しかし、その事実は霞ヶ関からすっぱり切り捨てられており、 医療機関の問題としています 。
ですが、たかが一医療機関にできることなど限られており、私のいる大学も、虐待防止委員会が現実的なレベルに達しておらず、仮に希望者が出ても、臓器提供は不可能な状態です
法改正から11ヶ月経つにもかかわらず、まだ2011/4/12の1例しか行われていないことが、この問題の深刻さを物語っています
そんな中、この一週間で急に動きがありました
正直に言えば、小児提供の一例目が出たことで雪崩を打ったように続出するかと思っていましたが、そんなことはなく、まるであの提供が例外であったかのようです
そして、研究班は現状では「可能な限り小児からの臓器提供は行わない」としか解釈できない超安全策を提示しました
1例目の後に、これだけ「死因が誰から見ても明らかであること」が強調されると、何か裏があったのではないかと勘ぐりたくもなりますが…
脳死移植:新マニュアル作成 虐待の判断、厳格化
改正臓器移植法が昨年7月に全面施行されたのを受け、厚生労働省研究班(研究代表者、有賀徹・昭和大教授)は、脳死判定と臓器移植に関わる新たなマニュアルを作成した。改正法の運用指針(ガイドライン)では虐待を受けていた18歳未満からの臓器提供ができない。新マニュアルでは医療機関に対し、臓器提供に関係なく全ての重症例について虐待の有無を判断するほか、担当医が臓器提供について説明する前に院内の虐待防止委員会の助言を得るなど、虐待例の紛れこみを防ぐ厳格な体制作りを求めた。
運用指針では、虐待を受けた小児からの臓器提供を防ぐため、医療機関に虐待防止委員会の設置と虐待の有無をチェックするマニュアルの整備、児童相談所などとの連携を求めているが、具体的な虐待の判別方法は示されていなかった。
今回作成された新マニュアルでは、患者が虐待を受けていないと判断できるのは、第三者の目撃のある家庭外事故で傷に不審な点がない▽乗り物に乗車中の交通事故▽誤って物を飲み込んだことによる窒息事故で第三者の目撃がある▽患者の病気が明確で不審な点がない--などの場合と例示。日常的に虐待の有無を判断する体制を整えた施設のみ小児臓器提供の実施を容認する姿勢を明確にした。
【藤野基文】
毎日新聞 2011年5月27日 2時30分
小児からの臓器提供推進派からは生温いという声が聞こえてきそうですが、実際に小児の三次病院にいる身としては、ギリギリの妥協点だと思います
そもそも、虐待発見の本務は医療機関ではありません
医療機関で発見される時点で、関係機関の敗北です
児童相談所がその本分を発揮しているとは言い難い状況ではどうしようもありません
そんな中で、児童相談所にとうとう「強権」が与えられました
虐待防止へ親権2年停止可能に 民法改正案が成立
2011年5月27日13時33分
児童虐待を防止するため、親権を最長で2年間停止できる新制度を柱とした民法と児童福祉法の改正案が27日、参院本会議で全会一致で可決され、成立した。親権を制限するには親子関係を断つしかなかった現行制度を変更し、虐待する親から子を引き離しやすくするのがねらい。来年4月から施行される見通し。
現行の民法には、20歳未満の子の親権を親から奪う「親権喪失」の制度がある。ただ、期限の定めがないため、虐待被害の対応にあたる児童相談所(児相)などが親子関係の断絶につながりかねないことを懸念して申し立てをためらうケースが多く、虐待防止の有効な手段になっていないと指摘されてきた。
改正法では「親権の行使が困難または不適当で、子の利益を害する場合」に、2年以内の範囲で親権を停止できるようにする。また、親権喪失が認められる場合も「虐待または悪意の遺棄がある」「子の利益を著しく害する」などの条件を明確にした。
これまで親権喪失の宣告を家裁に請求できるのは子の親族か検察官、児相所長だけだったが、改正法では範囲を拡大し、虐待された本人や未成年後見人でも親権の喪失や停止を請求できるようにした。家裁が審判を行い、親権停止の場合は子の身体や生活状況などを考慮して期間を定める。
親権の内容も修正された。監護や教育は「子の利益のため」と明記。必要な範囲で子を「懲戒」できるとしていた懲戒権の条文は、「しつけを口実にした虐待につながる」との指摘があったことを受けて、「監護および教育に必要な範囲内で」と改められた。
