2010年5月16日日曜日

チーム医療の壁 前編

「チーム医療」という言葉は、私が医学部受験生の頃からよく言われていました。
しかし、それから10年ほどたった現在でも、チーム医療が全国的に広まったという話は聞きません
果たしてこれは、何故なのでしょうか?


そもそも、「チーム医療」とはなんなのでしょうか?
まず、教科書的な定義をするならば、
「医師中心の医療体制を改め、患者を中心として各医療関係者が対等な関係で連携するもの」
というところでしょう。
また、近年医療崩壊対策として出される定義として
「一患者一主治医という医師個人に負担のかかる体制を改め、複数主治医制を導入するもの」
というものもあります。
極論すれば、「患者のためのチーム医療」「医師のためのチーム医療」があるということです。

今回は、この「患者のためのチーム医療」について考えたいと思います。


「患者のためのチーム医療」は、講演などではパターナリズムへの反省として語られることが多いように感じます。
確かに、医師と患者が1対1になることを避ければ、パターナリズムの危険性は減少するでしょう。
ですが、これは日本では明らかに絵に描いた餅以外の何ものでもありません。

まずは現実的な問題として、そもそもチームを組む相手がいないことがあります。
日本は海外に比べてコメディカルの数(医療従事者数)が少ないことはよく言われますが、数の問題以前にコメディカルの職種が少ないのです。
これに関しては、国が国家資格を増やしてくれることを願うしかありません。

また、病院の経済的な問題もあります。
診療報酬というのは、基本的に医師の医行為に対して支払われます。
つまり、1患者に関わる人数が増えれば増えるほど、人件費で病院が赤字になる危険があるのです。
同じ病名の患者でも、軽症を見る市中病院では黒字でも、重症を見る大学病院では真っ赤っかになるというのは実際にある話です。
また、私のいる病院でも各病棟にクラークが配置されましたが、クラークを配置することによる診療報酬の増額は、クラークの人件費分にもなってないということでした。

ただでさえ病院の7割が赤字の現状では、直接報酬に結びつかないどころか赤字源となりかねない医療従事者が増えるわけがありません。
せめて、人件費をペイできるくらいは診療報酬を上げてくれない限り、この問題が解決されるわけがありません。

さらにどうにもならないのが、法律的問題です。
法律的には医師以外の医療者は、医師のサポート役として設定されているのです。
先ほど、私は診療報酬は医師の医行為に対して支払われるものだといいましたが、それもこういう背景があるからです。
医行為を行う看護師としてナースプラクティショナー(NP)が検討されていますが、NPですらその責任は医師が負うことが前提となっています。
法的に最終責任を医師が負うことになっていては、「対等なチーム」など生まれようはずもありません。
チーム医療を推進するためには、行為の分散化と共に、責任の分担も必要なはずです。


こうした、国の政策の問題が解決されない限り、どれだけ理想論を語っても、日本で「患者のためのチーム医療」ができるはずもありません。
それどころか、現状でむやみにチームを形成する職種を増やせば、勤務医の負担が増大するばかりとなり、かえって患者の不利益になる可能性すらあるのです。

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