2012年3月24日土曜日

練馬区の一週間戦争

地域医療振興協会への重大な懸念
続・地域医療振興協会への疑念
の続き
が早々に来てしまいました

正直、今回ばかりは予想が外れて欲しかったところです…


手続きの遅れと医療水準の未達

迷走が続く新練馬光が丘病院


 累積赤字90億円を理由に撤退を決めた日本大学医学部付属練馬光が丘病院(342床)の後継問題が迷走している。4月1日からは、地域医療振興協会(以下、協会)が後継機関として運営を開始する予定だが、いまだ遅々として進んでいないのだ。
 協会は、病院の開設許可証を得るための第1歩となる事前相談計画書を、3月13日になってようやく東京都に提出。予定は11月だったのだが、医師の引き継ぎ作業などの停滞によって大幅に遅れた。
 通常なら提出を受けた後に都が審査、その結果通知書が出てから開設許可証が降りるまでに少なくても3週間はかかる。とうにタイムリミットは越えた格好だ。
 しかも計画書を出す際には、本来、病院の土地・建物を無償で提供する練馬区と同協会の契約書か、協定書が必須。ところが、その大前提とな同区と日大側の契約の解消すら、いまだに決着の目途はたっていない。
 3月14日に開かれた練馬区議会の医療・高齢者等特別委員会。「何を根拠に、どう契約を解除するのか」(池尻成二区議)との追及に、区の地域医療課は「日大とは、今後、協議していく」と語るに止まった。
 なにより、日大が区に預けている50億円の保証金の返還問題もいまだ話し合いがつかず、平行線のままだ。 
 こうした状況に対し、東京都は医療の空白期間を是が非でも避けたいとして、今後の対応に必死の様相だ。
「計画書の確実性を見た上で、急いで内部決済を取る。契約書については、期日の関係でそれに代わる書面でもかまわない。これまで地域の医療を支えてきたこの病院がなくなっては困る」(東京都医療安全課)

 同病院の外来患者は、年間に約22万人。小児救急では、約9000人を受け入れ、近隣の区市にとっても要となる医療機関だった。
 ただ、今回、都が新病院を認めたとしても、課題は山積している。志村豊志郎区長が明言してきた「現在と同等の医療機能や規模を引き継ぐ」という約束が、果たされていないからだ。
 日大練馬光が丘病院には、常勤医師が122人、看護師290人が働く(今年2月)。これに対して、新病院の計画数は、4月1日時点で常勤医師70人、看護師が180人と約4割も減少する。外来診療は、8科で予定を組めない事態に陥っている。

 そもそも区は、協会の選定理由の一つに「小児医療や周産期医療を維持するために必要な医師数が提案されている」ことを挙げていた。昨年12月7日の住民説明会でも、区は常勤医師数について現病院の「小児科15人、産婦人科5人と同程度を予定」としたが、現状は同9人と2人にすぎない。
 都は「入院と救急を縮小しても、より早い段階で元の稼動状況に戻していただく」と説明するが、その実現は至難の業といえる。
 すでに近隣の病院からは、今後の「小児救急の崩壊」を危惧する声が上がっている。4月以降、試されるのは協会の運営能力だけではない。練馬区と都の指導力も、大きく問われることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)



日大病院後継 常勤医3人多く発表 練馬区「確認不足だった」

 読売新聞 朝刊 2012.03.16
今月で撤退する「日大医学部付属練馬光が丘病院」の後継医療機関を巡り、新たに開設される病院の常勤医師数が、練馬区が14日に発表した70人をさらに下回り、実際には67人だったことがわかった。新病院側が、非常勤医師の勤務時間を積算した結果、常勤医師3人分に相当するとして上乗せしていたためで、区は「認識不足だった」として区議会にも陳謝する方針。
新病院の現段階の常勤医師は、日大病院と比べて54人減となる。区は14日の区議会で常勤医師数を70人と発表。実際には、非常勤医師の勤務時間を積算した分を常勤医師に含めることができる「常勤換算」を入れた人数だったが、区は「常勤換算を含めない常勤医師数」と答弁していた。
都が同日、区側に対し、常勤医師数の答弁で誤りがあると指摘して判明した。区は「新病院が『常勤医師は70人』と言っていたためにそう答弁したが、認識も間違っており、確認も不十分だった」と誤りを認めた。
区によると、新病院の常勤医師については、現在、新病院側が医師の獲得交渉を進めている。開業時の4月には70人を上回る可能性もあるという。




絶対に確信犯だろ、こいつら…

練馬区も、地域医療振興協会も、これで完全に信用は地に落ちましたね
地域医療振興協会以外にも手を上げてくれていた病院はあったわけですし、
普通に考えて、一般企業ならどっちも訴訟ものですけど