さらに、親がいない子の世話をする未成年後見人については、「個人で1人だけ」との規定を削除。担い手不足への対応や施設退所後の子のケアを考え、複数の個人や法人でも選任できるようにした。
緊急時に素早い対応ができるよう、虐待された児童が入所する児童養護施設などの施設長の権限も強化した。施設長が子どもの福祉のために必要な措置を取る場合、「親が不当に妨げてはならない」と明記され、子の生命や安全を守るため、緊急時には親の意に反しても対応できるようになった。児相の所長にも、同様の権限が与えられた。(田村剛)
◇
〈親権〉 未成年の子を育てるために親が持つ権利と義務の総称で、民法に規定されている。子を保護監督して教育する監護教育権や、しつけをする懲戒権、住む場所を決める居所指定権や財産管理権などが含まれる。現行民法では、親権の乱用があるときに家庭裁判所が親権の喪失を宣告できる。親権者がいなくなったときは、保護監督や財産管理をする未成年後見人が選任される。
一言で言ってしまえば、来年4月からは児相は言い逃れができなくなると言うことです
やっと、本務に見合った権限が与えられたというところですが、後はそれを末端の職員が高い意識を持って実行できるかです
では、児相が権力を手にしたところで、医療機関との連携体制はどうなってるかというと…
自治体9割超対応未定 子どもの脳死移植 児相への虐待照会
5月8日(日)
子どもからの脳死臓器移植の際、虐待の有無の確認を求められる可能性が高い児童相談所(児相)の対応方針を決めているのは、児相を運営する都道府県と政令指定都市など計69自治体のうち、長野県を含む5県・1市にとどまることが7日、各自治体への取材で分かった。4月に国内で初めて15歳未満の少年から脳死臓器移植が行われ、今後増える可能性もあるが、実施に欠かせない虐待情報の提供について9割を超す自治体が是非を判断しかねている実態が浮かんだ。
昨年7月施行の改正臓器移植法は、虐待の疑いのある18歳未満からの臓器提供を禁止。同法のガイドラインでは、臓器移植を行う医療機関に脳死になった子どもが虐待を受けていなかったかどうかの確認を義務付け、厚生労働省のマニュアルは児相への照会をその方法として挙げている。 だが、東京、大阪など42都道府県と政令指定都市など21市は、医療機関から確認を求められた際にどのように対応するか決めていないとする。
福島県は「個人情報保護条例上、児相外部への虐待情報の提供は難しい。ただ、移植を行う病院にとって児相の情報も重要で、移植医療にどう対応するか検討中」と、結論を出していない。愛知県は「移植医療のためとはいえ、判断がつかない」としている。
これに対し、対応方針を決めている6自治体のうち、長野県は親権者の同意がなければ虐待の有無の照会には応じない。虐待情報の提供は、県個人情報保護条例が禁じる「情報の目的外使用」に当たると判断した。福岡県も同様の対応で、親権者が同意しない場合は虐待の疑いがあると判断する方が、より厳密に臓器摘出の対象から虐待疑いの子どもを除外できる-とする。
一方、新潟、秋田、埼玉3県と仙台市は親権者の同意がなくても虐待情報を提供する。移植医療に必要な情報の提供は「公益上、必要な理由がある」(新潟県)などとしている。
厚労省臓器移植対策室は「情報提供の体制整備が急務だが、国が全国統一の方針を打ち出すのは難しい」との立場。自治体側からは「移植医療への対応が自治体ごとに異なるのはおかしい。法に基づいた医療であり、国が統一の仕組みを作るべきだ」(茨城県)との声が出ている。
要するに、
臓器提供を前提にしてすら、虐待情報を医療機関に提供するのは新潟県、秋田県、埼玉県、仙台市のみだということです
この体制下で医療機関が虐待の最終チェックを行うのは不可能です
また、官僚がまたワケのわからん責任放棄発言をされていますが、こんな状況で、
日常的に虐待の有無を判断する体制を整えた施設なるものがこの国にいくつあるのでしょうか?
厚労省内部で行ってることが矛盾しているように思います、
省庁連携ができず、 その最終責任を医療機関にしている限り、いくら法改正しようが 小児からの臓器提供が増えることはないでしょうし、するべきではありません
子どもの権利を絶対遵守するならば、結論は、よけいなメスを入れない以外にはないのですから