初から「後継は日大には及びませんよ」「とても医者も集められないよ。だけども」と、その「だけども」は使えないですよね、区民に向かって。だから「最大の努力をする」ということで、ご理解いただくほかないですよ。
記者 もし言った場合には、区民に伝わらならない…、どうして言えないと判断されたのか。
区長 最初から、そんな100%埋めることはできません、そういうことは言えませんよ。
 記者 なぜそれを言えないか、ということなんですけど。
 区長 だって混乱しちゃうじゃないか。信用されなくなっちゃうでしょ、新しい病院が。そういう心の機微はご理解いただけるんじゃないか。
 記者 今回、言っていることと現実が違うから信用されてなくて、運動が大きくなっていったという印象を持っているんですけれど。
 区長 そういうことはないですね。
琴尾副区長 そもそも公募のときに、区として4事業、重点医療、今まで日大がやってきたことはちゃんとそろえてください、そのためにスタッフも揃えてくださいということで募集をした。提案書の中で、98人の医師を揃えますと、振興協会からでてきた。私どもとしてはそれちゃんとやってくださいと要請はしてきた。
ただ先ほど申し上げたように、協会としては日大の医者が残ってくれることを期待して織り込んでいた。それが日大さんのご事情でできなくて、こんな事態になってしまった。そういう意味では、結果として約束した通りにならなかった。それは協会としても区としても、区民の皆さんには申し訳ないと思っています。
だからといってダメだというわけにはいきませんので、とにかく一日も早くスタッフを揃えて充実した医療をできるように、協会さんにお願いしていただくということが、区の立場です。
区長 私は冒頭申し上げたように、練馬区は医療資源に非常に恵まれてない。そう危惧していながら、後釜がいないからって空白ができて、そうなると継続でなくなる。病院の継続でなくなる。新規病院を設立するとなると、そうすると別の扱いになる。都庁との話し合いでも、別の話になる。医療機関といっときも空白を置けない。そういう仕事だった。ウソ言ったんじゃないか、公約違反じゃないかと言われるけれど、継続・承継する病院がなかったと思われたら、新規の病院をつくることもおぼつかない。空白が完全にできてしまう、何カ月もね。



一般企業が株主総会でこんな事やらかしたら、クビどころか個人訴訟も避けられない問題発言なんですが、そういう意識は全くないようですね?
こんな真っ赤な嘘が「努力義務」の一言で踏み倒されるなら、東電の想定外すらかわいく思えてきます


あえて繰り返しますが、日大の練馬撤退は決して避けられない事件ではありませんでした
…練馬区が、20年踏み倒してきた50億円の返還を決めれば、ね。
区長と副区長のいう「日大の事情」というのは、「練馬区が50億円を踏み倒していること」であることは決して忘れてはいけません


しかも、日大の後継には4法人(最終段階では2法人)が手を上げていたわけで、日大と同等は無理であると最初から認めていれば、各地の新設病院で当初予定の医師数を割り込んでいる地域医療振興協会以外に受け皿がありました

そういうことを完璧スルーして責任転嫁も甚だしい


ちなみに協会のいう「98人」は、スタート時点では70人程度であったことから守れていないのは明白で、そもそも本当にそれだけ集められる予定があったのかも疑問ですが、
仮に協会のいうとおり98人集まっても、日大に比べれば24人も少ないわけで…日大の医師が自治医大系列病院に24人(日大練馬の20%)も残るなんて、あり得ないって事くらいわかります
つまり、協会も最初から日大と同等は無理という認識はあったはずです

T県の某市立病院をKI大が附属病院化した際の大騒動を全く知らないのか知ってて無視しているのか… ここまでくると、不適切な関係があるのではないかと勘ぐりたくもなります


とどめに、練馬区が医療資源に非常に恵まれていない???
どっかの神奈川県知事と同じこと言ってますが、
埼玉と千葉に謝れ!


