2012年5月30日水曜日

医学部新設議論各論

気がついたら年度あけて引っ越し後に一度も更新してませんでした(^^;)

新生活も落ち着いたのでこれからはちょいとペースを戻していきたいと思います


さて、今回は医学部新設議論です


これについては、国がパブコメで医学部新設意見募集したら6割賛成意見
ただし、その多くは「特定地域」からの「テンプレ投稿」だった


というわけで、首長が医学部新設要望書を出したら今度はそこの県医師会が反対意見表明という感じでその後の場外戦が半年近く続いている状態です




被災地では仙台厚生連がねばってるようですが、どうにも突っ込み満載です



目黒泰一郎・仙台厚生病院理事長に聞く


――そのほかの状況はいかがでしょうか。東北大学との話し合いはされたのでしょうか。
 まだお話はしていません。
<略>
――これまで県医師会と直接話し合いの場を持たれたことは。
 そのような提案はしていますが、結局、声がかからないまま、医学部新設の反対決議をされました。
 東北大学はこの4月に医学部長が代わったばかりだったので、話し合いは少し落ち着いてからでいいのでは、と考えていました。また我々には、「県医師会は、医学部新設については当面は、イエスともノーでもない」という中立の立場を取る期待があったことは事実です。

――それは何らかの根拠があるのでしょうか。
 はい、ある程度の理由はあります。そのように主張される理事の方もおられ、そうなっていくようにも聞いていました。このような早さで、県医師会が見解を出すとは考えておらず、我々の読みが甘かった。また東北大学についても、3大学がまとまって、行動に出ることは、残念ながら予測していなかった。

――先生方は、文科省の検討会が一定の方向性を打ち出した後に、関係者などと話し合うというスケジュールを考えておられた。
 そうです。パブコメも募集したので、今年3月くらいまでに何らかの方向性が出るのかとも考えていた。それにより、世論も動いてくると思っていました。しかし、結局、その前に東北大学、県医師会が動いたわけです。その意味では、遅れを取ってしまった。


――医学部新設への反対理由として、「地域の病院の医師が、教員として集められるので、医師不足が加速する」ことが挙げられます。
全く新規に病院を作ることになれば、大学病院でなくても、地域の医療機関から医師を招くことになるので、そうした現象は起こり得るでしょう。しかし、今は病床規制が非常に厳しく、それはできません。したがって、結論としては、既存病院を生かして大学附属病院を作るしかないのです。新たな病院を作るわけではないので、周囲から医師を吸引することはありません。
また当院および協力病院の西日本の病院は、今でも臨床実習ができる体制になっています。医師を新たに確保する必要はない。一方、大学で座学を含めた教育を担当する教員は、最低で140人という設置基準になっています。この基準が、医学部が新設される際に、そのまま適用されるかどうかは分かりませんが、現在はこの基準であり、少ない大学でも200人を超す教員がいます。
こうした大学の教員陣が今いるのは、地域の病院ではなく、大学医学部あるいは大学病院。東北大学が最終的には一番多くなるかもしれませんが、全国の大学などから教員を募集すれば、医学部を新設する地域では、100人、200単位で医師が増えることになります。


えーと、この理事長様は「根回し」って言葉をご存じないのでしょうか?
しかも、他大学の医師は吸い取るって思いっきり言ってるんですが、その後いなくなった医師を補充するために地域から大学に医師を呼び戻すから結果的に地域の医療崩壊が進むってみんなずっと言っているのを全く理解してないんですね
なんか、医師会がまったく相手にしない理由が想像できてしまいますが…


どちらかというと被災地よりも最近ホットになりつつあるのが関東です





医学部新設反対派に反論、黒岩知事と高木理事長

シンポで神奈川県と国際医療福祉大学の構想語る

2012年5月20日 橋本佳子(m3.com編集長) 

 神奈川県では今年4月、「神奈川県医療のグランドデザイン(案)」を公表(案は、県のホームページに掲載)、5月17日までパブリックコメントを求めていた。黒岩氏は、「報告書では、医学部新設については両論併記になった。しかし、県の方針としては新設を目指す。県医師会が最も抵抗を示さずに医学部新設ができるかを、知恵を絞り、今動いている」と説明。2011年12月に国に指定された「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」で、「開かれた医療のショーウインドーのような医学部」を作り、例えば英語で教育し、附属病院も外国人医師や看護師が働く、自由診療を行うなどの新しいタイプの医学部を目指すとした。
略>
 長年、ジャーナリストとして仕事をしてきたが、救急救命士の業務範囲の拡大や准看護師の廃止など、医療の様々な問題を訴えると必ず医師会と全面戦争となった。医師会が反応することは、患者さんにとってはいいことだということ。しかし、神奈川県の知事となったからには、そうはいかない。神奈川県の医師会とは仲良くし、日本医師会とは戦うということでやってきている。  




