2010年7月25日日曜日

病と共に生きるという事

病院というのはどういうところですか?
と聞くと、恐らく10人中9人以上は「病気を治すところです」と答えるでしょう。

いわゆる患者のほとんどはそれでいいんでしょうが、では、
「治らない病気」や「病気は治ったけど、健常者でもない状態」にある人をどうすればいいのか?
という問題に答えられる人はどれだけいるのでしょうか?


以前、ある慢性疾患の患者さんが
「病院に来ると、病人になる気がする」
といわれた事があります。
とんでもない名言だと私は思います

徐々に進行する慢性疾患なんかの人はよく似たような事を言いますね
本人にとっては、それは当たり前だから、自分が異常である事に気づかない
では、そこで「お前は病人だ」とラベリングする以上のものを、その人のこれまでの生活と、これからの人生観を破壊した先のものを、ちゃんと責任もって渡してやれるのか?
っていうのは、長寿化するこれからの医療に、大きな問題としてのしかかってくると思います


また、がん患者においては治療後の問題もあります
国は「がん征圧」とか言ってますけど、そんな簡単な相手なら誰も苦労してないわけで…

小児がんにおいて、治療の副作用による危険性の上昇は指摘されていましたが、
「英国で1940-1991年にがんと診断され5年生存した17,891人を2006年末まで最長66年間追跡したところ、その後の死亡率は診断後5-14年は28.5倍、15-24年は6.8倍、25-34年は4.9倍、35-44年は3.2倍、45年以上は3.1倍」
という論文が先日発表されました。
原因は14年以内は再発・転移が多いですが、以降は主に二次がんと循環器系ということなので、抗がん剤と放射線療法の予想された副作用ではあります。
調査対象は抗がん剤や放射線を大量に使ってた時代の元患者が多いので、今の治療を受けている子たちはここまでではないはずですが、それでも有意な差はあると思います。

患者会の方が
「小児がんは死ぬのも地獄、生き残るのも地獄」
と言っていたのが、その数字には表れない重さを明確に示しています。
そして、長期予後が改善した成人のがんにおいても遠からず同じ問題が来る事が来る事は、容易に想像できる未来です


「医師は聖職」なんてほとんどブラックジョークの類ですが、こういった分野に至ってはそういう能力も必要とされる時代が再び来ているのかも知れません
もっとも、今の日本の医師にそんなのを求めるのは物理的に不可能なので、そういう異業種の血をいかにうまく取り入れていくかが、これからの病院に求められる能力かも知れません


お国は病院周辺の医療分野をビジネスマーケットとして見ているようですが、
私には、それはハゲタカが増えただけにしか見えません

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