この人、区長なので、医学部新設要請を出した全国市長会にも当然名を連ねているわけで

こういう人たちが要求する「医学部新設」なんて、絶対認めてはいけないでしょう

2012年6月10日日曜日

医学部新設は僻地の医師を増やさない

前回に続いて医学部新設ネタです




全国市長会、大学医学部新設を決議 地域医療の充実求める
全国市長会(会長・森民夫新潟県長岡市長)は7日までに、大学医学部の新設による地域医療体制の充実などを求める決議を採択し、政府・民主党と自民、公明両党に実現を要請した。
決議は、医師の不足や地域・診療科間偏在の実態を踏まえ、安心で質の高い医療サービスを安定的に供給するよう強調。そのために「医学部を新設して地域に根差した医師を養成するなど、医師の絶対数を確保するべく、即効性のある施策と十分な財政措置を講じる」ことを求めた。
社会保障制度の充実強化に関する決議に盛り込んだ。ほかに東日本大震災の復旧・復興など五つの決議も採択した。
東北75市でつくる東北市長会(会長・奥山恵美子仙台市長)は5月の総会で、同様に医学部新設を求める特別決議をしている。5日には、奥山市長らが関係省庁への要望活動を行った。
東北市長会事務局の仙台市は「全国市長会はこれまでも医師不足解消を要望してきたが、医学部新設が盛り込まれたのは初めて。東北の特別決議も反映された結果と受け止めている」と話した。
河北新報社は、東日本大震災からの東北再生に向けて「地域の医療を担う人材育成」を提言。その中で、仙台に臨床重視の医学部を新設し、慢性的に不足している病院勤務医の養成を推し進めるよう促している。



さて、現地の医学部新設推進派はこう言っているわけですが…反対派が何故反対するかというと、そもそもこの推進派の主張に懐疑的だからです



1.医学部新設は地域医療体制を充実させる

まずここが問題になるわけですが、これには先例がありましたね?
35年ほど前の一県一医大考想と、10年弱前から始まった地域枠の評価が必要です

かつて、一県一医大考想があり、このため、全ての県に医学部(主に単科大)ができました

医学部新設が地域医療体制を充実させるかどうかには、まず一県一医大考想がその目的を果たしたのかどうかを検証しなければなりません
しかし、その検証はされてません…というより、現在も医師不足が続いている以上、少なくとも一県一医大考想は成功していないということになります
ぶっちゃけ、県の面積の半分くらい放棄している医大なんていくらでも思いつきます
そうなった原因は、元医学部長様が説明してくれています

「東北再生 あすへの針路」
2012年06月08日金曜日
<交付金減少、危機感が本音>
秋田大の医学部長を6年間務めた。
在任中、最大の課題は「いかに地域に定着する卒業生を育てるか」だった。
「地域枠」を設けたにもかかわらず、卒業生はなかなか地元に定着しなかった。
問題は今の医学部が「医療職人」の養成場になっているからではないか。
職人養成なら「総合病院の方が症例数も充実している」と学生が考えるのもうなずける。
全国医学部長病院長会議が「教育者の引き抜き」などを理由に医学部新設に反対している。
本音は大学が増えれば自分の大学に配分される運営交付金が減らされることへの危機感以外にない。
(仙台市青葉区・精神科医・飯島俊彦・68歳)


なぜここまでしっかりと現状把握されていながら、ゲスの勘ぐりとしか表現できない結論に至るのか理解に悩みますが…だからこそ定着しなかったのではないかと…
要は、医師免許というフリーパスを得てしまえば、症例の限られてる僻地に永久就職を希望する若手はいないということです
もっとはっきり言ってしまえば、限界集落には医師も近寄らないということです


結局、「医学部新設」も「地域枠」も地方の医師不足対策には特効薬なり得ないということです

僻地医療対策として医学部を新設するならば、地域限定医師免許を発行する意外にないでしょう
ただ、これには色々法改正が必要なので簡単にはいきません
現行法の枠内で、地域枠では卒後10年程度の病院を拘束している県もあります


しかし…まぁ、医師過剰のアメリカですら僻地や貧困地区は医師不足にあえいでいるらしいと聞いていますし、日本の病院限定の地域枠の1つは、しばらく前の卒業時に大量離叛を招いていることが報道されてますので、それで日本の僻地に若手が増えるかというとものすごく疑問ですが

また、新設にしろ就職先限定地域枠にせよ同じ欠点を抱えています
それは、来春から始動できたとして卒業までに6年、研修終了までに8年かかるわけで…

2.医師数増員は速効性のある施策か

という点においては明確にNoなわけです
こればっかりは単純な算数なのでどうしようもありません

医師数増員は、あくまで長期策でしかないのです
また、今から地域枠に手を加えたしたところで、初期研修が終わるまでにはどんなに最短でも、2020年になっています
医学部新設などしたら、2025年くらいになるでしょう

そのころには、日本の人口構造は今と全く変わります
地方は高齢化率は減少に向かい、逆にベッドタウンは激増します

つまり、今から10-20年後の医療事情に対処するために医学部新設をするなら、つくるのは僻地じゃなくてベッドタウンなのです




人口動態変化を無視した医学部新設には全く理はありません