とはいえ、はっきりいって都も同罪だと思いますけどね

少なくとも、被害者面する権利は、ない
前々からわかっていたことですし、清瀬の都立小児病院を潰したのだって影響してるでしょうに


近隣小児科がドミノ倒しにならないことを願うのみです

2012年3月16日金曜日

続・地域医療振興協会への疑念

先日
地域医療振興協会への重大な懸念
を書いたばかりなのですが、早速続報が入って参りました

日経メディカル記事なんですが




練馬区によると、4月1日の開設時点で協会が確保した医師数は常勤70人、非常勤40人。日大練馬光が丘病院の常勤121人、非常勤48人(いずれも昨年12月末時点)を大きく下回った。
看護師も、日大練馬光が丘病院の約280人(同)より大幅に少ない180人となった。



とのことですが、先日の新聞報道では「常勤医+非常勤=70人」です
また、都議会議員のtweetでは「常勤医換算で70人相当」と書かれていたそうで、大きく食い違ってます

どれも、元ネタは協会が都に提出した計画書…つまり、同じソースであり、こうまで食い違うのは珍しいというか、ありえないことです


まぁ、これについてはあと2週間すれば自然と結論は出てしまうのですが、もっとも「被害」が少ない日経メディカルが正しいとしても、
常勤医121→70名と常勤医数は58%になります。
これにランチェスターの第二法則を当てるなら、戦力としては33%まで低下
…「壊滅」っていうか「消滅」といっていいレベルですね。軍隊なら回れ右して全力で逃亡するところです

しかもここで1つ問題があります
ぶっちゃけた話をしてしまうと、仮にも大学系列である日大練馬と、地域医療振興協会が慌ててかき集めている医師のレベルが同等であるのかどうかという問題です


「数」と「質」の両面からいって、普通に考えて同等の機能を果たせるとはとても思えませんっていうか、あり得ません


さて、ところで、医師っていうのは実は流民というかフリーランサー的要素が強いので、まだ全国から集められる存在です
一方、どうがんばっても地元で集めなきゃいけない重要な職業として看護師がいますが…ここで64%まで低下ってのは正直、いかんともしがたいのではないかと…

(看護師って医療崩壊の議論からいつも外れがちですけど、実はこういう独法化とか経営移譲のときにいつもネックになる部分です)



最初は退院・転院できなかった入院患者をさばくだけでもギリギリなんじゃないでしょうかね…
練馬区だけ↓を先行した方がいいんじゃないでしょうか



消防庁が出動に緊急度判定基準 軽症なら自力受診を

 救急車の出動件数の増加により、現場到着に時間がかかるなどの問題が深刻化していることを受け、総務省消防庁は14日、119番を受けた担当者が救急出動の必要性を判断するための緊急度判定基準をまとめた。症状に応じていくつかの質問に答えてもらい、4段階で判定。軽度の場合は、タクシーなどで病院に行くよう促し、重度の急患への対応を優先させる。

 消防庁の有識者検討会が同日、判定基準を盛り込んだ報告書を了承。消防庁は9~11月に、複数の地方自治体で試験運用し、改善を図った上で、全国で活用してもらう。
2012/03/14 18:34 【共同通信】

2012年3月14日水曜日

地域医療振興協会への重大な懸念

半年前に取り上げた、日大練馬病院撤退→地域医療振興協会登場の続編

前のはこちら参照
日大の変
日大練馬 その後

とうとう、地域医療振興協会への引き継ぎまで一ヶ月を切った中で、予想通り混乱してます



2012. 3. 9
日経メディカル2012年3月号「ニュース追跡」(転載)
 日大練馬病院の継承に暗雲 スタッフ確保に苦慮、全床返還の可能性も  
今年4月、日大から地域医療振興協会に引き継がれる予定の練馬光が丘病院。しかし、同協会は継承のための計画書を2月になっても東京都に提出しておらず、342床全床を引き継げない可能性も出てきた。
日大は1991年に東京都練馬区から病院を賃借して練馬光が丘病院(同区)の運営を開始した。しかし、20年以上支出超過が続き、2010年度には累積損失が約90億円に達した。さらに、同大が病院の貸付契約の際に区に納めた保証金50億円の返還時期について認識の違いが生じ、両者が衝突。昨年7月、同大は今年3月末をもって病院運営から撤退することを表明した。
約2カ月後の昨年9月、区は後継法人に地域医療振興協会を選定した。同協会は直営や指定管理者制度によって全国52施設の自治体医療機関の運営に携わる公益社団法人だ。救急や小児医療などを手掛け、日大の運営時と同等の病院規模・機能の維持を条件に、今年4月から協会が運営することになった。
しかし18診療科中4科で、日大と協会の医師による患者引き継ぎが始まっていないことが、1月25日の区議会で分かった。その理由について日大側は、「協会側で医師を確保できていない」(広報部)ことを挙げる。
昨年末の協会の資料によれば、入職が確定した常勤医は26人、協会内病院からの異動などでの確保が25人、交渉中が29人。1月には「常勤医70人を確保するめどが立ち、今後も人事異動などで医師数を増やしたい」と協会は説明した。しかし、昨年12月時点の同病院の常勤医121人、非常勤医48人と比べると、日大の指摘通り不足感は否めない。
さらに協会は、09年4月に千葉県浦安市と市川市から経営譲渡を受け、現在建て替え中の東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県浦安市、一般344床)も、今年4月の開院時は165床に減らしてスタートする。背景には、スタッフを確保できないなどの理由があるようだ。
このため練馬区議会議員の池尻成二氏は、「本当に70人確保できているのかも疑わしくなる。人事異動というが、僻地医療への貢献を目的とする協会が、都内の病院のために地方病院から医師を引き抜くのは理念に反するのではないか」と話す。