という風に最初は医師不足対策ということで医学部考想上げていたはずなのですが、被災地での医学部新設議論が事実上ポシャったあたりから 「医学部教育改革」をおりまぜたりして搦め手を入れています
が、そもそも、首都圏で複数の医学部を持つ、地理的に非常に恵まれたはずの神奈川に「医学部が足りないから医師不足」という論調は成立しないわけで、県の無策と魅力のなさを全国に喧伝しているだけです。神奈川県知事は千葉県と埼玉県に謝れとまで書いてる人もいましたねw


まぁ、どう考えても新設ありき論調で、新設にしなければけない理由は全くなくしかもまともな医師からすればあまりにも非現実的なプランでありどの掲示板やブログみてもまともに相手をされていません



ちなみにこの神奈川県のパブコメですが面白いオチが付きました





医学部新設、医師会が反対投稿要請…神奈川県の意見公募で

 国の特区制度を活用した医学部の新設などを柱とする神奈川県の「医療のグランドデザイン」をめぐり、県が意見を公募した「パブリックコメント」に対し、医師会側が反対意見の提出を会員に文書で求めていたことが29日、わかった。黒岩知事は反対意見が大半を占めた結果に「あまりにも偏り過ぎで、大変な違和感を持っている」と反発しており、知事と医師会の関係に影響を及ぼしそうだ。
<略>
 県によると、17日で募集が締め切られた意見の総数は634件で、医学部新設に関する意見446件のうち、反対は424件、賛成は15件、その他7件だった。
 これに対し、知事は29日の定例記者会見で「反対意見のうち、同じ様式のものが3パターン、計196件あった。幅広く県民の意見を聞く中で、非常な違和感を覚える」と批判。「医師会」との名指しは避けたが、「何かあったんじゃないかなと思わざるを得ない」と述べた。
(2012年5月30日 読売新聞)




とまぁ、完全に国のパブコメの意趣返しですなw

まったく、県医師会と仲良くできてないじゃないですかwww

しか同じ様式のものなかったことにしても、250228件反対なのは変わらない事実なワケでそこについて素直に言及していないのは為政者失格かと



あと、妙に熱心な栃木国際医療福祉大ですその現実性に疑問符が掲げられています



【高木邦格・国際医療福祉大学理事長の発言概要】
 私は本当に(医学部新設に反対する理由が)よく分からない。今、私どものグループには、まず附属病院(4カ所)に400人近い医師がいる。そのほか、山王病院や高木病院など、私どもの関連病院を含めると、八百数十名の医師がおり、非常に健全な経営で維持している。
200人前後の教員を増員すれば、それこそ旧七帝大以上の充実したスタッフになるのではないかと想定している。
 4カ所の附属病院は一応、黒字で動いている。平均年収1200万円で200人の教員を確保する場合、24億円程度が必要。そのほか、医療機器など(の購入費)も想定していくと、私は年間授業料200万円で十分にやっていけると考えている。私立医大は、平均で20億円の私学助成を受けている。
 またこれは地方の問題。民主党政権ができた時に、地方分権とあれだけ言われた。私が不思議なのは、神奈川県知事が作りたい、神奈川県には医師が不足していると言っているのに、国が規制するというのは何なのか。新潟県の知事も、一生懸命に活動されている。地方自治体の関与、授業料の問題、いろいろなことを条件にして、できるだけ早く新しい医学部を認めてほしいと思っている。私は授業料は200万円くらいの水準で十分にできることを確信している。


まず根本的にこの200人増員をどこから持ってくるつもりなのか?
当然外からまかなえる人数ではありませんしだからといって関連病院から引きはがすのは非常に健全な経営ぶちこわす恐れがありますなにせ、病院は医師が収入源なのですからそこまで計算しているのかどうか疑問です

そもそも、歴史ある私立を見るに授業料200万で医学部が成立するのかどうかという基本的な疑問がありますなにせ、あの莫大な資金源を持つ慶応ですら300万ですからね

また、地方自治訴え国の関与を求めながら補助金きっちりもらうつもりというのも不評の一因でしょう








とまぁ、こんな感じで既存医学部勤務医どころか地元医師会開業医からさえも絶賛反対中医学部新設ですが、決して合理性なく反対しているわけではありません


また仮にこの反対を無視して強行的に新設することは可能なのかという問題はこれまで全く触れられていないように思いますが、正直言ってこれは無謀です

今どき紹介逆紹介ない中核病院は存在せずぶっちゃけ、どれだけ困ったちゃん地元医師会でもビジネス上のつきあいくらいはうまくできてないと経営自体影響します



また、大学病院でも自分の手に負えない症例なんていくらでも出てきますが、そういうときに他の医学部と良好な協調関係を築けているかどうかは重要です


つくる前から没交渉の新設医学部附属病院なんてハイリスク以外なにものでもありません