2011年1月30日日曜日

日医の空論

年末年始と異動と重症患者の三連コンボで1ヶ月ほど更新が滞ってしまいましたが、ブログの更新を再開したいと思います。
一応、当初案では連載から始める予定でしたが、ちょっと予想していなかった医療ニュースが入ってきてますので、まずはそれらを順次消化してからにしたいと思います。

本日のネタは、既に医療ブログでは散々叩かれている日医の1/19づけの定例記者会見「医師不足・偏在の解消策について」です。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110119_1.pdf

話には聞いていましたが、オリジナル見るとその酷さがよくわかります。
歴史に関するところがやたらと長いので、そこは無視して医師会の「改革案」とやらを一つ一つ斬っていきたいと思います。


臨床実習資格試験(仮称)と医師国家試験の改革案
医学部 6 年生は、知識問題を含む医師国家試験対策に多くの時間を割いている実態である。
医学知識については、現在、4 年生の半ば頃から4 年生の終わり頃(大学によって異なる)に受験するCBT でも高度な内容が課されている。
そこで、日本医師会は医学知識の評価はCBT の1 回に絞り込み、以降は、臨床実習によって培われた能力の評価に特化することを提案する。


で、じゃあ国試はどうすんの?という当然の突っ込みが湧いてきますが、その答えがこれです


② 医師国家試験の内容(案)
上級OSCE(Advanced OSCE)と面接試験を課す。
● 上級 OSCE(Advanced OSCE)
「臨床実習免許(仮称)」取得時のOSCE の上級編として位置づけ、臨床実習の成果を問うものとし、プライマリ・ケアを中心とした臨床能力を客観的に評価する。
● 面接試験
医師としての適性を評価し、本人にフィードバックする。


まぁ、理屈の上ではそうそう間違ってないですよ?
でも、ちょっと考えてみて下さい。こういう試験にするために超えなきゃいけないハードルがいくつありますか?5年10年でどうにかなるものではないと思います。
しかも、「医師としての適性」ってなんなんでしょうか?是非とも具体的に教えて頂きたいものです

少なくとも、こういうテストをするためには教育システムの根本的な変更に加え、病院実習を根本から変えなきゃいけないわけですが、問題は、日本国民がそれを許すかです(アメリカのあの病院実習は格差医療があるから可能なのです)
その辺を医師会がどう解決するつもりなのかですが…ものすごい突っ込みどころがあります


日本医師会は、参加型の臨床実習の導入にあわせて、たとえば
・指導医等に対する医師賠償責任保険(医賠責保険)の補助
・学生を対象とした準会員的な制度の新設
などの支援を行なっていくことを検討する。


…えーと?
医師会が学生にエンクロージャかけたいのはよくわかったが、あえてスルーしよう。その前の一文がそれどころじゃないくらい理解できないからな!
とりあえず文字通り解釈するなら、 
学生が何かやらかしたら指導医が個人の医賠責で対応しろ 
ってことですか?!
学生とか研修医以前に、指導医がはだしで逃げ出す様が容易に想像できるのですが、これで体験型病院実習が促進されるって本気で言ってるんでしょうか???
さらにこれで終わらないのが日医クオリティw新会長はなにを錯乱されたのでしょうか?



日本医師会は、医学部教育から初期臨床研修までの 8 年間、一貫して地域医療を学習・研修し、より実践的な地域医療を身につけることを目的に、初期臨床研修は、原則として出身大学のある都道府県で行なうことを提案する。
またこれにより、医師が地域への愛着を深め、ひいては医師の地域的偏在の解消の一助となることを期待する。


「希望を持つのは勝手だが、期待を持ってはいけない」と言った高名な先生がいらっしゃいますが、是非とも日医にお説教して頂きたいです

医師会の理事の方々
臥薪嘗胆って言葉、ご存じ?
なんでこれで郷土愛が芽生えると思えるのか理解不能
いや、まさか舛添大臣(当時)すら憲法違反と喝破した官僚のゴミ案をまさかの日医が持ち出してくるとは…

そもそも、現実問題として法律以前にあり得ないんですけどね…
私のいる県、研修医の募集定員が病院が責任もって研修できる数を無視して設定されている(研修担当者談)のですが、そのムリな募集人数を県内全部足しても、来年度の医学部新入生の定員に届きませんwwwww

第一、世間のイメージとは逆に、実際には大都市は研修制度が始まってから研修医が激減しています。
また、研修医が増えたその周辺地域は地方に散った医学生が帰ってくることで、ギリギリ低空飛行で地域医療がもってます
これ以上引きはがせば、大都市圏の医療はこんどこそ致命傷ですよ?

たとえば千葉県は船橋市一つで鳥取県と同等の人口があります。千葉県も鳥取県も、医学部は一つです。
研修医が出身大学に拘束されることになれば、千葉は医師不足で医療が崩壊し、鳥取はオーバーフローで研修が崩壊します。
誰も嬉しくない結果になるのは明白ですが?
こんな一見したところ地方医大が狂喜乱舞しそうな案を医学部や大学附属病院が一度も言い出さないことの意味を考えて頂きたいですね

さて、これで終わってくれればよかったんですが、まだまだオチが続きます


日本医師会は、初期臨床研修修了者を、日本医師会認定「一般臨床医(仮称)」として認定する。

そういや、さっき

・学生を対象とした準会員的な制度の新設 


とかいうのがありましたね?
いつから日医は強制加入になったwそれとも、新手の押し売りか?!



なんというか、悪意を極力もたないように見ているつもりなのですが、どうみても、プロ集団としての提案ではなく、ただの利権争いです
それだけなら全力でみんなでスルーすればいいだけなのですが、このpdfにある「都道府県医師研修機構」とか気になるんですよね
なんか、読売の医師強制配置システムと類似しているような気がするのですが…

場合によっては、研修病院がバスチーユ監獄と化すぞ?

2011年1月16日日曜日

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いつの間にか松の内も終わってしまいました
年末からバタバタしていて更新ができない日が続いておりますが、本ブログは今年も継続していきたいと思います
どうかよろしくお願いいたします