小児常勤医は8人 練馬区・協会が引き継ぎで説明 新光が丘病院 
2012.3.9 11:02
日大光が丘病院(東京都練馬区)が撤退し地域医療振興協会が引き継ぐ問題で、協会が確保した新病院の小児科常勤医は8人であることが8日、分かった。区は公募時に、常勤医16人程度の日大の規模と機能を維持すると公約していた。
複数の関係者によると、7日の引き継ぎ会で、練馬区と協会が、名前が確定した常勤医は8人と伝えた。内訳は新採用が2人で、残り6人は、協会の病院から半年ごとに交代勤務する。この人数では小児救急の当直は1人態勢となる。
小児科医数について、区は「人数に関してコメントできる者がおらず、答えられない。協会は小児科医による24時間対応の診療と入院受け入れ態勢を整えるとしており問題ない」、地域医療振興協会は「万全の態勢を目指して準備中」としている。
都救急災害医療課は「区からの最終報告を待ちたい」としている。


日大練馬病院後継で「計画書」

3月末に撤退する日大医学部付属練馬光が丘病院(練馬区)の後継医療機関・地域医療振興協会が13日、都に対し、新病院の「事前相談計画書」を提出、受理された。都が審査後、病院開設許可や使用許可の手続きを経て、4月1日の開院を目指す。
計画書によると、新病院は日大病院と同じ17診療科で、非常勤を含め約70人の医師を確保。24時間体制の小児救急も維持する。病床数も現行と同じ342床だが、開院時は一時的に入院患者を減らし、1年以内70人をめどに8割の稼働率に戻す。区では、計画書の提出を昨年中と想定していた。しかし、志村豊志郎区長が1月の記者会見で、「日大は患者を捨てていく」などと述べたことなどが影響して日大側と新病院の引き継ぎがストップし、提出が遅れたという。
(2012年3月14日 読売新聞)


というわけで、とりあえず来月からのスタートにはこぎ着けたようですが、

日大常勤121非常勤48169
地域常勤非常勤70人

って、これはいかんともしがたいですよ…
単純に人数比2.4倍です。ランチェスターの法則でいえば、戦力比でいえば5.8倍です
同程度の重症度をみるのであれば、スタート時は342床どころか、60床が妥当になります

しかも、この70人すらも、相当無理やりに集めてるのは明らかです
1年以内に稼働率8割にもちこむって…どこから医師を持ってくるの?
正直、最初から日大と同等の機能・人数を用意する気はないのではないかと疑いたくもなります

東京都北西部と埼玉県南西部の小児医療を守るための小児科医共同声明



私は別段、地域医療振興会という自治医大の外郭団体の存在自体は悪く思っていません
むしろ、端から見ててキャリアが不安定になりがちな自治医大出身者からしたら、悲願とも言える組織なのではないかとも思います

しかし、この関連病院の急速な展開は、どう考えても無茶です
というか…正直、病院の特殊性をあまり理解していない人が経営の中核にいるのではないかと思わざるを得ません
組織のミッションを完全に見失っていないでしょうか?

病院というのは希少な国家資格保持者とその後方支援部隊を大勢必要とするため、その展開は軍隊の様に慎重に行われるべきです
学生アルバイトやフリーターを現地徴用すればそれで済む、コンビニや外食チェーンとはワケが違います
限度を超えて膨らんだ風船は、パーンと破裂して、それで終わりです

まぁ、それでもその病院にいる医師は、逆刃刀でも持って流浪となってでも死にはしませんが、
地域住民と、潰れた病院の分まで防衛戦を強いられることになる病院は堪ったものじゃないので、そこはきっちり、責任持てる範囲で病院運営をして欲しいですね



ところで、本筋とそれるので敢えて最後までスルーしていましたが、区長の最低っぷりが半端ないですね
…そもそも日大が撤退したのって、区に貸してる50億円を踏み倒されてるのが原因だろうに